動物がコミュニケーション手段のひとつとして用いるニオイは、人間も同様、何らかの行動に影響を与えていると考えられ、これまでさまざまな研究が行われている。米ライス大学心理学部のデニス・チェン博士も、そんな人間の汗のニオイと行動の関連性を研究している一人。昨年のちょうど今ごろには、「男性の汗に対する女性の反応」についての研究発表を米専門誌「The Journal of Neuroscience」で行っているが、12月27日付けの英紙デイリー・テレグラフがこの研究結果を改めて紹介。どのような研究なのか、元の論文に触れながら、少し見ていくことにしよう。

「The Journal of Neuroscience」に掲載された論文によると、博士は20代の女性19人を対象にある実験を行った。それはポリエステル製のパッドに付着させたニオイをかいでもらい、そのときの脳の働きをMRI(磁気共鳴画像装置)を使って調べるというものだ。

実験には20人の男性が協力。まず、実験前の2〜3日間に無香の石けんやシャンプーなどを使ってほかのニオイが付かないように準備した上で、教育ドキュメンタリービデオとポルノビデオを20分間見てもらい、それぞれを視聴中にかいた汗を脇の下に挟んだパッドで吸収した。

これを女性たちには前情報を与えず、2種類のパッドをかいでもらい、反応の違いを調査。すると「女性たちは理解していなかったが、脳はニオイの違いに反応していた」(デイリー・テレグラフ紙より)という。2種類のパッドのニオイをかいだ際、嗅覚に関する特定の領域が反応することは共通していたが、「“性的”な汗のときには、女性たちの脳は、違う部分も反応していた」そうだ。

その部分とは「右脳の眼窩前頭皮質と紡錘状回」と呼ばれるところ。これらは「通常、嗅覚や社会的判断、感情に関係している」(米ニュースサイト・ライブサイエンスより)とされている。つまり、女性の脳の中でこれらの部分が働いたというのは、無意識のうちに“性的”な汗であると、脳が理解したということ。男性が汗のニオイを通して発信した“性的”なサインを、女性が受け取る仕組みが脳にはあるようだ。ただ、こうした研究はまだまだ発展途上で、チェン博士らは、男女の行動に影響を与えるニオイについての研究を続けている。今後の発表も楽しみなところだ。