北中米W杯のグループリーグ初戦・オランダ戦を2日後に控えて行われたナッシュビルでの練習。日本代表MF中村敬斗(スタッド・ランス)は静かな口調の中にも大舞台への高揚感と勝利への強い意志をにじませた。

 日本は主将として長らくチームを牽引してきたMF遠藤航が負傷でチームを離脱し、苦しい状況に置かれている。それでも中村は「キャプテンとして引っ張ってきてくれたので、ここで離脱というのは難しいけど、本当にやるしかない。あさってすぐ試合なので、自分にできることを最大限やる」と前を向く。自身の調子についても「チームもコンディションが上がってきているし、いい状態にあるので試合が楽しみ」と語り、開幕戦へ向けて手応えを感じている様子だ。

 オランダはフィジカルの強い選手が並びながらボール保持力にも優れ、日本としては相手に主導権を握られる時間が長くなることが予想される。だからこそ、中村は日本の武器であるカウンター攻撃に勝機を見いだしている。「相手はボールを持つ時間が長くなると思うけど、イングランド戦をイメージできたらいい。カウンターで1本刺せれば勝てるチャンスはあると思うし、いい試合ができるんじゃないかなと思います」

 3月31日のイングランド戦ではMF三笘薫(ブライトン)のボール奪取から日本が鋭いカウンターを発動。左サイドの中村は相手守備陣のわずかな隙間を通す絶妙なグラウンダーのクロスで三笘の決勝ゴールをアシストした。「イングランド戦はチームとしていい試合ができたし、勝利まで収めたので自信になった」。そう振り返るように、世界屈指の強豪相手に勝利を収めた経験は中村の大きな自信になっている。

 今回のオランダ戦でも、中村のテクニックは日本にとって最大級の攻撃カードとなる。相手が前掛かりになった瞬間を逃さず、一撃で試合の流れを変える役割が期待される。

 一方で、中村に課されるのは攻撃だけではない。守備面ではオランダの強力な右サイドへの対応が重要になる。マッチアップが予想されるのは、欧州屈指の攻撃的サイドバックとして知られ、R・マドリーへの移籍も噂されているデンゼル・ダンフリース(インテル)だ。

「出るとしたら(対峙するのは)ダンフリース選手になると思う。高さもあってスピードもある選手なので、しっかり警戒して仕事をさせないように頑張りたい」

 守り方としては、空中戦で真っ向勝負を挑むのは現実的ではないが、「ちょっとでも向こうが競り合いづらくするような、やりづらくするようなディフェンスができればいい」と話し、周囲との連係も含めて対応する考えを示す。

 さらに「ダンフリース選手だけじゃなく、その周りの選手との関係(への対応)も難しくなる。そこは味方と連係してうまく守れればいい」と強調。クロス対応についても「寄せを早くして上げさせない。上げさせても守る準備はできている」と自信をのぞかせた。

 オランダ戦では守備から入り、強豪の攻撃を食い止めながら一瞬の隙を突く。それが中村の描く勝利への青写真だ。「攻撃のためにエネルギーをためるなんてことは全くない。まず守備でやらせないことが大事」と語る姿からは、攻守両面でチームを支える覚悟が伝わってきた。

 初めて迎えるワールドカップの舞台。それでも中村は「いつも通り準備して試合に臨めればいい」と平常心を貫く。世界が注目する開幕戦でゴールを奪い、日本を勝利へ導く。その瞬間を思い描きながら、25歳のアタッカーは運命の一戦に挑む。

(取材・文 矢内由美子)