2026年5月に『ストリートファイター6(スト6)』の公式大会「CAPCOM Pro Tour World Warrior 日本大会 #1(CPTWW)」が開催され、SCARZのきんちょ選手が優勝した。

【写真】CPTWW日本大会#1のパブリックビューイングで実況解説をしたキャスター陣

【写真】CPTWW日本大会#1のパブリックビューイングで実況解説をしたキャスター陣


■CC出場権を懸けたポイントレース、全5大会の幕開け

CPTWWはCAPCOM CUP(CC)の出場権を争う公式大会。日本大会はスーパーリージョンとして2名の選手が選出される。CPTWWは全5回の通常大会と地域決勝大会で構成され、各通常大会の上位入賞者にポイントが付与される。獲得ポイントは優勝が50ポイント、2位が40ポイント、3位が35ポイント、4位が30ポイントで、49位タイまでがポイントの獲得ができる。

全5大会の合計で最もポイントを獲得した選手は無条件でCC出場権が与えられる。また、5大会のうち最も成績のよい3大会分の合計ポイントが高い上位8名(全5大会の総合1位選手を除く)が地域決勝大会へ進出でき、そこで1位を獲得した選手にもCCへの出場権が与えられる。

■優勝はテリー使いのきんちょ選手、#1から50ポイントの好発進!

CPTWWは例年であれば9月から翌年1月まで1カ月に1度のペースで開催されていたが、今年は2026年5月10日とかなり早い開始だ。『スト6』がリリースされた6月が年度の切り替えのイメージがあったが、ほかのCPTの大会も開催し始めており、すでにシーズンが開幕した印象だ。ゲーム自体の年度としては未だイヤー3で、4人目の追加キャラクターも2026年5月28日にリリースされたばかりである。

CPTWW日本大会は今年も前大会がesports Style UENOにてパブリックビューイングと対戦会の開催を予定


CPTWW2025#1は2300名もの参加があり、その人気の高さに驚かされたが、CPTWW2026#1でもその人気は健在。EVO Japanの直後、北米で開催されたドリームハックの直前という過密スケジュールの中、約1900名以上の参加があった。

そんな激戦を制したのはきんちょ選手。きんちょ選手は日本屈指のテリー使いで、昨年のCPTWWでは地域決勝で優勝し、CCへの切符を手にしている。今年も#1から50ポイントを稼ぎ、幸先のよいスタートとなった。

■TOP8の注目はプロ引退の翔選手、“趣味参戦”で3位の衝撃

優勝まではいかないものの各大会で高ポイントを積み重ねることが重要なCPTWWにおいて、2位以下の選手も優位な状況にある。きんちょ選手のほかTOP8に残ったのは、ひかる選手、翔選手、takepi選手、鶏めし選手、RJT選手、ひなお選手、あくたがわ選手の8名。

注目選手はなんと言っても翔選手である。昨年、Esports World Cup(EWC)を体調不良で途中棄権してから復調せず、プロ活動を引退した選手だ。自身のXでCC12頃から『スト6』を再開したとポストしていたが、わずか数カ月で公式大会に出場し、3位の好成績を残した。結果だけみるとプロ復帰への足がかりのように思えるが、本人はプロに戻るつもりはなく、趣味として参加しているとのことなので、翔選手の復調は喜ばしいなか、ちょっと残念な、もったいない感じもする。

翔選手は現役時代と変わらず唯一無二の戦い方で、強豪選手をなぎ倒していく。国内屈指のJP使いとして知られるtakepi選手とのJPミラーマッチで勝利したのは圧巻だった。TOP8のルーザーズブラケットでも、あくたがわ選手、RJT選手を退けるなど、その強さは際立っていた。

■翔選手を止めたひかる選手も、決勝できんちょ選手に屈す

その翔選手を止めたのはひかる選手。キャラクターをA.K.I.に戻し、対JP戦のやり込み具合が高く、ウィナーズ、ルーザーズともに翔選手を下したのはひかる選手だった。ひかる選手はTOP8のウィナーズ1回戦でもtakepi選手を下しており、JPキラーとしての存在感を示していた。

優勝したきんちょ選手はそのひかる選手と2度対戦。ウィナーズファイナルとグランドファイナルで対戦した。2度目の対戦となるグランドファイナルでは3-2での辛勝だったが、ウィナーズファイナルでは3-0の圧勝だった。

大会の結果。きんちょ選手はグランドファイナルでリセットを許さず負けなしで優勝した


きんちょ選手はCPTWWで頭角を現してきたところもあるので、いきなりの優勝はCPTWWの相性のよさも感じる。試合後には話を聞くこともできた。

■優勝したきんちょ選手インタビュー

――きんちょ選手はCPTWWで昨年のCCへの切符を獲得し、今年も幸先のいいスタートを切れたと思いますが、きんちょ選手にとってのCPTWWはどんな大会なのでしょうか。

【きんちょ選手】CPTWWは思い出深い大会で、とても大事な大会ですね。昨年、地域決勝で優勝し、CCに出場できたわけですが、実はCPTWWの5回の大会では1回も優勝できていなかったんです。3位とか5位とかポイントを積み重ねての地域決勝への出場だったので、優勝できたことはうれしい気持ちでいっぱいです。今回、優勝できたことで、CPTWWが自分の中でより大きなものになった気がします。

――昨年のCPTWW日本大会地域決勝では1度ピンチに陥ってから、覚醒したかのような逆転劇を繰り返していましたが、今回は最初からゾーンに入っていた感じだったのでしょうか。

【きんちょ選手】TOP8に来るまでに、べてぃちゃん、リュウセイ選手との試合があって、その試合が終わったあとに頭がすっきりした感じはしました。どぐら選手とかひかる選手とかも全然キツくて、一つひとつの行動を確認しながら口に出して戦っていました。それが勝利につながった感じはします。

――TOP8では2人いたJPどちらとも対戦せずに終わりましたが、もし対戦することになっていたら違う展開になっていたと思いますか。

【きんちょ選手】JP戦に関しては同じチームのリュウセイ選手とけっこう練習できていたので、勝つ自信はあったんですけど、翔選手との対戦があったらちょっとどうなっていたかわからない感じはします。翔選手のJPは独特なので、通常のJP対策が当てはまらないところがあって、グランドファイナルに翔選手が上がってきたらというのはありました。そういう意味ではトーナメントの運も今回はありました。ほかにも、できたら当たりたくないなぁという選手との対戦は回避できていました。

――ウィナーズファイナルが終了したあと、グランドファイナルまで時間があったと思いますが、どのように待ち時間を過ごしていたのでしょうか。

【きんちょ選手】今日は配信をしながら参加していたので、リスナーさんのコメントを拾ってしゃべっていました。試合での緊張を会話で緩和していた感じです。同時に大会の配信も観ていて対策も練っていました。

――最後に今年の目標を。

【きんちょ選手】EWCとCCに出場を決め、そこで優勝したいですね。昨年はEWCに出場できましたがすぐに敗退してしまいましたし、CCも9位で終わりました。すごく悔しい結果になったので、今年はその反省を生かして優勝を目指していきます。

■引退した翔選手の活躍が投げかける、プロとアマの境界

会場では実況のアールさん、解説のハメコ。さん、ゲストのなるおさんにもコメントをもらえた。まず話題となったのは、CPTWWだけでなく、CPT自体の開催が以前より早まっている点だ。

「昨年まではCCが終わって、しばらく公式大会がなく、ストリーマーイベントなどが開催されつつ、EVO Japanがあって、コンボブレイカーまで1カ月くらい間が空くって感じでしたが、今年はEVO Japanが終わってすぐにドリームハックがあって、CPTWWが始まって、2週間後にはコンボブレイカーが始まるという感じで、もうシーズン始まったじゃん、みたいな感覚ですね。1年の隙間がなくなった感じ。来月にはEVOがあるし、そのあとEWCがあるし。CPTWW日本大会地域決勝なんてちょっと前だった気がするのにもう次のシーズンですからね。ファンにとっては常にイベント、大会があるのはいいですよね。まあ、プロ選手は大変だと思いますけど」とハメコ。さん。

次の話題となったのは、翔選手の活躍だ。昨年、体調不良により引退し、体調が回復してもプロ復帰の意思はないとしながらも、趣味として『スト6』をプレイしていくと発信。練習をし始めてわずかの期間でCPTWW3位の好成績を残したことにキャスター陣も驚愕のひと言。

「優勝したきんちょ選手には悪いけど、今日は翔選手が注目だったよね。久々にプレイを観たけど、本当にうまいなって感動しました」となるおさん。

「翔選手を観られたのはうれしい反面、プロ選手が負けていく様子はどうなのかなと言う部分もありますね。推しのプロ選手が勝てばCC確定というような状況で、翔選手が出場し、その選手が敗れて出場を逃すことになった場合、ファンは素直に受け止められるのかなとも。本来なら推しを応援するだけでよかったはずの場面に、翔選手を観られるうれしさと、推しのチャンスが失われるつらさが同時に生まれてしまう。その点は、少し心配です。まあ、それだけの強さがあるということではあるんですが。そういった複雑な気持ちはありつつ、元気にゲームしてくれていることは本当にうれしいんですよね」とアールさん。

『スト6』の公式大会にはオープントーナメント形式のものが多く、プロ選手だけでなく、アマチュア選手も参加できる仕組みになっている。したがって、プロ選手もアマチュア選手もそれこそ、今日始めた選手も出場ができるわけだ。そういった点ではプロ活動を引退した状態であっても大会に出場する権利はあり、強さがあれば勝ち抜けることもできる。ただ、プロゲーマーという存在があるなか、そのシステムの根幹が揺るがされるような状況にあるのも事実で、難しい問題とも言える。

■著者プロフィール・岡安学

ゲーム情報誌編集部を経て、フリーランスに。イベント取材をはじめ、法律問題、マーケットなど、多角的な切り口でeスポーツを取り上げる。さまざまなゲーム誌に寄稿しながら、攻略本の執筆も行い、関わった書籍数は50冊以上。現在は、Webや雑誌、Mookなどで活動中。近著に『ゲームビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)、『みんなが知りたかった最新eスポーツの教科書』(秀和システム)などがある。

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