(写真=株式会社DROBE提供/THE OWNER編集部)

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コロナ禍以降、アパレル業界にも変化が求められている。

外出や会食などで人と会う機会が減り、在宅勤務が増えて衣服を買い求める行動が様変わりした。昨今では環境意識の高まりから、大量生産による環境負荷が大きいとされるアパレル業界が「やり玉」に挙げられることも多く、サステナブルは無視できない。

株式会社DROBEは、女性向けパーソナルスタイリングサービス「DROBE(ドローブ)」を開発・提供している。DROBEの特筆すべき点は、設立からわずか3年目のまだ小さなベンチャーながら、独自の「スタイリングAI」を開発し、サービスに活用している点だ。

代表取締役 CEO 山敷守(やましき・まもる)氏は東京大学を卒業し、DeNAやBCG Digital Venturesでデジタル事業の立ち上げなどを経験。2019年DROBEを設立。

「テクノロジーとファッション大好き人間なんです」と笑顔を見せる山敷代表に、ファッションの課題やDROBEを通じて広めたい世界観、アパレル業界の今後などを伺った。

■8割もの人がファッションに悩んでいる

顧客一人ひとりに最適なスタイリングを提案するパーソナルスタイリングサービス「DROBE」。最大の特徴は、ファッション誌や芸能人の担当、店頭販売などを経験したプロのスタイリストと、「スタイリングAI(人工知能)」の融合による個別提案にある。

DROBEでは150ブランド、15万着という膨大な服の中から選んでスタイリングを行うため、人の力に加えてAIの活用が欠かせない。これだけ手間のかかる労働集約型を含むサービス設計になっている理由は、ファッション業界の課題は「多くの人がファッションは難しいものと感じてしまっている点にある」と山敷代表が考えているからだ。

「20歳から60歳までのアンケートで、約8割の方がファッションに対して何かしらの苦手意識や難しさを感じています。ファッションが、自分とは縁遠い、好きな人だけが楽しむものとなってしまっている。ここを私たちは変えたいのです」

前職時代、山敷代表は新規事業の立ち上げなどを担当しており、その調査の過程で、ファッションに悩みを抱えている人が思いのほか多いことを知ったという。

「のちに当社でも調査も行うと、『値札を付けたまま着ていない服がたくさんある』『年齢相応の服装が分からない』『毎日の服選びに悩み、ストレスで疲れる』『自分のセンスに自信がない』『自分に似合う服が分からない』『いつも似た服を買ってしまう』『服選びに失敗した経験がある』などの悩みや課題を抱えた方が想像以上に多くいました。

当社のようなパーソナルスタイリングサービスが広まることで、人とファッションのミスマッチが減り、ひいては不必要な商品が必要以上に作られて販売されることも減るはずです。結果的に社会貢献できるのではないでしょうか」

DROBEでは「二の腕にコンプレックスを持っている」方に似合う服など、顧客のプロフィールに書かれたライフスタイルやトレンドなどを押さえて、スタイリストが総合的に判断し提案を行う。スタイリストの持つセンスの部分まではAIで再現できないが、あまりに膨大な商品点数の中から提案を行うため、AI活用は不可欠だ。スタイリングAIはいわば、スタイリストのアシスタント的な立ち位置となっている。

初回は70問ほどの簡単なアンケートにLINEアプリで答えてもらい、これをもとに顧客のニーズや嗜好性、骨格・シルエット、予算に合わせてまずAIが提案商品を絞り込む。150超のナショナルブランドなどと提携して揃えた15万点以上の商品ラインナップの中から、優先順位を付けて並べかえてくれるのだ。

最後の絞り込みの段階でスタイリストが最大8着まで服を選んで提案。商品が顧客の自宅へ届いたら、試着しつつ、スタイリストにLINEで相談できる。購入したい商品以外は返品が可能だ。返品商品にはすべてアンケートに答えてもらい、次のスタイリング提案に反映される。何度も利用するほど、よりマッチング精度が高まる――という流れだ。

これほど複雑に選択の幅を持たせている(といっても、顧客には裏側の複雑さが見えない工夫がされている)のは、ファッションには「偶然の出会いによる楽しさがある」と山敷代表が信じているからだ。顧客がECサイトなどを観て選ぶ場合は色や価格、カテゴリー「だけ」で絞り込んでしまう。しかしあくまでそれは「条件でしかない」という。

「人が自分で絞り込みをかけると、こぼれ落ちてしまう商品がけっこうあります。自分が好きなブランド以外にも、潜在的に似合ういい商品があるかもしれません。『チノパンはぜったいに履かない』とおっしゃっていたお客様にきれいめのチノパンを提案したら喜ばれた、なんてこともあります。

トータルコーディネートやテイストなどのバランスを考慮して、ご本人の気づいていなかったような、その人らしい新しい出会いを提案できるのが当サービスの強みです」

DROBEは設立から2周年の2021年9月時点で、会員数は3倍増の7万5,000人、契約スタイリストの数も100名超と順調に推移してきた。

サービス開始当初はAIがなく、スタイリスト自ら顧客1人あたり4時間もかけてスタイリング提案を行っていたという。現在はAI活用によって、より多くの人に気軽にスタイリングを楽しんでもらえるサービスに成長した。

■これまで出会わなかった服と顧客接点を持たせる仕組み

昨今のファッション業界ではサステナブル、つまり持続可能な社会や地球環境を意識した製品づくりが不可欠となってきている。自然素材や再生可能素材で作られた製品を販売するベンチャーが多く立ち上がり、大手ブランドもリサイクル素材を積極活用するなど、サステナブルはファッション業界のひとつのキーワードとなっている。

DROBEはサステナブルを起点に始まった企業ではないものの、ミスマッチを減らすことでサステナブルに寄与する事業を展開している。ミスマッチを減らす施策の一つが「新しい潜在顧客との接点を創造する」ことだ。

人は通常、お気に入りのブランドや店に多く足を運ぶ。一方、DROBEでは提案する服をスタイリストが選ぶため「これまでなかったような出会い」が生まれる。そのため、アパレルブランド側が想定していなかった顧客と新たに接点を持つことができる。自社ブランドのECサイトや楽天、AmazonなどのECモールだけでは届かなかった顧客にアプローチできるメリットがあるのだ。

「某ECモールで売上の伸び悩んでいたある商品が、DROBEではベストセラーになったケースがあります。つまり、そのブランドさんの従来のファンが欲しがらなかった商品でも、ターゲット属性を変えれば求められる可能性がある好事例です」

DROBEではさらに、2年前から「オフプライス品」の取り扱いを開始した。オフプライスとは、前シーズンの商品を廉価に仕入れ、販売する手法だ。

「アウトレット」との違いは、アウトレット店では基本的に単一ブランドのみの廉価商品を扱っているが、オフプライスはさまざまなブランドから仕入れる点にある。いわば「総合アウトレット店」のようになるため、顧客は選べる商品の幅が広がる。一方、ブランド側は在庫の消化率が高まり、新規の顧客を開拓できるメリットがある。

「開始前は、前年の商品を扱った場合にお客様の反応がどうなるか、実は予測できませんでした。ところが蓋を開けてみるととても好評でしたね」

「ビジネスとしても上手く回っている」そうで、まさに「売り手と買い手がともに満足し、社会貢献にもなる近江商人の三方よし」状態だ。ブランドと顧客、DROBE、社会の三方にとってメリットがある状態を作れているといえる。

■「購入」より「服が着続けられること」が重要

次が盲点なのだが、「服が買われたあと」にも実はサステナブルの課題がある。服は消耗品のため、ある程度、利用されたら廃棄されたりリサイクルやフリーマーケットアプリのメルカリなどリユースに回されたりするのが一般的な流れだ。

ところが中には、服を買ったあとに一度も着られることがなく、あるいは一度袖を通しただけで使われずに何年もクローゼットに眠っている、あるいはそのまま廃棄される――といったケースがあるという。つまり、服を買うだけで満足してしまっているのだ。

「ECサイトで購入した商品は基本的に返品が可能なのですが、返品する行為そのものを手間に感じるようで、着ない服を手元に置いたままタンスの中に眠らせている方もいらっしゃいます」

一時テンションが上がり、買ってしまった服。ところが自宅の鏡で見るとまったく似合っておらず、そのまま二度と着なくなった経験が誰しも一度はあるのではないだろうか。

DROBEではこうしたミスマッチを減らすための施策を、ユーザー体験の設計の中に落とし込んでいる。中でも特筆すべきが「試着期間を7日間に設定」していて「返品の商品は宅配業者が回収に来てくれる」こと。この2点だ。

DROBEで試着期間を7日間も設定しているのは「お客様がすでに持っている服と新しい服との相性や、休日と平日のテンションでも変わらず欲しいと思えるかなどをじっくり確かめてほしいから」だという。

「私たちDROBEとしては、納得いただけたら、購入いただきたいのです。自宅という誰にも干渉されない状態で吟味して、迷ったらいつでもLINEでスタイリストに相談できます。お客様にDROBEを続けていただくことが大事なので、服を着続けていただくことを重視しています」

従来のファッション現場の販売方法とは真逆の発想だ。「すごくお似合いですね!」と来店客のテンションを上げて試着させ、褒めちぎって購入させる手法が行われている店もある。結果、服のミスマッチが起きてしまう。それとは真逆のアプローチである。

7日間も試着期間があればその分、事業的には歩留まりが悪くなる。試着期間中は在庫扱いと同等である上に、他の顧客に渡る機会を損失しているからだ。それでも7日間にこだわっているのは、使い続けてもらうことを重視しているからにほかならない。

試着が終わり、購入しない商品は返品が可能だ。DROBEではさらにここで、集荷に来てくれる仕組みになっている。LINE上で集荷時間を指定すれば、タップ一つで運送業者が返品商品を受取りに来てくれるのだ。

「返品のシステムを作るのは、物流会社さんと専用のAPI(アプリとプログラムの接点)をつなぎ込んだりして、実は容易ではありません。それでも『こんなに簡単に返品できるのか』とお客様から驚いてもらえますし、続ける価値があると考えています」

この体験設計により、返品を手間に思うハードルはグッと下がる。返品が手間で服を買ったまま眠らせてしまう人のミスマッチも減るはずだ。

■「かつてほど難しくない」中小企業にAI活用のすすめ

ファッション最大手のUNIQLOでさえ日本でのマーケットシェアは10%ほどしかない。日本のアパレル企業は中小企業が多く、企業規模が分散していて、全般的に投資余力が少ないとされる。

その中で山敷代表がおすすめするのは「AI投資」だという。

「当社のような小さな企業でもAIを導入できているのは、かつてよりAIが一般化しているからです。最先端の知識はWeb上に公開されていて、誰でもアクセスできます。当社もアルゴリズムをゼロから構築したわけではなく、さまざまな論文からアイデアを拝借しています。

中小企業が行える投資の中でもAIは特にやりやすい方法ではないでしょうか。宣伝になりますが、今後は私たちが開発したAIプラットフォームをブランドメーカーさんにご提供したいと考えています。これを取り入れれば生産性やパフォーマンスが向上するはずですし、私たちもサポートさせていただきたいです。

テクノロジーに対して苦手意識を持っている方もいるかもしれませんが、親しみを持っていただけると嬉しいです。そうすれば日本企業全体の生産性はどんどん良くなるはず。アンマッチを減らしマッチング精度を上げる。アパレルブランドさんをAIで側面からサポートする。これらを通じてサステナブルな社会の実現にチャレンジしてきたいです」

<会社情報>
株式会社DROBE
〒150-0013
東京都渋谷区恵比寿4-22-7 イーストスクエア恵比寿4F
https://drobe.co.jp/

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