「高市、お前もか!」と国民がツッコミはじめた理由…支持率急落の裏で進む「改憲シナリオ」の行方

写真拡大

女性初の首相として高い期待を集めて発足した高市政権に、早くも逆風が吹き始めた。各社世論調査では内閣支持率が軒並み急落し、不支持率が支持率を上回る調査結果も出ている。背景には、物価高対策の遅れや消費税ゼロ公約からの後退に対する失望があるとの見方が強い。一方で、永田町では「支持率低下よりも優先しているものがある」との声も聞かれる。それが、高市首相にとって最大の悲願である「憲法改正」だ。支持率急落の裏側で進む政権の思惑を読み解く。

【画像】〈画像〉「女性の出世も思い通りに」高市首相が若かりし頃に広告塔を務めたサブリミナル広告

なぜ高市内閣の支持率は急落したのか?

「これまでが異常だっただけ」「まだ歴代政権と比べれば高い支持率だ」

こうした見方も永田町にはある。だが、注目すべきは報道各社の世論調査で下落幅が大きく、特に若い世代の支持が減少していることだ。

時事通信の世論調査(7月10~13日)で内閣支持率は前月に比べ5.3ポイント減の49.0%となった。朝日新聞の調査(7月18、19日)では7ポイント減の53%、毎日新聞(同)はマイナス10ポイントの41%、ANN(同)でも10.9ポイント減の49.2%にまで落ち込んだ。

毎日新聞の調査では不支持率が44%に達し、ついに「支持」を上回っている。一体、なぜ高市内閣の支持率は急落したのだろうか。

その要因はひとつではないはずだ。

皇族数の確保に向けた改正皇室典範の国会審議がわずか6時間というスピード採決だったことや、首相陣営が自民党総裁選や衆院選での「中傷動画」制作・発信に関与した疑惑をもたれて国会追及されたこと、さらには与党が衆院議員定数(465)を1割削減する法案の審議入りを強行した点なども指摘されている。

国民が「声が首相に届いていないこと」に気づいてしまった

こうした側面もたしかにあるだろう。だが、筆者は「国民が首相との間に距離があることに気がついた」ことが最大の要因であると見る。一向におさまらない物価高騰に苦しむ国民生活に首相がソッポを向いていると映ったのではないか。

言うまでもなく、皇族数の確保などは大事なことだ。ただ、「今はそれよりも先に、生活を何とかする政策を打ち出してほしい」という切実な声が首相には届いていないと感じたのだろう。

そもそも、高市首相が率いる自民党は2月の衆院選で「飲食料品は、2年間に限り消費税の対象としないことについて、今後『国民会議』において、財源やスケジュールの在り方など、実現に向けた検討を加速します」と公約した。

「私自身の悲願」消費税ゼロ化はどうなったんだ

選挙後、野党に呼び掛ける形で「国民会議」はスタートしたが、それがいつの間にか政府内で「税率1%」案にすり替わっている。

今年1月に消費税ゼロ化が「私自身の悲願」と言ったのは高市首相自身である。2025年5月には「国の品格として食料品の消費税率は0%にするべき」とも発言していたはずだ。

衆院選公約で「ゼロ」を掲げていたにもかかわらず、いつの間にか「1%」と修正しているのだから国民に不満が充満していくのも無理はない。女性初の宰相としての期待感はあったものの、「高市、お前もか!」なのである。

あえて言えば、来年から飲食料品の消費税ゼロ化が実現したとしてもリアルタイムで進行する物価高騰から国民生活を守り抜いているとは言い難い。

国民民主党の玉木雄一郎代表は記者会見で「肝心の物価高騰対策が遅れ、期待を裏切られたと感じる人が増えているのではないか」と指摘。立憲民主党の水岡俊一代表も「国民の理解が得られない法案のゴリ押しが不評を買っている」と分析している。

今後の高市政権の行方を知る上で重要なポイントがある。それは、自民党と日本維新の会という巨大与党が連立政権合意書に記した「衆院議員の定数削減」と「副首都構想」関連法案の取り扱いだ。

与党は審議入りを強行したが、衆院議員定数を1割削減する法案は野党の賛同が得られないと判断して今国会での成立を見送った。

「大阪都構想」実現を悲願とする維新は副首都構想関連法の成立に躍起で、国会は会期末(7月25日)までゴタゴタが続く異常事態となった。

なぜ? 高市政権の行方を左右する2つの法案

なぜ、この2つの法案の取り扱いが「重要」なのかと言えば、それが高市政権の行方を左右するからだ。ただ、その舞台裏は国民そっちのけの深謀遠慮とも映る。

首相は消費税ゼロ化が「悲願」とまで言い切ったが、真の悲願は「憲法改正」にある。尊敬する安倍晋三元首相でもやり遂げられなかった憲法改正を実現したいという思いは、第2次安倍政権の首席秘書官だった今井尚哉氏を内閣官房参与として起用していることからもわかる。

憲法改正と定数削減がなぜリンクするのかと言えば、その答えはシンプルである。

高市首相は自民党の鈴木俊一幹事長に衆院比例代表のみ45議席削減する案で意見集約を図るよう指示したが、この案に対しては国民民主党の玉木代表が「自民、維新に有利な中身で出してくるということであれば、我が党のみならず他の野党もなかなか『はい、そうですか』とはならない」と反発した。

全ては改憲のために

2月の衆院選で自民党は歴史的大勝を果たしたが、参院は与党で過半数割れのままだ。言うまでもなく、憲法改正は衆院と参院の総議員の3分の2以上の賛成で「発議」し、国民投票で「有効投票の過半数」があれば承認されると定めている。

与党が圧倒的な議席数を占める衆院はクリアできるとしても、参院は今のままでは叶わない。そのため、参院で国民民主党を「改憲派」として取り込むことが大前提となる。

首相と自民党幹部は、定数削減法案の扱いをめぐり国民民主党の反発を考慮する必要があるとの認識で一致していた。

強引に定数削減を実現すれば連立入りに向けた協議はもちろん、憲法改正へのプロセスでも同党の協力を得られなくなると判断したからだ。

だが、それでは連立パートナーの維新の立場がなくなる。そのため「副首都構想」関連法の成立に全力をあげ、維新側の理解を得ていくことにしたのである。すべては、首相が成し遂げたい憲法改正のためと言っても過言ではないだろう。

首相が描く「改憲スケジュール」はどのようなものなのか。それは、遅々として進まない物価高騰対策と比してスピード感のあるシナリオと言える。

4月の自民党大会で「立党から70年、時は来た。国会で議論を進めていこう」と呼びかけ、憲法改正の発議にメドをつけたい意向を示した。その具体的時期はわからなかったが、実は首相は来年早々から動きだそうとしている。

想定される改憲へのスケジュール

想定される流れは次の通りである。首相は来年はじめの自民党大会で「1つの宣言」を打ち出すことを考えているようだ。それは、衆院と参院で3分の2以上の賛成を得て憲法改正の発議を行い、国民投票にかけるという強い意志を党大会で表明することになる。

国民投票で有効投票の過半数の賛成があれば、天皇が憲法改正を公布し、正式に成立される。高市首相にとっては首相在任中の憲法改正こそが「悲願」なのだ。

こうした点を踏まえれば、自民党内の権力争いや与野党の駆け引き、さらに言えば円安進行や物価高騰も「小さなこと」と映るかもしれない。

これからの政権運営や法案の取り扱い、予算編成や税制改正などはすべて「憲法改正」をにらみながら首相は臨むことになるだろう。与党の維新はもちろん、野党の国民民主党が反発するような施策は打ち出せないはずだ。

しかし、もし下落トレンドが今後も続いたら…

ただ、そこで問題となるのは「政権の体力」がどれほど残っているかである。現在のトレンドのように来年春まで支持率が下落し続けていけば話は別だ。

維新や国民民主党の顔色ばかり気にして、自らがトップを務める自民党内に配慮できない状態が継続すれば所属議員の反発も予想される。

睡眠時間が足りていないと首相はつぶやいているが、来年春には統一地方選が実施される。大型国政選挙は当面ないとしても地方での敗北が重なれば「体力」は確実に失われるだろう。

はたして、首相には「悲願」を達成できる日が訪れるのだろうか。

文/竹橋大吉 写真/shutterstock