石油に代わる未来 「雑草からプラスチック」ノリを育て、農作物を保水 世界初のロボットが活躍 「人工ダイヤモンド」は海ごみから

世界を大きく変えるかもしれない金沢大学の研究。
中東情勢の混乱で浮き彫りとなった石油への依存。その石油に頼らず、私たちの身近にある植物などからプラスチックに代わる素材を生み出され、農業や漁業の現場で循環させる取り組みが今、本格化しています。
キャンパスの雑草や震災がれきが…◇金沢大学理工研究域・郄橋憲司教授…「これが大学のキャンパスを草刈りして出てきた草です。これをまず第一段階、細かなものに変えます。それをもっと細かいものにしたのが原料になっている」
◇金沢大学理工研究域・郄橋憲司教授…「雑草だけでなく、能登の地震で被害にあった家から出る建築資材も原料」
金沢大学では行き場のない雑草や廃材などから、環境にやさしい循環型の素材を生み出す研究を進めています。
研究室にはパキスタン、インド、ウクライナ、中国からの研究者が加わるなど、世界が注目する取り組みです。
◇パキスタンからの大学院生・ハフィーズ・アブドゥルさん…「もう装置の先から出てきています。連続プロセスで高吸水性ポリマーが得られます」
キャンパスの「雑草」に、「おから」とレモン汁の原料「クエン酸」を配合することで生まれた高吸水性ポリマー。
「石油がなくてもいいんです」◇金沢大学理工研究域・郄橋憲司教授…「石油がなくてもいいんです。こういうものを農業の土壌の保水剤に使う。すべて天然物ですので、土壌の中で分解してくれて、しかも農作物の育成を助けるということ」
世界初!植物プラスチック合成ロボット金沢大学と地元繊維機械メーカー「津田駒工業」が共同開発した、世界で初めての植物プラスチックを全自動で合成するロボットシステム。
植物を構成する「セルロース」という繊維を液体化し、化学反応させることで植物プラスチックを生み出すことができます。
◇金沢大学理工研究域・郄橋憲司教授…「これ全部で5台ありますから、ロボットが健気に、もう休みなく動いてくれて、1日に10種類作ったとしても、300日やったら3000種類のデータがたまってくる。そのたまったデータをAIを使って学習させて、企業がこういう物性のものがほしいとなったらAIがこういう素材が良いと予測してくれる」
漁網が「石油」から「植物」で近く、植物由来のバイオプラスチックから漁網が作られることに。
植物由来のプラスチックから作られた糸を巻き、円形状にセットされた機械。この機械で編み上げることで、定置網など大きな漁網が作られます。
製造するのは、漁網ひと筋118年、全国シェア15%を占める、石川県金沢市の漁網製造会社「中外製網」です。
一般的な定置網は長さ120メートルから130メートルの大きさとなります。
工場でいくつものパーツに分けて作ったものを、漁場でつなぎあわせて使われています。
一般的な漁網は「ナフサ」が原料一般的な漁網は、ほとんどが石油由来のナフサを原料としたポリエステル製です。
中外製網では、中東情勢が悪化する3年前から、ナフサに代わる植物由来のバイオプラスチックの漁網づくりを金沢大学とともに模索してきました。
◇中外製網・柴田彰一郎社長…「すべて化学製品に頼らないということと、あとは今まで漁網というのは使われたら燃やされる、捨てられる、砂浜に打ち上げられてゴーストフィッシングになるとか、色々なリサイクルの問題が大きくつきまとっていました。なのでそれを植物由来のものにするということで、自然に還る。そういう網ができれば。漁業が自然の循環の中で行われているものですので、より自然にやさしいものができたらというところで、開発を進めました」
「海ごみ」が生態系に危険を及ぼす現状今、世界の海では捨てられたペットボトルや災害などでちぎれた漁具が流れ出す「海ごみ」が深刻な問題となっています。
石油由来のプラスチックは海を漂う間に劣化して細かくなり、自然に還らないため海洋生物が飲み込んでしまうなど生態系に危険を及ぼしているのです。
植物プラスチックで漁網づくりこうした中で、金沢大学で海洋生物資源を専門とする竹内裕教授らが、植物由来のプラスチックによる漁網づくりに乗り出しました。
◇金沢大学理工研究域・竹内裕教授…「植物の特に農業の現場で出てきた農業副産物、搾りかすだとか、それをうまく金沢大学で加工してプラスチックにする。プラスチックから糸を作る。糸をよって編んで網になっていく。こういった網を今、作っています」
竹内教授らは、新潟の海洋高校が行っていた昆布の養殖に、試作した植物由来のロープを使うなど実証実験を重ねました。
およそ3年にわたる研究で試作の糸を完成させ、2026年の秋から静岡県のノリ養殖で実際に使われることになりました。
循環の仕組みをめざして◇金沢大学理工研究域・竹内裕教授…「これはノリを育てる網なのですが、ノリの養殖漁業者はたったの2年しか使わないことがわかって、そうであれば使ってもらって回収するという、そういう仕組み、循環の仕組みを作りやすいのではないか」
課題は「環境配慮」と「コスト」ノリ養殖では2年以上、網を使うとノリの付き具合が悪くなると言われていて、今後は環境配慮の価値を高める一方でコストが課題となります。
◇中外製網・柴田彰一郎社長…「課題はやはり漁業者が手に取るときの価格帯がどうしても、今までの素材で作られた網よりは高くなってしまうので、そのコストをいかに落として、使いやすい網で、そしてまた自然に還るという循環ができるようなこと、ここが一番の課題と思っている」
「めぐみがめぐる」世界を研究だけにとどまらず、ビジネスとしての流通や回収・再生といったサイクルも実現しなければならない。
金沢大学では企業や生産者、市民などに幅広く呼びかけ、植物プラスチックをきっかけとした循環を共に創る=「共創」の場、「めぐみがめぐるコンソーシアム」を立ち上げました。
世界が驚く研究成果が生まれようとしている◇金沢大学理工研究域・郄橋憲司教授…「我々、自然界から恵みをいただいている。それを使って、またそれを巡らせるという意味を込めて、めぐみがめぐるコンソーシアムという名前にしました。
海ごみから「人工ダイヤモンド」◇金沢大学理工研究域・郄橋憲司教授…「ダイヤモンド部会というのがあって、海ゴミのプラスチックを原料にして人工ダイヤモンドを作るというのが急速に動いていまして、海ごみプラスチックをガスにして、水素を作る。その水素ガスも循環するような形にして人工ダイヤを作る。子どもたちが海ごみ拾いをワクワクしながらやって、これがダイヤに変わるんだというようなそういう社会になっていく」
「地下資源」から「地上資源」へ石油に代表される地下資源が中東情勢で大きくクローズアップされる中、地下資源にだけ頼る危うさが浮き彫りとなりました。
「地下資源」から環境を強く意識した「地上資源」への広がりをめざす、金沢大学を中心とした産学官が共創する取り組み。
2026年末には、海ごみから作った人工ダイヤモンドが完成の時を迎えます。
