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コンセプトカーからたった2年で量産化

1979年ジュネーブ・ショーのイタルデザイン・ブースにてデビューした、コンセプトカー『アッソ・デ・フィオーリ』が昨年のオートモビルカウンシル2025で展示された際、筆者はその誕生までを原稿にまとめた(編集部注:2025年6月24、25日公開『いすゞアッソ・デ・フィオーリ誕生の軌跡』をご覧ください)。今回はそこから市販版となる、『いすゞピアッツァ』に至るまでのヒストリーをレポートしよう。

【画像】1980年代の名作クーペ『いすゞピアッツァ』とベースのコンセプト『アッソ・ディ・フィオーリ』! 全55枚

ピアッツァは2年後となる1981年5月13日に発表。6月6日に販売が開始された。PF型いすゞジェミニのプラットフォームを使い製作されたアッソ・デ・フィオーリと同様、ピアッツァも基本的にはその部品を使いながら量産化された。


先日いすゞプラザに展示された、ピアッツァ(手前)とアッソ・ディ・フィオーリ(奥)。    平井大介

これはいすゞ首脳陣による『ショーに出した以上は1日でも早く商品化すべき』という強い意向が働き、この短期間での開発、量産化が実現したようだ。

いすゞ広報部コミュニケーション企画グループの中尾博氏は、当時をこのように語る。

「アッソ・デ・フィオーリが量産計画に乗るように、ジョルジェット・ジウジアーロはエンジニアリングの知見を入れて開発しました。それだけジウジアーロはクルマ作りを知っていたということです。何も知らないでただ絵を描いデザインではなく、きちんと作れるようにデザインしています。

例えばドアノブも初代フィアット・パンダのようなボタン式ではなく通常のドアハンドルを使うなど、量産を見据えたスケッチになっています。生産化に向けて最後の最後まで全て、ジウジアーロもチェックしたんです」

もちろん生産化まで漕ぎ着けたのは、いすゞ内部の尽力もあった。デザインやパッケージングの開発部門だけでなく、工場を担当する生産部門を含めピアッツァに関わる全ての部署が一丸となり、「このデザインを生産するんだ」という熱意のものに開発したことも大きいだろう。

2台を比較すると微妙に違う

実はアッソ・デ・フィオーリと比較すると、ピアッツァは僅かにサイズアップしている。具体的には以下のとおりだ。

〇アッソ・ディ・フィオーリ
ホイールベース:2405mm 全長:4195mm 全幅:1620mm 全高:1278mm 重量:1000kg(推定)


ジョルジェット・ジウジアーロのデザインとなるアッソ・ディ・フィオーリ。    平井大介

〇ピアッツァ
ホイールベース:2440mm 全長:4385mm 全幅:1675mm 全高:1300mm 車両重量:1250kg(MT車)

この差は主に、安全性や性能面において必要最低限の変更だ。

そのためボディパネルとウインドウを段差なく処理したフラッシュサーフェースを実現するなど、コンセプトの姿をほぼそのまま市販化しているように見えるが、今回いすゞプラザに展示された2台を比較してみると、微妙に違うことがわかった。

スポーティさは抑えられた一方、居住性が高い

まずフロントでは、アッソ・デ・フィオーリはピアッツァと比べ車高だけでなくバンパーの位置が低く、ヘッドライトの厚みも薄めだ。

サイドウインドウはアッソ・デ・フィオーリの方が倒れ込んでおり、比べてみるとよりシャープで精悍な印象。Aピラーの角度もアッソ・デ・フィオーリの方が寝ており、それに伴いボンネットのラインも直線的に見える。


ウインドウの角度など、見比べると微妙に違う市販版のピアッツァ。    平井大介

ここでわかるのは、アッソ・デ・フィオーリが当時のスポーツカーらしい鋭くウェッジシェイプのスタイリングであるのに対し、ピアッツァはAピラーの角度が少し立ち気味で、ボンネットをはじめ各サーフェスライン(面構成)に大きめのRが与えられていることだ。

この結果、アッソ・デ・フィオーリと比較するとスポーティさは抑えられた一方、居住性が高い印象に繋がり、バランスが取れたデザインになった。これはコンセプトのひとつである、家族4人で週末旅行が可能な実用性、居住性を有することが反映されている。

細部に目を移すと、アッソ・ディ・フィオーリがドアミラーであるのに対し、ピアッツァがフェンダーミラーであることに気がつく。一部ではこのフェンダーミラーを見てジウジアーロが不満を呈したという話が流れているが、中尾氏は否定する。

「このフェンダーミラーも彼がデザインしています。ジウジアーロは『それは法規なのだから仕方がない。デザイナーは、何かあったらそれに合わせて作るもの』だと認識していました」

また、インテリアでも「メーターのキーデザインはジウジアーロのものですが、最終的に要件を入れたデザインはいすゞです」と話す。

今に生きるいすゞのデザイン

最後に中尾氏はアッソ・デ・フィオーリとピアッツァについて、「1980年代にデザインされたことを考えて欲しい」と強調する。

同じ時代に作られたクルマのデザインは今見ると古く感じるものが多いが、アッソ・デ・フィオーリとピアッツァは普遍的で美しいデザインであり、「このデザインフィロソフィーは、今のいすゞにも生きている」と述べる。


ジウジアーロのデザインを忠実に再現しているいすゞの技術力は見事だ。    平井大介

「トラックの生産期間(モデルライフサイクル)は長く、例えば30年前にデザインしたトラックが今でもそのデザインのままで走っています。つまりデザインは普遍的です。いすゞは過去、乗用車でそういったデザインをやっていたからこそ、今のいすゞのクルマにもそのフィロソフィーが引き継がれています。街の中にも違和感なく溶け込み、親しみのある普遍的なデザインを作っているのがいすゞなのです」

アッソ・デ・フィオーリとピアッツァの2台を一度に比較すると、ここが違うんだという気づきに繋がるものの、そのまま生産化されたと言われても納得しそうになる。それほどまでに、ジウジアーロのデザインを忠実に再現しているいすゞの技術力は見事だ。

そしてやはり、今見ても40年以上前に描かれたとは思えないデザインに驚かされる。中尾氏が言う普遍的なデザインとはまさにこのことを指し、トラックが纏うロングライフのデザインこそ、いすゞが過去から培って来た強みのひとつと言えるだろう。