by Jean Beaufort

日本の名だたるピザチェーンや食品加工会社が参加する団体「ピザ協議会」の調査によれば、日本のピザ市場は2018年度で過去最高となる2676億円規模にまで成長し、メーカーによるピザ出荷額も年々増加の傾向にあるとのこと。また、ピザ大国のアメリカでは1秒間に350切れのピザが食べられているそうです。イタリア生まれのピザがなぜ世界中の人から愛されているのかについて、コロラド州立大学医学部のジェフリー・ミラー准教授が科学的な観点から解説しています。

Curious Kids: Why does pizza taste so good?

https://theconversation.com/curious-kids-why-does-pizza-taste-so-good-125618

ピザが世界中で人気である理由は「人間は『脂肪質で甘く、豊かで複雑な食品』を好むからです」とミラー准教授は述べています。ピザは脂肪を多く含むチーズや肉がトッピングされる場合がほとんどで、ソースも甘めに設定されています。また、トマトに含まれるグルタミン酸は「うま味」を生み出す物質として知られています。人間はグルタミン酸を感知すると脳が興奮し、その食べ物をより摂取しようと考えるようになり、唾液の分泌が促進されるとのこと。

うま味を生む物質はグルタミン酸だけではなく、イノシン酸やグアニル酸なども挙げられます。肉やチーズに多く含まれるイノシン酸や、マッシュルームなどに含まれるイノシン酸やグアニル酸は、グルタミン酸と組み合わさることで「うま味の相乗効果」を発揮します。そのため、トマト・チーズ・肉・マッシュルームを1枚にまとめたピザは人間にとって強烈なうま味が感じられる料理となるというわけです。



また、ミラー准教授は「かまどで焼く」というピザの製造工程にもピザのおいしさを生む科学現象が2つ眠っていると指摘しています。

ピザに含まれる糖は、230〜320℃になると「キャラメル化」と呼ばれる酸化反応を起こします。糖はピザの生地やタマネギ、トマト、ソースにも含まれていて、なんともいえない香ばしさと茶色い生地の焼き色はこのキャラメル化によって引き起こされます。

そして、ピザにトッピングされた肉やチーズも、かまどで熱が加えられることによって香ばしく焼き上がりますが、この香ばしさは「メイラード反応」と呼ばれる化学現象によるもの。タンパク質と糖が熱によって反応し、メラノイジンと呼ばれる褐色物質が生み出され、そこにタンパク質を構成するアミノ酸を加熱した香りが合わさると、独特の香ばしさを生むという化学反応です。焦げ目のついたチーズや焼けてサクサクになったペパロニは、このメイラード反応が起きている証拠です。



by U.S. Department of Agriculture

「パン、チーズ、トマトソースをベースにしたピザは、シンプルな食べ物のように思えるかもしれません。しかし、そうではありません。次にピザ一切れを食べようとするとき、脳を興奮させ、味覚を刺激し、口を唾液でいっぱいにするピザのすべてを思い知ることになるでしょう」とミラー准教授は述べました。