記事のポイント
NBAファイナルを通じて、スポーツ熱を活用した近接マーケティングがブランド戦略の軸になっている。
レモン・パーフェクトは試合展開に連動し、スポーツの文脈を生かした近接マーケティングでブランド認知を拡大。
ブランドはファンとの共鳴を重視し、スポーツイベントに即したリアルタイム施策で近接マーケティングを深化させている。


インディアナ・ペイサーズ(Indiana Pacers)とオクラホマシティ・サンダー(Oklahoma City Thunder)がNBAファイナルで熱戦を繰り広げるなか、ブランド各社はこの盛り上がりをビジネスチャンスとして活用している。

消費者への訴求力を高め、ブランドの存在感を維持したい企業にとって、アスリートやスポーツイベントは重要な役割を果たすようになっている。

ミームやアスリートとのスポンサー契約、プロモーション企画、プレゼントキャンペーンなどを通じて、ブランドは高揚感あふれる瞬間を最大限に活用しようとしている。2025年のNBAプレーオフとファイナルも、その好例といえる。

ミケロブ・ウルトラやレモン・パーフェクトがNBAファイナルで仕掛ける



チポトレ(Chipotle)のような大手企業だけでなく、レモン・パーフェクト(Lemon Perfect)のような新興ブランドも、ファンの熱気を巧みにマーケティングに取り入れている。

NBAの公式グローバルパートナーであるミケロブ・ウルトラ(Michelob Ultra)は、今シーズンのスポンサー活動の一環として、プレゼントキャンペーンを展開している。ファイナル第2戦以降、このビールブランドは各クオーターごとに、サイン入りバスケットボールやNBAドラフトのチケットなどをプレゼントしている。

さらに、このNBAシーズンでは、飲料系スタートアップも積極的に参戦している。

レモン・パーフェクトの「パーフェクト・プレー」キャンペーンとは



レモン・パーフェクトは5月、NBAプレーオフでのニューヨーク・ニックス(New York Knicks)の盛り上がりに注目し、イースタン・カンファレンス準決勝の第1戦でニックスがボストン・セルティックス(Boston Celtics)に勝利した直後に、「パーフェクト・プレー(Perfect Play)」キャンペーンを開始した。

このプロモーションでは、試合を左右するような印象的なプレーが出たタイミングで、公式サイト上にてBOGO(1本買うと1本無料)や無料配布といったサプライズキャンペーンを実施。インスタグラムをフォローし、ゲームのハイライトを見守っていれば、突如フラッシュセールがはじまることもある。

このアイデアは数週間前に考案されたばかりで、広報チームの発案でブランド名にちなんだ「パーフェクト・プレー」というスポーツ用語が使われたと、マーケティングディレクターのジェス・インデマイオ氏は米Modern Retailの取材に語っている。

スポーツとの親和性とブランド強化の取り組み



創業者でCEOのヤニ・ハフナゲル氏は元NCAAのバスケットボールコーチでもあり、こうしたスポーツとの結びつきはブランドにとって自然な流れだったという。NBA出身のチャニング・フライ氏やニック・ヤング氏が投資家として名を連ねている点も、顧客との信頼構築に一役買っている。

なお、キャンペーンの開始に先立ち、ブランドはパッケージデザインの刷新やレシピの改善も行っており、「バスケットボールファンかどうかに関係なく、ブランドの価値を改めて感じてもらいたかった」とインデマイオ氏は語る。

このD2Cキャンペーンは、当初BOGOからはじまり、後に「2本買えばさらに2本無料」といった内容に進化。直近では、公式サイトへの訪問数も大きく伸びたという。この取り組みは、SNS投稿やSMSマーケティングリストを通じて共有され、登録者であれば誰でも情報にアクセスできるようになっている。

プロモーション効果と今後の展開



インデマイオ氏によれば、これまでに約226回利用され、売上は1万2000ドル(約173万円)を突破。SMSは4回、SNS投稿は5回実施したと説明している。

なお、レモン・パーフェクトはプレーオフ全試合でキャンペーンを展開しているわけではなく、「本当に素晴らしいプレー=パーフェクト・プレー」が起きたときに限定して展開しているという。ファイナル期間中も、その判断は慎重に行われている。

チポトレのNBA連動プロモーション戦略



NBAファイナルの盛り上がりを受けて、多くのブランドがこのタイミングを活かし、夏のプロモーションを次々と展開している。

チポトレは6月に入り、「サマー・オブ・エキストラ(Summer of Extras)」というキャンペーンと並行して、NBAファイナルに連動した特別企画を発表した。

この一環として実施されているのが、「インスタント・フリープレー(Instant Freeplays)」と呼ばれるプロモーションだ。第2戦が行われた6月8日から開始され、試合のなかでファンを巻き込むユニークな仕組みを導入している。

リアルタイム性と参加型施策による効果



具体的には、試合中にコーチがプレーに異議を申し立て、ビデオ判定が行われた際に、チポトレのX(旧Twitter)公式アカウントに投稿が行われる。その投稿には「隠しキーワード」が含まれており、ファンはそれを見つけ出して、所定の番号にテキストで送信。正解者のうち先着5000人には、チポトレのメインディッシュが無料で提供される。

チポトレの最高ブランド責任者であるクリス・ブラント氏は、「ビデオ判定による試合の中断は、観戦者にとっては楽しめる時間ではない。しかし我々は、その時間をポジティブな体験に変えたいと考えている」とコメント。「中断のあいだに、ファンがチポトレを楽しめるチャンスを提供することで、試合全体を通じたエンタメ性を高めたい」と語っている。

過去の事例と今後のマーケティング戦略



今回のプロモーションは、これまでのNBAプレーオフキャンペーンをベースにしている。たとえば2024年には、フリースローが決まるたびにコードが配布された「フリースロー、フリーコード(Free Throws, Free Codes)」、2023年には3ポイントシュート成功時に適用される「フリーポインター(Freepointer)」などが実施された。

いずれも、ファンの関心が高まる瞬間に合わせたキャンペーンであり、チポトレはスポーツイベントをマーケティングの核に据える戦略を強化している。

また、こうした取り組みはNBAに限らず、2025年のNHLプレーオフでも展開されており、スタンレーカップを記念したBOGOメインディッシュプロモーションが復活している。

チポトレは、スポーツと連動したブランド体験を通じて、ファンとのつながりを一層強めようとしている。

スポーツとマーケティングの融合が生む熱狂



ますます多くのブランドが、ファンの熱狂や熱量に呼応するかたちで、スポーツイベントを公式スポンサーシップや近接マーケティングの場として活用している。こうした手法は、スーパーボウルや大学スポーツのトーナメントなど、広く注目を集める大規模イベントにおいて、特に有効な戦略として定着しつつある。

米バブソン大学のマーケティング学部アソシエイトプロフェッサー、アンジャリ・バル氏によれば、現代の消費者はスポーツイベントに強い感情的関与を持っており、それがブランドにとって格好のマーケティング機会となっているという。

「アドレナリンが高まり、心理的な反応も強くなっている。こうしたタイミングで、チームへの忠誠心や「仲間でいたい」という欲求に訴えかけると、消費者は自分の価値観と一致するブランドやメッセージに対して、より心を開きやすくなる」とバル氏は語る。

本物の共鳴がブランド信頼を育てる



バル氏によれば、多くのブランドはリアルタイムでエンゲージメントを生み出す仕掛けを行っている。たとえば、SNS上での投票やリアルタイム抽選、ライブ配信中のインタラクションなどがそれにあたる。NBAファイナルでは、アディダスのようにアスリートと契約するブランドが試合と連動する形でこうしたアクションを展開しているという。

スポーツを活用したマーケティングの好例として、バル氏が挙げたのが2025年スーパーボウルでのセブンイレブンの取り組みだ。敗れたチームのファンに向けて無料ピザを提供する「エモーショナル・サポート・ピザ(Emotional Support Pizza)」キャンペーンは、ファンの感情に寄り添うユーモラスな試みとして話題を呼んだ。

また、2024年にドアダッシュ(DoorDash)が展開したスーパーボウルキャンペーンも、広告のインパクトと参加型要素を融合させた秀逸な事例とされている。

ただし、こうした戦略を成功させるには、ファンに「本物」と感じてもらえることが前提だとバル氏は強調する。スポーツファンは敏感であるがゆえ、表面的な便乗にはすぐに見抜かれてしまう。

レモン・パーフェクトが展開した「パーフェクト・プレー」キャンペーンは、同社にとって今後のスポーツマーケティング展開に向けた試験的な位置づけでもある。

マーケティングディレクターのジェス・インデマイオ氏は、「NBAに関わる投資家が社内にいることもあり、いつか彼らとブランド施策を結び付けたいと思っていた」と語る。

そのうえで、「本当に重要なのは、スポーツに限らず、文化的な共鳴点を持つあらゆるテーマとブランドを結び付けていくことだ」と展望を語っている。

[原文:Brands get in on NBA Finals buzz as fan excitement ramps up]

Gabriela Barkho(翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:藏西隆介)