「それ」だと、絶対失敗する…AI翻訳を成功させる日本語の文章。鉄則の「9箇条」を公開する
その翻訳、もしかして「AI」でやりました……?
ChatGPTやDeepL、GeminiやClaudeなど、急速に進歩したAI翻訳を使えば「破綻のない英語」を書くのは簡単です。しかし、破綻がないことが、「理系英語として正確」かつ「世界に通用する」ではありません。AIによる出力結果を、正確な理系英語に“整える力”が必要です。
「正確な理系英語」を出力させるための、日本語原稿作りの重要ポイントとは……?
全理系人に必須の考え方とテクニックを、豊富な実例を交えて懇切丁寧に解説した待望の書が、ご自身の英語論文執筆に加え、学術論文や産業分野の技術文書の英訳の経験も豊富な物理学者、森弘之さんの筆による『論文から技術文書まで 「AI翻訳」で書く理系英語入門』(講談社ブルーバックス)です。
本シリーズでは、この注目の書から、AI翻訳に必須のテクニックと、注意すべきポイントのいくつかをご紹介していきます。
まずは「しっかりした日本語原稿の準備を」という命題に備えるために、必須ポイントをご紹介していきます。
*本記事は、『論文から技術文書まで 「AI翻訳」で書く理系英語入門』(ブルーバックス)を再構成・再編集したものです。
「AI翻訳に適した日本語」の書き方
日本語にありがちな曖昧さや誤解の生じやすさを紹介してきました。そのような要素を含んだ日本語を英訳してしまうと、意図するところとは異なる文章になってしまう危険があります。
そのため、AI翻訳を実行する前の準備として、翻訳に適した日本語で元の原稿を用意する必要があるのです。
その際に注意すべきなのは、以下に示す9点です。
主語を明確にする
曖昧な表現を避け、具体的で正確な記述にする
複雑で難解な表現や入り組んだ文構造を避け、読みやすくわかりやすい文章を書く
冗長な表現や不必要に長い文章を避け、簡潔な記述を心がける
「日本語独自の表現」と思われる語句をできるだけ言い換える
誤字・脱字などをすべて取り除く
慣用句や比喩表現を避ける
専門用語や略語は統一し、初出時に定義する
全角記号ではなく半角記号を用いる
これら1〜9のうち、今回の記事では1、2、5の3点について、ご説明していきましょう。
主語を明確にする
日本語としては違和感のある文章になったとしても、できるだけ主語を記述するようにしましょう。主語がない文章だと、AI翻訳が勝手に主語を補うか、あるいは、 下手をすると命令文として解釈されてしまう可能性もあります。
そのような事態を避けるために、少なくとも主語が誤解されることのないような文章にしておく必要があるのです。
誤解されることのないような文章にする 例1
観察したところ、温度が急激に上昇していた。
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我々が実験中に観察したところ、温度が急激に上昇していたことがわかった。
誤解されることのないような文章にする 例2
出力結果を用いて監督者の下で指定された実験をすぐに行うこと。
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被験者は出力結果を用いて監督者の下で指定された実験をすぐに行うこと。
曖昧な表現を避け、具体的で正確な記述にする
「あれ、これ、それ」などの指示代名詞を極力使わずに、 明示的に名詞を記述しましょう。
日本語としては、おそらくくどい文章に感じられると思いますが、AI翻訳側にはわかりやすい文章であり、指示代名詞が示すものを誤解されるリスクがなくなります。
具体的で正確な記述にする 例1
これにより、反応が促進された。
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触媒Xの添加により、反応が促進された。
具体的で正確な記述にする 例2
それによって温度分布が変化する。
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断熱材の厚さの違いによって、温度分布が変化する。
「日本語独自の表現」と思われる語句をできるだけ言い換える
たとえば、「キーンと音がした」「実験成果に手応えがあった」「アームがピタッと止まる」などのような「日本語独自の表現」が、英訳の妨げになることがあります。
とくに、擬態語、擬音語、感覚語などに、英訳しづらい日本語独自の表現が多く見られます。このような表現や語句は、より具体的で、英訳しやすいと思われる表現に言い換える必要があります。
それでは、上記の例では、どのように言い換えておくとよいでしょうか。
例として挙げた「キーンと音がした」「実験成果に手応えがあった」「アームがピタッと止まる」はそれぞれ、「高周波音が発生した」「実験で有望な結果が出た」「アームが指定位置で正確に停止する」などと言い換えることで、AI 翻訳にとっても訳しやすい日本語になるでしょう。
「日本語独自の表現」と思われる語句をできるだけ言い換える 例1
試料の表面はザラザラしていた。
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試料の表面は粗く、不均一であった。
「日本語独自の表現」と思われる語句をできるだけ言い換える 例2
電源を入れた瞬間、モーターがウィーンと音を立てて動き出した。
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電源を入れると、モーターが回転音を発しながら動作を開始した。
もちろん、これらの各注意点を杓子定規にすべての文章に適用しなければいけないわけではありません。
たとえば、「曖昧な表現を避け、具体的で正確な記述にする」において、すべての指示代名詞に、それが指し示す語句を入れてしまうと、前文の繰り返しのような表現が続き、逆に読みにくくなります。あくまでも「何を指すかが不明瞭」な場合に対応すべき事項と言えるでしょう。
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日本語原稿の準備で気をつけたいポイントをご紹介しました。この記事では割愛したその他の6つの要点についても、『「AI翻訳」で書く理系英語入門』で詳しく取り上げています。ぜひお確かめください。
さて、次回は、既存の原稿など、作成する段階では「英訳することを想定していなかった」日本語原稿をAI翻訳する場合の、リライト法について取り上げます。今回の「誤字・脱字に気をつける」の項目とも関連した、“とても怖いミス”もご紹介します。
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