内田有紀&寺西拓人が初デートで急接近 『ラストノート』第1話は甘くも刺激的な幕開けに
「どうしてだろう。諦めていたはずの大切なものが蘇るような、そんな奇跡の予感がした」
参考:寺西拓人は“陰”のある役ほど輝く? 『ラストノート』が俳優人生の代表作になる予感
ラストのモノローグが、ピオニーの香りのように夏への淡い期待を掻き立てる。
内田有紀とtimeleszの寺西拓人がW主演を務めるフジテレビ系木曜劇場『ラストノート』が、7月9日に放送開始となった。タイトルの“ラストノート”は、時間ごとに変化していく香水の、最後の香りを表す言葉のこと。対して、つけた瞬間の第一印象となる香りを“トップノート”と呼ぶ。香水に例えるなら、このドラマの“トップノート”は甘くも刺激的だ。
唐突だが、内田有紀はなぜこんなにも美しいのだろう。単なる造形の美しさだけじゃない。内側から溢れ出るオーラや輝きが年々増していて、あまりの眩しさに目が眩みそうだ。でも気取ったところは一切なく、自然体でチャーミング。年齢問わず女性なら誰もが、彼女のようになりたいと憧れを抱くのではないだろうか。
そんな内田が演じる主人公の一瀬葵は、香料メーカーの営業部で働く49歳。仕事をスマートにこなす、自立した大人の女性だ。中学からの親友である優子(坂井真紀)の前では仕事モードとは打って変わり、リラックスした様子でお茶目な一面を覗かせる。近年は助演として作品を支える側に徹してきた内田に、プロデューサーが「内田有紀さん以外考えられない」と熱烈にオファーしたというだけあって、ぴったりのキャスティングである。
一方で、葵はどこか哀愁を背負っているキャラクターだ。この初回放送で明らかになったのは、会社の同僚・創(徳井義実)と離婚し、バツイチであること。さらに彼女には花の香りだけ分からなくなる嗅覚障害で、調香師を辞めざるを得なかった過去があるようだ。結婚と離婚、仕事での挫折。それらの経験が「変化もサプライズも、もういらない」と現状維持に重きを置く今につながっているのだろう。
調香師を辞め、一から覚えた営業の仕事でようやくやりがいを感じられるようになった葵だが、今度は人員補充で総務部への異動を命じられる。不本意だけど、上司の意向に沿う。喫茶店でアイスをオーダーしてホットのコーヒーが届いても、あえて指摘しない。ふと過去の後悔や悲しみが襲ってくるけれど、静かに呑み込む。それは、彼女が“大人だから”。きっと多くの大人は、葵のようにすべてが想定内の人生で、なるべく波風を立てずに生きている。
そんな葵の人生に想定外を持ち込んだのが、寺西拓人扮するもう一人の主人公・樋口澄晴だ。マッチングアプリで出会った優子の恋愛感情を利用し、ほとんど無価値な絵画を高額で売りつけた19歳年下の男。いわゆる恋愛(デート)商法だが、それを裏付ける証拠はなく、警察も弁護士もまともに取り合ってくれなかった。そこで、葵はマッチングアプリで澄晴に接触し、同じ手口に引っかかるふりをして証拠を掴もうとする。
■『ラストノート』印象的だった寺西拓人の“目”の演技 2人が初めてデートをする日、待ち合わせ場所に現れた澄晴を見て、「これは騙されるのも無理はないな」と正直思ってしまった。清潔感と誠実さ溢れる外見、柔らかい物腰に、人懐こい笑顔。優子を騙した男だと知っている葵でさえも、一瞬息を呑んだのが分かった。もし優子のようにすっかり自信を失っているとき、澄晴みたいに魅力的な男性が目の前に現れて自分を肯定してくれたら、コロッとほだされてしまうかもしれない。だが、それこそが詐欺まがいの会社でトップの営業成績を収める澄晴の常套手段なのだ。女性に「必死で生きてるあなたは綺麗だ」と語りかける裏では、一緒の会社で働く幼なじみの龍太(草川拓弥)に「みっともないよな、必死で」と吐き捨てている。
印象的だったのは、寺西の目の演技だ。澄晴が葵に甘い言葉を呟いている時、表情は優しく微笑んでいるけれど、目を見ればそれが本心ではないことがわかる。まるで感情を失っているかのように暗く、光も差さない。そんな澄晴の目に生気が宿った瞬間がある。葵が東京タワーから活気に溢れた夜景を眺めながら「他人事みたい」と呟いた時だ。
澄晴の過去はまだベールに包まれているが、支配的な父・眞澄(佐々木蔵之介)のもとで育った彼もまた、いろんなことを諦めながら生きてきたのかもしれない。澄晴が葵を2度目のデートに誘ったのは、お金のためでもあるが、それ以上に彼女にどこか共鳴する部分があったからなのではないだろうか。一方、葵の心にも親友を苦しめた憎き相手であるはずなのに、澄晴との出会いが早くも波紋をもたらしている。特筆すべきは、「どこかで会ったことありません? 僕たち」という一見口説き文句としか思えない澄晴の言葉があながち間違いでもなさそうなことだ。ラストで葵が一瞬だけ思い出した、ピオニーの花を差し出す男の子は果たして澄晴なのだろうか。
木村文乃とSnow Man ラウールの共演で真面目な高校教師と無学なホストの禁断で純粋な愛の物語を紡いだ『愛の、がっこう。』(フジテレビ系)の放送から1年。夏めく木曜の夜に、再び熱狂を巻き起こしそうなラブストーリーが産声を上げた。このドラマが終わる頃、私たちの胸にはどんな香りが残っているのだろう。(文=苫とり子)

