そりゃ落とされるわ…大企業で"スゴイ実績"を出してきた人が中小の転職面接でバタバタ敗退していくワケ
※本稿は、中谷充宏『《AI対応版》30代後半〜40代のための転職「面接」受かる答え方』(秀和システム新社)の一部を再編集したものです。

■実績だけでは受からない
相手がAIだろうと人間だろうと、ミドルの面接シーンで企業側(面接官)が最も確認したいのは、「成果の再現性」。この点を筆者は10年以上前から公表しています。
「このスキルと実績・経験を、御社でも活かせて、同じような成果を生み出せます」としっかり証明し、納得を得られないと、実績があってもNGということです。
超大手企業での勤務経験がある人が中小零細企業に応募し、輝かしい実績をPRしたとしましょう。これだけだと、「その成果、超大手企業の看板があったからでしょ?」「そりゃ、その会社の名刺があれば、誰とでも会ってもらえるよね」「ウチは知名度も資金力もないから、その超大手のやり方では通用しないんだよね」というのが面接官の評価です。
「経験・実績がある」だけではダメで、応募企業に合わせて、それがどのように活用でき、どう成果に結びつけられるかを「自分の言葉」で説明しなければならないのです。
■AIに聞けばカッコいい表現が出てきてしまう
後ほど詳しく解説しますが、この自分の言葉でというのが非常に重要です。
というのも、「私はこういった経歴を持つ40歳の男性だけど、こういう質問に対して、どう回答すればいい?」とAIに聞けば、驚愕のレベルで綺麗に仕上がってきます。
あまりにカッコいいため、「なるほど! こう答えれば良いのか」と目から鱗が落ち、鵜呑みにして暗記する人がいますが、これは「自分の言葉」ではありません。深掘りされると化けの皮がはがれること必至です。AIはカッコ良い言葉を並べたがるし、嘘もつく。皆さんご承知の通りです。
こうしたAIのメリット・デメリットをきちんと把握した上で、専門家の知恵も借り、最後は自分の頭に汗をかいて、自分の言葉で回答案をまとめ上げる。これが最も効率的です。
■再現性のハラオチなくして採用なし
既述のように、輝かしい実績があっても、「それはあなたが大企業にいたからでしょ?」という穿った見方をされたりすることは、以前からありました。
最近はアフターコロナや業界の構造変化、DXの普及、慢性的な人手不足といった業界・市場・仕事の進め方等の激変により、過去の実績は今まで通りには通用しなくなったため、実績をより疑問視されるシーンが増えてきています。
つまり、ご自身がPRする実績は「本人の実力」ゆえなのか、「単に環境が良かっただけ」なのか、面接官はその見極めが非常に難しくなってきているのです。
その主要因の一つがAIです。
最近はミドル世代の転職活動においてもAI活用が盛んになってきて、「非常にうまい言い回し」や「無難できれいな回答」が氾濫してきています。
たとえば、Geminiに「面接で『あなたの仕事の取り組み方は?』と質問されたらどう答える?」と聞くと、次の回答案が出てきました。
筆者はあえて「仕事の取り組み方」というかなり漠然とした質問をGeminiに投げたのですが、それでもこうした納得性の高い架空の回答案を創作してくるのです。

■面接官は“深掘り質問”で突っ込んでくる
応募者の大半からこういったきれいな回答をされてしまうと、面接官は「本人の真の実力」や「当社とのマッチング度合い」といった重要な選考基準を測るのが困難です。
だからこそ、「成果の再現性」、つまり「こうした実績や経験は、今のこの時代の御社のこの仕事でも活用ができ、同じような成果を生み出すことができます」という応募者のPRをハラオチさせたいために後述のような深掘り質問がどんどん出題されることになります。
また、最近のトレンドとして、「他責傾向」の人は業種・職種、実績・経験を問わず、一発レッドカード、つまり即不採用で選考のステージから降ろされてしまいます。
特にミドル世代が、たとえば「それはコロナだから仕方がない」、「その失敗は当時の上司の判断ミス」などと言うと「他責傾向あり」と判断されます。要注意です。
■当社に、どのように貢献していただけますか?
当社でも再現できる根拠は?
カッコいいばかりで根拠の乏しい話は不要
では具体的な質問と回答法について解説していきましょう。まず前提として、大企業で成果を出し続けてきた45歳の方(営業マネージャー)が、今回の候補者だとします。
「前職では20年間営業一筋で、部長として50人の部下を率い、目標達成率は10年連続110%を超えていました。私には長年培った『鋭い営業感覚』と『幅広い人脈』があります。御社でもこれらのスキルと持ち前のバイタリティーを活かして発展に貢献します」
と、回答したとしましょう。立派に見えるものの、既述ゆえお分かりだと思いますが、「その実績、前の会社のブランドや販路があったからでは? うちのような名もない中小企業で、そのスキルとやらは通用するの?」が、面接官の本音。
一方、AIなら次のようなカッコいい回答案を出してきます。
「私の強みは、営業プロセスを『誰でも勝てるしくみ』に分解・再現できることです。前職では過去5年分の失注データをAIで解析し、成約率を20%向上させる『営業標準化メソッド』を構築しました。御社でも、まずは私の経験を押し付けるのではなく、現在の商談データを分析し、御社の環境に最適化した『勝利の方程式』を3カ月以内に再構築します。私の実績は、この分析としくみ化のプロセスに紐づいています」

満点に見えるかもしれませんが、「カッコいいけど、20%向上の根拠は?」、「当社の仕事に、まだ着手すらしていないのに、3カ月以内なんて断言して大丈夫?」が、面接官の本音です。
とはいえ、活かせる点もあります。定量的な表現をうまく用いていること、他社でも通用する「標準化・しくみ化」を軸にPRしていることです。
しかし、やはりカッコよすぎて、自分の言葉で語っているようには思えませんね。
次のように、もう少し平易な言葉で具体的かつ詳細に説明すると、より良くなるでしょう。
○OK!
「私は前職で、どこに失注の原因があるのか、営業プロセスを綿密に分析し、改善・改良していくやり方で成果を残してきました。
課長昇進と共に部下を持ってからは、若手でも成果が出る営業プロセスの標準化・しくみ化にウェイトを置き、同伴営業で精度を高めていきました。押しつけではなく若手の意見も傾聴してやり方を練り、前年度比で成約率を20%向上させることができました。
このスキルは営業社員育成という御社の課題解決に貢献できると自負しております」
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中谷 充宏(なかや・みつひろ)
キャリアカウンセラー、キャリアコンサルタント、社会保険労務士、行政書士
同志社大学法学部卒。NTT(日本電信電話株式会社)などを経て2004年にキャリアカウンセラーとして独立。マンツーマンで依頼者の転職を支援する転職のパーソナルコーチを務め、米国MBAホルダーや代表取締役などのエグゼクティブ層から、転職回数が多い等のハンデがある人まで幅広い転職支援を実施している。また、社会保険労務士として人事採用コンサルティングも行い、人事部長として企業人事を一任されるケースも多数。著書に『《AI対応版》30代後半〜40代のための転職「面接」受かる答え方』、『20代〜30代前半のための転職「書類」受かる書き方』(秀和システム新社)など多数。社会人向け転職支援
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(キャリアカウンセラー、キャリアコンサルタント、社会保険労務士、行政書士 中谷 充宏)
