シャワートイレまで作ってたって何で!? 自動車部品メーカーが手がける「意外すぎる裏の仕事」

自動車で培った技術で新たな分野に挑戦する
1台のクルマには、一般的に内燃機関の場合で約3万点、EVでも約2万点の部品が使われているという。そうなると、巨大なサプライチェーン(供給網)が必要になるだけでなく、半導体など容易に代替の利かない部品が不足すると、車両生産が滞ってしまうほどの影響が出る。当然ながらクルマ1台を作るためには、大小多くのサプライヤーが関わっている。今回は重要部品を供給しているメガサプライヤーや大手サプライヤーを中心に、意外な事業展開について調べてみた。

自動車系サプライヤーというとクルマ関連のみで事業展開しているように思われがちだが、じつはクルマ以外の分野にも進出している。光学技術を活かして宇宙分野に進出したり、精密機器や精密加工の技術を応用して医療機器に携わったりする例もある。ECUやセンサー技術を活用し、ロボット分野に取り組むケースも少なくない。
宇宙分野では、ロケットや月面探査車などに進出している企業もある。国産ロケット「H3」に使用されている電子部品の一部には、自動車用部品が転用されているという。厳しい環境下にさらされる月面探査車のライトやタイヤなどのパーツも、自動車サプライヤーが持つ高い技術力は欠かせない存在だ。

宇宙事業のような夢のある話だけでなく、より身近な製品に関わっていたり、一般消費者向けの商品を送り出していたりするケースもある。トヨタ系サプライヤーのアイシンは、かつてシャワートイレ事業で知られていた(現在はLIXILに事業を移管)。また、e-BIKEと呼ばれる電動アシスト自転車の分野にも、多くの自動車サプライヤーが進出している。
自動車サプライヤーにとって、電動化による自動車部品点数の減少は事業上のリスクとも言える。しかし一方で、新たな分野へ挑戦することで成長を目指す姿勢が、こうした多角的な事業展開につながっているとも言えるだろう。
クルマの技術は地上を超える!?
宇宙分野をはじめ、社会インフラ、あるいは先端素材の分野にも自動車系サプライヤーは数多く進出している。
宇宙分野でよく知られているのがブリヂストンだ。JAXA(宇宙航空研究開発機構)、トヨタとともに参画している「月面探査用有人与圧ローバー」のタイヤを開発中で、空気を使わない金属製タイヤは、120℃からマイナス170℃にもなるという激しい気温差や、地球上の200倍以上の放射線に耐えることが求められている。

自動車ライトで世界トップシェア20%を誇る小糸製作所も、有人与圧ローバーの研究開発に参画すると発表。「ジャパンモビリティショー2025」において、船外照明のコンセプトモックを初めて披露した。研究開発に着手したのは過酷な月面環境での走行を支える”目”となる「LiDAR(ライダー)」だ。レーザー光を使うライダーは、現時点では自動運転で有効なセンサーとして知られ、アウディが2017年に世界に先駆けてA8に採用。小糸製作所では、複雑な月面地形や障害物を3次元で正確に把握し、安全な走行をサポートすることを目指している。

さらに宇宙向けライトの開発にも着手し、空気がなくても放熱できる構造や、夜間に電子部品を保護するヒーターなどを搭載することで、過酷な月面での活動を支える構えだ。
スマートシティ技術で都市空間を快適にする
広瀬すずがCMキャラクターを務めることでもお馴染みのAGCは、自動車用ガラスで世界トップクラスのシェアを誇るほか、建築などで使われるフロート板ガラスでは欧州、日本でトップシェアを達成している。世界で初めて成功したのが、窓ガラスの電波レンズ化だ。メタサーフェスレンズを用いることで、窓ガラスを通過するミリ波を屋内の特定の場所に集めることが可能となる。屋外の基地局アンテナによる屋内エリア化を実現する技術で、電波を通しにくい遮熱ガラスでもミリ波の受信電力を向上させる。

世界シェア60%を誇るミニチュア・小径ボールベアリングをはじめ、小型モーターや半導体などを展開するミネベアミツミは、さまざまなスマートシティソリューションを開発している。「大阪・関西万博」では「PASONA NATUREVERSE」に特別協賛し、「未来の眠りエリア」におけるスマートライディングや、未来のベッドセンサーシステムなどを提案。そのほか、道路インフラであるスマートLED道路灯や、スマートパーキングセンサーなども開発している。

自動車用防振ゴムなどで知られる住友理工は、身近なヘルスケア関連のスマートラバー製品を展開している。柔らかいセンサー技術を搭載した、医療・介護・健康分野向けの製品を展開中だ。自動車事業で培った防振技術は、建築物の制振技術や、新幹線をはじめとした鉄道用防振ゴムにも活かされている。そのほか、ワイヤーハーネスで知られる矢崎総業は、ソーラーシステムの太陽熱利用機器や、国内最大級の3.8MWのソーラーカーポートを設置するなど、カーボンニュートラルへの取り組みを本格化している。

※本記事は雑誌「CARトップ2026年2月号」の記事を再構成して掲載しています


