軒並み惨敗の夏ドラマ…孤軍奮闘の意外な作品と一人勝ちのワケ

写真拡大 (全6枚)

7月24日スタートの『新・信長公記〜クラスメイトは戦国武将』をもって、全ての夏ドラマが出揃った。が、残念ながら見えてきたのは「惨敗」に等しい状況だ。

思えばドラマに関しては、今年の春も「総崩れ」などと苦戦が話題になった。コロナ禍によるステイホームが解除されたとはいえ、なぜこれほどまでにドラマ離れが進んだのか。その背景にあるものを分析してもらうべく、ドラマ事情に詳しい記者、ライター、編集者3人の対談取材をおこなった。

インタビューライター・N本 今期もドラマは苦戦していますね。かろうじて平均視聴率2ケタを取っているのは、シリーズものの『刑事7人』を除くと、綾野剛の『オールドルーキー』と坂口健太郎の『競争の番人』のみ。

エンタメ担当編集者・F本 それどころか、かつてなら打ち切りラインと言われた5%を切っているドラマも少なくないほどよね。一体どうしちゃったのかしら?

芸能記者・A田 『半沢直樹』から続く固定ファンがいるTBSの日曜劇場はいったん置いておくとして。そうすると、今期合格点といえるのは『競争の番人』ぐらいです。このドラマは今期唯一といえるテンポのいい事件解決もの。今年のゴールデン滞ドラマのトップ3を見ると、阿部寛の『DCU』、二宮和也の『マイファミリー』、菅田将暉の『ミステリと言う勿れ』と、皆テンポのいい事件解決ものなんですよ。

苦戦する恋愛&お仕事もの

F本 たしかに。恋愛ものやお仕事ものは総じて苦戦している印象があるわね。

N本 でも事件解決もので言うなら、今期は有村架純と中村倫也の『石子と羽男―そんなコトで訴えます?―』や、仲野太賀や林遣都の『初恋の悪魔』もそうですよね。テンポも決して悪くないと思いますが。

A田 ただこの2つは、力の置きどころが事件解決より人間模様にあるんですよ。配信系ドラマが増えた昨今は、ちょっとでも退屈なシーンがあるとすぐにスキップできる時代。見る側も短気になっているので、人間模様を描かれ始めると途端に飽きてしまう傾向があるんです。

F本 実際、『競争の番人』も初回を見たときは「1話完結じゃないんだ!」とまどろっこしさを感じたわ。それで第2話はすぐに見ず、第3話でいったん解決したと知ったところで、2、3話を続けてまとめ見したの。そうしたら、けっこう面白く見られたわ。

N本 皆、“過程”じゃなく“結果”を見たいということかもしれませんね。

F本 でもそうすると、今期のドラマはもう希望がないってことかしら?

N本 なかなか挽回するのは厳しいでしょうね。竹内涼真の『六本木クラス』も、如何せんオリジナルがあの『梨泰院クラス』ですから、最初こそ「どうリメイクされるんだろう?」と怖いもの見たさでそこそこの視聴率を取っていましたが、やはり苦しかった。下がり方がハンパないですよね。

F本 永野芽郁の『ユニコーンに乗って』はどうかしら? 平気視聴率も8%台と、比較的健闘しているほうだと思うけど。

A田 こちらはアカデミー賞俳優・西島秀俊の魅力で何とかもっている感じですね。しかし内容があまりにお粗末。夢を追いかけるスタートアップの世界を描いていますが、その程度で上手くいったらみんな成功しているよ、という声が多い。まあでも、西島さん頼みで何とか現状維持でいくんじゃないでしょうか。

『逃げ恥』の例も……

N本 個人的には、可能性があるとしたら橋本愛の『家庭教師のトラコ』じゃないかと思っています。脚本が『家政婦のミタ』で知られる遊川和彦ですが、彼の作品はどこに向かっていくか分からない。うまくハマると後半盛り上がってくることがありますから。

A田 コスプレ連発の橋本愛が美しいですしね。

N本 そうそう、それもポイント。あのモンスタードラマ『逃げるは恥だが役に立つ』も、最初はそんなに面白いと思っていたわけじゃなくて、ただただガッキー(新垣結衣)が輝いているなあと見ていた感じでしたから。そうこうしているうちに、めちゃくちゃ面白くなってきた。

F本 後半になって盛り上がってくる展開はよくあるけど、そのとき既に視聴者が離れていると挽回は苦しいものね。盛り上がってくるところまでいかに見る者を逃がさないかは、主演の魅力にかかっているということね。

A田 思えば『マイファミリー』だって前半はちょっと危なかったけど、何とかニノと多部ちゃん(多部未華子)の力で引き留めたという感じでしたよね。

F本 とりあえず今期は、『競争の番人』と『家庭教師のトラコ』を見続けてみるわ。あ、それとあと『鎌倉殿の13人』ね。結局、これが一番面白いというのが素直な気持ち……。

取材・文:奈々子
愛媛県出身。放送局勤務を経てフリーライターに。タレントのインタビュー、流行事象の分析記事を専門としており、連ドラ、話題の邦画のチェックは欠かさない。雑誌業界では有名な美人ライター