親が亡くなった直後は、悲しみに向き合う余裕もないまま、次々と手続きに追われることになる。死亡診断書の受け取りに始まり、役所への届け出、葬儀の手配まで、やるべきことは短期間に集中する。多くの人が人生で一度か二度しか経験しないため、初動の段階で判断を誤りやすい。実はそのつまずきが、将来の税務調査を招く火種になっている場合があるという。
 
脱・税理士の菅原氏は、遺族が親の財産に触れる最初の瞬間から、すでにリスクは始まっていると語る。財布やキャッシュカードを見つけた際、生活費や葬儀費用のためにと安易に現金を動かしてしまう遺族は少なくない。だが、親が亡くなった時点でその財産は本人だけのものではなく、相続人全員の共有物となる。単独の判断で扱ってしまうことが、後々大きな問題に発展しかねないと菅原氏は指摘する。搬送を担った葬儀社にそのまま依頼を続けるかどうかも、冷静に見極めるべき判断の一つだという。
 
さらに厄介なのは、財産に手をつけた事実そのものが、相続放棄という選択肢を閉ざしてしまう可能性があることだ。借金の存在が後から判明した場合、放棄という道を選べるかどうかは、その前の行動次第で変わってしまう。加えて、死亡後には所得や相続に関する申告、給付や還付の申請など、複数の期限が段階的に重なっており、慌てて動くほど見落としが生まれやすい構造になっている。
 
葬儀費用の支払い、預金口座が凍結されるタイミング、そして税務署が過去の資金の動きをどこまで遡って確認するのか。契約やサブスクの解約、保険や年金の手続きも含め、これらはいずれも遺族が意識しないまま踏み込んでしまいがちな領域である。菅原氏によれば、こうした一つひとつの判断の積み重ねが、最終的に納める税金の額や、税務調査の対象になるかどうかを左右するという。
 
葬儀にかかった費用の記録の残し方や、後になって支出の説明を求められた際の対応の仕方も、遺族の印象を大きく変える要素の一つとされる。
 
では、実際にどこまでなら手をつけてよく、どのタイミングで何を優先すべきなのか。その線引きこそが、遺族の対応を分ける核心部分だという。身近な家族の死にいつか向き合う可能性がある人にとって、どこで判断を誤りやすいのかが見えてくる内容となっている。