日本を走る輸入車の3台に2台以上はドイツ車!

 いま日本における輸入車市場は年間30万台規模となっています。具体的にJAIA(日本自動車輸入組合)の発表しているデータを記せば、2019年1月〜11月までの輸入車総計は31万5439台、そのうち国産ブランドを除いた海外ブランドの乗用車は26万8418台です。

 日本に正規輸入されている海外ブランドは、生産国ではなく各ブランドの本社所在地によってユーザーは「ドイツ車」であるとか「フランス車」や「イタリア車」といった具合に認識している傾向が強いといえます。そのなかでは「ドイツ車」が圧倒的なシェアを占めているのはご存じのとおりです。

 同じくJAIAのデータを見ると、2019年1月〜11月の期間においてもっとも新車が売れたブランドは「メルセデス・ベンツ」で、その台数は5万8882台。2位はフォルクスワーゲン、3位はBMWで、BMW MINI、アウディと続きます。MINIはイギリスの伝統的なブランドですが、BMWの一員ですから、ほぼドイツ車といっていいでしょう。とにかくドイツ車が人気なのです。

 このトップ5を合計すると18万7133台(うち乗用車は18万7106台)となります。つまり、輸入車の乗用車においてトップ5のドイツ車が占める割合は69.7%になります。日本で走っている輸入車の3台に2台以上はドイツ勢というわけです。

 このように評価されている理由を突き詰めると「ドイツ車であるから」ということに行きつくのではないでしょうか。日本のみならず世界的にドイツ車には圧倒的な信頼感があります。世界でも唯一といえる速度無制限のハイウェイ「アウトバーン」は、環境対応が重視される時代には逆行する存在ですが、それでもアウトバーンを持つ国という点でドイツ車全般のブランド性にプラスに働いています。

 歴史的な背景でいえば、クルマを生み出したという点でいえばフランスが世界初ですが、ガソリンエンジン車の誕生はドイツでした。ちなみに、1880年代ほぼ同時にガソリンエンジン車を開発したのがカール・ベンツとゴットリープ・ダイムラーで、それはメルセデス・ベンツのルーツでもあります。

 とはいえイギリスも自動車大国でしたし、クルマの大量生産を実現したのはアメリカのフォードなのは知られているところ。歴史的バックボーンでいえば、ドイツばかりが評価されるのは不思議に思えますが、「ドイツのクルマづくりは信頼できる」という大きなブランドイメージがあるのは事実でしょう。

日本におけるドイツ車優勢の状況が崩れる予兆も

 マニアックなクルマ好きにおいては「ドイツ車の目指す方向が正しい」と認識されている傾向も見て取れます。悪くいえばある種の思考停止ですが、CO2削減にディーゼルが効果的といえばディーゼルを推し、環境対応にはEVが必須といえばEVを評価するような態度というのは、ドイツ車のブランディングに影響を受けている面があるといえるでしょう。

「ドイツのクルマづくりは信頼できる」、「ドイツ車の目指す方向が正しい」というのはドイツ車全般が持つイメージの一面ですが、じつは初期故障率などの品質調査で明らかにドイツ車が優位というわけではありません。それはJ.D.パワーによる自動車初期品質調査の結果などを見れば明らかです。つまりドイツ車への信頼度はブランディングによるものといえます。

 日本では国産車が大多数で、輸入車というのは趣味性が強いカテゴリーの商品ですから、ブランドに心酔して選ぶという面はあるでしょうし、また乗り味といった個人の趣味趣向に左右される評価軸においてドイツ車が選ばれることを否定するわけではありません。ただし、ドイツ車の目指す方向を基準として評価すれば、ドイツ車がもっとも優秀という結論に達するのは当然です。

 グローバル化が進んでいるといっても、まだまだクルマの乗り味など定量化しづらい要素においては各メーカーの違いは大きく、ドイツ車の方向性を評価する人が多ければ、そうしたニーズを満たすクルマが売れるのも当たり前の話です。

 クルマが売れるというのは商品力だけでなく販売力も重要な要素です。販売力というのは大きく見ると店舗数に比例的といえます。そして売れているブランドは店舗数も増やせますし、きめ細かなサービスも可能になります。ドイツ車のなかでもとくにメルセデス・ベンツにおいては、そうした正のサイクルが回ることで販売台数を伸ばしているという面があるでしょう。逆に、フォルクスワーゲンやアウディは前年比で90%前後と販売を減らしています。

 一方でボルボ、ジープ、プジョーといった非ドイツ系の輸入ブランドは、前年比で伸びています。2019年1月〜11月の期間でいえばジープが前年比118%と増えているのが目立ちます。現時点では、日本の輸入車市場はドイツ勢が圧倒していますが、トレンドとしては多様化が進みつつあるといえそうです。