この記事をまとめると

■パトカーと一般車両の事故が起きた際の責任の所在について解説

■公務中の警察官がパトカーを運転していた場合は国家賠償法が適用される

■またパトカーが緊急走行中だったか否かでも対応が変わる

警察官には国家賠償法が適用されるケースも

 警察官がパトカーに乗務するには、特別な訓練を受け、警察部内で実施される、自動車運転技能検定に合格しなければならないことになっている。

 しかし、いくら訓練を積んでもパトカーが事故を起こす可能性がゼロになるわけではないので、ときにはパトカーだって事故を起こすことも……。

 ではもしパトカーが一般車両に対し事故を起こしてしまった場合はどうなるのか。

 パトカー側に過失があれば、当然、損害賠償責任が問われるわけだが、パトカーを運転していたドライバーが公務中の警察官の場合は、個人の責任は問われずに、国家賠償法が適用されることになる。

 国家賠償法1条1項

「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる」

 この法律がその根拠。

 通常、被害者と加害者の過失割合が0:10になる追突事故でも、パトカー側が加害者のときは、警察官本人が賠償責任を負うことはなく、所属の警察を所轄する都道府県(地方公共団体)が賠償責任を負う決まりになっている。

 また双方のクルマが動いていた場合は、パトカーが緊急走行だったかどうかで対応が違う。

パトカーが緊急走行中だった場合は一般車両の過失が大きくなる

 サイレンを鳴らし、赤色警告灯を回して走行している「緊急自動車」であった場合、一般車両は近づいてきた緊急自動車に対し、交差点を避け、かつ、道路の左側に寄って一時停止をするなどして、進路を譲る義務がある(道交法40条)。

 この義務を怠って、パトカーと一般車両がぶつかった場合、当然、一般車両の過失が大きくなる。

 一方、緊急自動車は、赤信号や一時停止標識の前で停止することは免除されているが、徐行して安全確認を行う義務があり、他の車両や歩行者に対し十分注意を払い、できるだけ安全な速度と方法で進行しなければないルールがある。

 他車と事故を起こした場合、この義務を怠ったとして、過失割合が多くなるといわれているが、前述のとおり、緊急自動車の優先度は高く設定されているので、双方が動いている状況下の事故での基本的な過失割合は、パトカーが2、一般車両が8となってしまう。

 なお、同じパトカーでも、サイレンを鳴らさず、赤色回転灯が止まっていれば、「緊急自動車」とはいえないので、通常の「一般車両 対 一般車両」の事故と同等に扱われ、過失割合も一般車両同士の事故と変わらない。

 ちなみにパトカーをはじめとする公用車でも、自賠責保険への加入義務はあるが、任意保険の加入は自治体によってバラツキがある。

 警視庁は任意保険に加入していて、福岡県警も一般入札により、あいおいニッセイ同和損保と任意保険を契約(令和元年10月の時点)。

 その反面、兵庫県警の警察車両の6割以上は任意保険に未加入という報道も!

 仮に事故を起こしたパトカーが任意保険に加入していなかったとしても、国家賠償法で保証されるので問題ないはずだが、示談交渉はややこしいことになりそう……(弁護士特約の出番かも)。

 いずれにせよ、他のクルマと同じように、パトカーとも事故を起こさないよう、つねに安全運転を心がけよう。