ゆうちょ銀行が民間金融機関にとって脅威となる?(C)日刊ゲンダイ

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「郵政民営化法等の一部を改正する法律案」が19日、参院本会議で賛成多数で可決、成立した。全国の郵便局ネットワーク維持を目的とした公的支援(650億円)の制度化と、日本郵政に対し、金融2社(ゆうちょ銀行、かんぽ生命)の株式3分の1超の保有義務を課す内容だ。

 付則では、「日本郵政と日本郵便の合併」や、郵便事業の持続的な運営のための方策についても公布後2年をめどに政府が検討するとした。同時に「上乗せ規制」の在り方についても検討される。

「上乗せ規制」とは、金融2社が民間金融機関と対等な競争条件を確保するため課されている業務制限である。とくに「ゆうちょ銀行」については、貸出業務などの上限や認可制が課されており、貯金業務についても預入限度額が1300万円までと定められている。

 今回の改正で政府の出資が残る中、先行き上乗せ規制のみが緩和・撤廃されることになれば、「民間金融機関への影響は甚大だ。到底受け入れられない」(地銀幹部)と神経をとがらせている。

 さらに営業現場での危機感は並大抵ではない。「鳴りを潜めていた100年戦争が復活しかねない」と、ある地銀幹部は今回の郵政民営化法の改正に、こう語気を荒らげる。

 日銀がマイナス金利政策を転換して、政策金利は徐々に引き上げられてきた。16日には、政策金利を0.25%引き上げ、1%の大台に乗せた。実に31年ぶりの高い水準だ。

「金利の復活」は、金利で商売する銀行の復活に等しい。だが、それは「預金獲得」という熾烈な競争が再現されることを意味している。「企業などの資金需要に預金獲得が追いつかない状態になっている」(地銀幹部)ことも、預金獲得競争に拍車をかける。

 その預金獲得競争で火種となりかねないとみられるのが「銀行VSゆうちょ銀行 100年戦争」というわけだ。国の資本が残るゆうちょ銀行が、公的信用力を生かして預金獲得で暴れまわれば民間金融機関にとって脅威となる。

 郵政民営化改正法は、「日本郵政グループ」を限りなく国営や郵政公社へ先祖返りさせ、延命維持させる枠組みに他ならない。

 成立した郵政民営化改正法は、「郵便局救済法案」と揶揄される代物だ。全国1万8000人超の郵便局長が所属する政治団体「全国郵便局長会(全特)」が、昨年夏の参議院選挙を人質に、自民、公明、国民民主に働きかけて議員立法として提出された法案である。

 全国津々浦々の郵便サービス「ユニバーサルサービス」を守るために注入される公的資金650億円についても、当初から明確な積算根拠があったわけではない。

「政治が決めた腰だめの数字に、公的資金を受ける日本郵政側が後付けで理屈を考えた」(関係者)といわれる。要は赤字が続く、日本郵便を救うための法律であり、国による赤字の補填に他ならない。

 急激な人口減少とネット社会の進展という2つの逆風にさらされ、郵便事業は先細りの状況に陥っている。

 近い将来、付則で明示されている「日本郵政と日本郵便の合併」や、郵便事業の持続性を維持するために公的資金の追加支援があるかもしれない。

(森岡英樹/経済ジャーナリスト)