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生活保護の担当者から「余命」を尋ねられた──。

東京都足立区で、がんと闘病しながら生活保護を受けて暮らす30代女性から、弁護士ドットコムニュースにそんなうったえが寄せられた。

足立区は、弁護士ドットコムニュースの取材に対し、「一般論」として余命を尋ねる運用を否定している。

一方、女性による録音には、区職員が「支援のため状況把握」と説明する場面も残されていた。

●海外留学の準備中、希少がんと診断

女性は2024年、希少がんの一種である「類上皮肉腫(るいじょうひにくしゅ)」と診断された。

それまで健康上の大きな問題はなく、海外で英語を学ぶ準備を進めていたという。突然の告知に大きなショックを受けたが、前を向こうと気持ちを切り替えた。

一方で、治療には時間がかかると説明され、生活保護を申請することになった。

女性は「自分が生活保護を受けるイメージは全然なかった」と振り返る。

●受給開始から3カ月後、「余命はどれくらい?」

女性は2024年6月から足立区生活保護の受給を開始した。

その約3カ月後、福祉事務所を訪れた際、担当のケースワーカーから「医者から余命はどれくらいか聞いていますか」という趣旨の質問を受けたという。

女性は質問の意図がわからず、不思議に思いつつ「特に言われていない」と答えた。

さらにその後、2025年6月には、別のケースワーカーが自宅を訪問した際、再び余命について尋ねられたという。

●「『早く死ね』と言われている感じがした」

女性によると、闘病中の感染リスクを減らすため、ウォシュレット付きトイレの費用負担などを求めていたが、区の担当職員には十分に取り合ってもらえなかったという。

そうした中で、余命について複数回尋ねられたことから、不信感が募っていった。

「余命が短いとわかれば、こちらが求める手続きをしないと判断する理由に使われてしまうんじゃないかって。『早く死ね』『国のお荷物だ』と言われている感じがして追い込まれました。がんと診断された時とは違う形でメンタルがやられ、治療へのやる気を削がれました」

女性は担当のケースワーカーに対して、なぜ余命を確認する必要性があるのかを尋ねたが、納得できる説明を受けられなかったと主張している。

足立区「個別案件は回答を差し控える」

実際に、生活保護の受給者に余命を尋ねることはあったのか。

弁護士ドットコムニュースが足立区に質問状を送ったところ、次のような回答があった。

──生活保護を受給している◯◯さんという希少がんと診断された30代の女性に対して、足立区のケースワーカーが余命を尋ねたことはありますか。

「個別案件については回答を差し控えさせていただきます」

──一般論として、足立区では、生活保護受給者(がん患者など)に対して、ケースワーカーが窓口や訪問時に余命を尋ねる運用や指導をおこなっていますか。

「おこなっておりません」

●録音に残されていた発言「今後は一切申し上げない」

足立区によると、一般的な対応として、生活保護受給者の余命を確認する運用はないという。

一方、女性が録音していた担当者とのやり取りには、余命発言の真意を問いただす女性に対し、区の担当者が否定することなく「気分を害してしまったら申し訳ない」と述べる場面が残されていた。

また、別の職員との会話では、「支援する立場において、どのような支援が適切なのかという状況を把握するためにも、前任のワーカーが聞いている状況は我々として把握しないと支援できないという趣旨で確認する場合がある」「今後は一切申し上げない」といった発言も記録されている。

女性はこううったえる。

「今の時代、2人に1人はがんになる。誰がいつどこでなるかはわかりません。自分の家族ががんになっても余命を聞くことができるのでしょうか。私はがんになって夢が全部消えちゃったけど、気持ちを切り替えようと思っている時に余命を聞かれ、とても辛かった」

生活保護に詳しい弁護士「不適切な行為だ」

生活保護の問題にくわしい太田伸二弁護士は「生活保護法上、福祉事務所には調査権限が認められていますが、生活保護を開始するか、どういった給付をするか等の決定のために必要な範囲に限られます」と指摘したうえで、次のように話す。

「そういった決定は、その時点における収入・資産等に基づいて判断するのであって、余命は必要な情報ではありません。

そうであるにもかかわらず、余命のようなセンシティブな情報を聞き出そうとした行為は、調査権限の範囲外の行為であるだけではなく、ご本人に強い精神的苦痛を与えるもので、生活保護の運用にあたって不適切な行為だと考えます」