自衛隊が運用するCH-47「チヌーク」輸送ヘリは、圧倒的な積載量の大きさから、あらゆる災害派遣において頼りにされる存在ですが、陸上自衛隊の保有機にJ型とJA型の2種類あります。2機種の違いについて見てみます。

黒鼻は改良型「チヌーク」 違いは色だけじゃない!

 2020年現在、日本国内で登録されている各種ヘリコプターのなかで最も大きいといわれるのが、陸上自衛隊と航空自衛隊に配備されているCH-47「チヌーク」です。

「チヌーク」はアメリカ生まれで、最大積載量が10t以上あります。そのビッグパワーを生かして重量約4.5tの軽装甲機動車を運んだり、容量7600リットルの空中消火用バケツ、通称「バンビバケット」を吊り下げたりすることが可能です。


CH-47JA「チヌーク」輸送ヘリの機首。黒い部分に気象レーダーが収容されている(柘植優介撮影)。

 陸上および航空自衛隊で使用される「チヌーク」は、ごく初期の機体以外は、1990年代半ばから川崎重工業でライセンス生産されたものですが、使用機は大きくわけて2種類あります。

 陸上自衛隊の「チヌーク」を例にとると、機首部分、すなわち鼻っ面が迷彩塗装の機体と、黒くなっている機体の2種類あります。これは生産時期によるもので、黒くない迷彩塗装のものが初期型、黒くなっているのが後期型、すなわち現行型といえるのですが、単に色が違うだけではありません。

 実はこの黒い部分には気象レーダーが収められているのです。このレーダーは戦闘機などが搭載するもののような火器管制能力はありませんが、進行方向にある雨雲などを事前に探知することができ、進む先の天候を検知してより安全な飛行ルートに切り替えるといったことが可能です。

 また河川や海岸線など、ある程度の地形を画面に映し出すことができるため、限定的ながら航法用としても使用できます。そのため「チヌーク」は気象レーダーを搭載したことで、より安全に飛べるようになったといえるでしょう。

 機首が黒くない従来型はCH-47Jというのに対し、気象レーダーを搭載した、黒鼻の「チヌーク」は区別するために末尾に「A」を付けCH-47JAと呼ばれています。

海外派遣などを想定 さらなる改良型の登場

 さらにCH-47JAには、気象レーダー以外にも、既存のCH-47Jと異なる点がいくつかあります。

 たとえば「チヌーク」は機内容積を最大限広く採るために、燃料タンクを機体側面のバルジと呼ばれる張り出し部に設けています。この張り出し部を、CH-47JAでは大きくして搭載燃料を増やし、航続距離の延伸を図っています。横から見るとあまり差がありませんが、前から見ると一目瞭然です。

 なお気象レーダー搭載による機首部の形状変更や、バルジ部分の拡大などで機体の重量バランスが変化したため、それに対応するため、CH-47JとCH-47JAでは車輪の取付位置も変わっています。また機首下部に赤外線暗視装置が装備できるようになり、コクピットも液晶ディスプレイを用いたグラスコクピットと呼ばれる仕様になっています。


CH-47JA国際任務対応機の特徴。青丸の部分がエンジン吸気口の防塵フィルター、赤丸の部分がチャフ・フレアディスペンサーの取付架台(柘植優介撮影)。

 CH-47JAの調達は1993(平成5)年度から始まりましたが、2000年代前半にはさらなる改良型として「国際任務対応機」というものが登場しています。

 このタイプはPKO(国連平和維持活動)をはじめとした海外派遣などで使用することを想定して改良が加えられた仕様で、機体後部にある2基のエンジンは改良型の防塵フィルター付きとなりました。機体側面にミサイル妨害用のチャフ・フレアディスペンサー取付用の架台を増設しているのが外観上の識別点です。ほかにも機体各所に12.7mm重機関銃の銃座を設置できるようになっています。この「国際任務対応機」は陸上自衛隊にしかない仕様です。

 なお、航空自衛隊の「チヌーク」は当初、陸上自衛隊と同じく気象レーダーのないCH-47Jを導入しましたが、気象レーダーなどが追加された改良型が登場するとそちらの調達に切り替え、2020年現在では運用する全機が改良型で統一されています。しかし航空自衛隊については名称を「JA」にすることなく、黒鼻の改良型もCH-47Jと呼んで運用しています。