3倍速でまとめた成長戦略、日本が「勝ち組」か「負け組」の瀬戸際という危機感…城内成長戦略相インタビュー
高市首相が掲げる「責任ある積極財政」の羅針盤となる日本成長戦略が近く閣議決定されるのを前に、取りまとめを担う城内成長戦略相が読売新聞のインタビューに応じた。
成長戦略の意義を訴え、対外発信強化に意欲を示した。インタビューは2日に行った。(聞き手・堀和彦)
――成長戦略を巡り首相からどんな指示があったか。
高市首相は「結果第一主義」だ。戦略17分野を含む成長戦略について、「スピード感を持って取りまとめ、しっかり結果を出してほしい」と指示があった。各分野のワーキンググループでは合計186人の有識者らに参加してもらい、女性や若手を意識して選定した。省庁にお墨付きを与えるための存在ではなく、建設的な議論を通じて目指すべき官民投資のあり方をあぶり出すことができた。
首相の指示を受けて、職員には通常の3倍速で取りまとめを進めてもらった。戦略17分野のうち62の主要な製品・技術などは「官民投資ロードマップ」として短期間でまとめ上げることができた。関係省庁との緊密な連携が奏功したからだろう。
――「戦略17分野に2040年度までに計370兆円超」などと官民投資の目標を明記する狙いは。
政府がリーダーシップを取る官民投資は、今や世界の潮流だ。特にAI(人工知能)や宇宙、量子分野などの最先端分野は技術革新のスピードが速い。競争の激しさや投資リスクもある。例えば、米国では防衛分野への巨額な投資によって成長した技術を宇宙や自動車分野などに応用してきた。首相は今ここで危機管理投資、成長投資を推進しないと、手遅れになるという危機感が強い。日本が「勝ち組」になるのか「負け組」になるのかの瀬戸際にきている。
首相が私に課した役割の一つは情報発信だ。首相の経済財政政策「サナエノミクス」には世間に誤解もあるが、これをポジティブなものに転換していく。例えば、英語やドイツ語に訳した成長戦略の資料を各国の関係者に説明し、SNSによる多言語発信にも取り組んでいる。
――巨額の官民投資でどのような効果を見込むか。
首相は、先進主要国と比べて足りていない国内投資を徹底的にテコ入れする思いがある。民間投資を誘発し、雇用と所得を増やして消費マインドを改善し、税率を上げずとも税収が増えて名目GDP(国内総生産)が拡大する好循環をつくっていく。40年度までに370兆円超という数字は、あくまで現時点で積み上げた数字であり、それを超えることになるのは当然だと考えている。
地方経済については、大胆な投資がさらなる投資を呼ぶ環境整備を進めていく。価格転嫁や取引適正化の徹底に加え、成長志向の企業や生産性向上への支援強化に積極的に取り組む。中小企業の賃上げ原資となる「稼ぐ力」を向上させたい。目標は、中小企業の労働生産性を30年度までの5年間で15%増加させることだ。
――市場の信認をどのように確保していくのか。
決して野放図に拡張的な財政政策を取るわけではない。財政の持続可能性を実現し、市場の信認を確保する経済財政政策を重要視していく。成長率の範囲内に債務残高の伸び率を抑え、政府の債務残高対GDP比を安定的に引き下げていく。市場とのコミュニケーションも強化していくことが必要だ。私自身、国内外の市場関係者にも適時適切に丁寧に説明していく。原則、5年ごとに包括的な検証を行い、必要に応じて柔軟に計画を見直していく。
――高市内閣で予算編成改革を進める狙いは。
デフレ・低成長時代にとった一律抑制型の予算編成から、物価や賃金の上昇を的確に反映し、成長力強化と名目経済規模の拡大にふさわしい予算編成(への転換)が重要になる。創設した「『強く豊かな日本』投資枠」によって、民間を含めた新たな発想や視点に基づく真に効果的な政策を引き出せるよう、政府の予算づくりを根本から改め「強い経済」の実現を達成したい。
各省庁が予算要求の段階で「あれもこれも」という感覚ではなく、優先順位の高いものをこれまでと違った形で要求をしていくことが大事だ。予算編成の抜本見直しを反映した初めての予算となる27年度を「責任ある積極財政元年」と位置付ける。新しい予算要求のルール整備に加え、要求する省庁側の意識改革も促したい。
――成長戦略と同時期に策定する「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)で意識する点は。
全体の文量が長ければ長いほどメッセージ性が希薄になる。首相からは「真に骨太な簡潔で分かりやすいメッセージ性のある内容に」と指示があった。私も外務省出身だが、できる限り「役所言葉」にならないよう、書きぶりには自分なりに知恵を絞ったつもりだ。

