「プーチンの崩壊近づく」ロシア第2の都市への攻撃にも対抗策なし…誇大妄想と側近粛清で政権維持も戦場・経済はドン底突入

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ロシアの「鉄壁の安全神話」が揺らいでいる。プーチン大統領が国内外の要人を招いて威信を誇示するはずだったサンクトペテルブルク国際経済フォーラムの開幕直前、ウクライナ軍の長距離ドローンが同市周辺の軍事・エネルギー施設を攻撃したのだ。

【画像】プーチンが「ロシアは健在だ」と誇示するはずだった舞台で、ウクライナの攻撃を受けて上がる黒煙

戦況の停滞、軍上層部への大規模粛清、そして急速に失速する経済――。表向きには勝利を語り続けるプーチン政権だが、その足元では軍事・政治・経済のあらゆる領域で綻びが広がっている。なぜロシアは「自国第2の都市すら守れない国」になったのか。最新の戦況分析や現地報道から、その実態を読み解く。

ロシアは自国第2の都市すら守れない事実を世界に生中継

ロシア、第2の都市・サンクトペテルブルクに黒煙が立ち上ったとき、プーチンが築き上げてきた虚構は、崩れ落ちた。

2026年6月初旬、サンクトペテルブルク国際経済フォーラム。クレムリンがグローバル・サウスに向けて「ロシアは健在だ」と誇示するはずだった舞台で、開会の朝、ウクライナの長距離ドローンが市内の石油ターミナルと近隣のクロンシュタット海軍基地を直撃した。

英ガーディアン紙が6月3日に報じたところによれば、ウクライナ国境から1,100キロメートル離れたこの都市で、プーチンが基調講演を行う会場のわずか10マイル上空を黒煙が覆い尽くした。

ドックで修理中だったバルト艦隊のコルベット艦「ボイキー」にも命中弾が出た。空港は閉鎖され、モバイル通信は遮断された。約130カ国から2万人が集まる祝祭の最中に、ロシアは自国第2の都市すら守れないという事実を、世界に向けて生中継してしまったのである。

表向きの威勢と、その裏で進む崩壊

この一発の黒煙ほど、いまのロシアを正確に描いた絵はない。表向きの威勢と、その裏で進む崩壊。プーチンは勝利を語り続けているが、彼の足元では地面が静かに抜け落ちている。

戦場の話から始めよう。

米戦争研究所(ISW)が6月6日に公表した戦況評価の分析は、マッピング手法の違いを越えて一致している。ウクライナ軍はロシアの2026年春季・夏季攻勢を「ほぼ完全に阻止した」としている。

2025年12月から2026年5月までの半年間で、ロシア軍が新たに支配または侵入した領土はわずか40.64平方キロメートルにとどまった。前年同時期の515.84平方キロメートルと比べれば、10分の1以下である。しかも同じ期間に、ロシア軍は281.1平方キロメートルを失っている。

つまり、純減だ。

これだけの惨状でも、プーチン本人はまったく動じていない

2026年5月5日から6月3日までのおよそ1ヶ月だけで、約240平方キロメートルの純減を記録したことになる。

ウクライナは年間700万機ともいわれるドローンを投入し、電子妨害を無効化する光ファイバー誘導ドローンを実戦に持ち込んだ。

戦場のリアルタイムデータ統合システム「Delta」が運用を広げ、迎撃ドローンの撃墜数は2026年春以降、急増している。ロシアが防衛突破の頼みとしてきた戦術無人機は、空中で次々に叩き落とされている。

そしてウクライナは、敵の前進を待たずに敵の生命線そのものを切りにいった。ロシアの鉄道と補給線への攻撃である。占領下ルハンスク州からクリミアに至るまで、補給路は日常的に脅かされ、前線から83キロメートル離れた燃料基地さえ焼かれた。

ロシア本土とクリミアを結ぶ陸上回廊では、ウクライナの特殊作戦部隊が後方支援車両を組織的に潰している。結果として占領地全体でガソリンが不足し、ケルチ大橋やガソリンスタンドには長い列ができた。前線で兵士を殺すより、後方で燃料を枯らす。ロシアは対抗手段を失いつつある。

ここで奇妙なのは、これだけの惨状にもかかわらず、プーチン本人はまったく動じていないことだ。彼は側近に「戦争は終結に向かっている」と語り、2026年末までにドンバス全域を占領できると固く信じている。

虚偽の報告を受け続けているプーチン

それはなぜか。答えは単純で、彼が嘘の報告しか受け取っていないからだという。

ISWの6月6日付分析によれば、参謀総長ワレリー・ゲラシモフは、自軍の惨めな成績を隠すため、戦果を膨らませた虚偽の報告を繰り返してきた。

今年4月、彼はヴェセリャンカやザポロジェツの制圧を主張したが、ISWはおろか、最も寛容な親露派の軍事ブロガーですら、その証拠を見つけられなかった。

前例もある。2025年8月、ゲラシモフはクプヤンスクの「約半分を制圧した」と報告し、それを真に受けたプーチンが10月に「3分の2を制圧した」と公言した。「5,000人のウクライナ兵を包囲した」とまで言った。すべて虚構だった。

ガーディアン紙(5月24日)はロシアのエリート層の動揺をこう伝えている。

「まったく無意味で自滅的な決定が繰り返されているという認識が広まりつつある。かつてプーチンを擁護していた人々も、もはやそうはしていない。未来への希望はすっかり失われてしまった」(ロシア経済界の関係者)

要塞を維持するために、プーチンは身内を叩き始めた

「もちろん、政府高官や軍関係者は大統領に都合の良い話ばかりを聞かせるものだ」「彼らは大統領に嘘をついている。それがプーチンが築き上げた体制の仕組みなのだ」(クレムリン内部の情報提供者)

「(上層部の多くは)現在、認識段階にある」「彼らは戦場と経済の両面で高まる問題を認識してはいるものの、それに対抗する計画は持っていない」「彼らは、これが下降傾向にあることは理解している。だが、彼らが『では、どう対処すべきか?』と問うたという話は聞いたことがない」(欧州・諜報当局の高官)

独裁とは、最高権力者が現実から最も遠い場所に座る構造のことだ。プーチンはいま、自分で築いた情報の要塞の中で、敗北を勝利と読み違えている。その要塞を維持するために、プーチンは身内を叩き始めた。

ウクライナのウクラインスカ・プラウダ紙が5月24日に報じたところによれば、2024年5月、長年の国防相セルゲイ・ショイグが事実上更迭され、経済テクノクラートのアンドレイ・ベロウソフが後任に座って以降、軍高官の逮捕が止まらない。

ティムール・イワノフ元副大臣、人事局長ユーリ・クズネツォフ中将、通信局長ワジム・シャマリン中将、第58軍元司令官イワン・ポポフ少将。少なくとも10名が職を追われ、うち8名が拘束された。

2026年3月には、ショイグの腹心ルスラン・ツァリコフ元第一副大臣が12件の横領罪で逮捕され、子供や母親名義のものまで含めて55億ルーブル相当の資産が差し押さえられた。これは過去四半世紀のプーチン政権で最大規模の粛清である。

彼らの罪状は「ウクライナでの作戦失敗」ではなく「汚職」

注目すべきは、彼らの罪状がどれも「ウクライナでの作戦失敗」ではなく「汚職」だという点だ。負けた将軍を負けた罪で裁けば、戦争そのものの失敗を認めることになる。だから横領の名で叩く。

能力より忠誠を選ぶ恣意的な人事は、戦争遂行に不可欠な軍の官僚機構を内側から壊し、戦う将軍たちの怒りと不安を増幅させている。粛清は虚構を守るが、組織を殺していくだろう。

経済も同じ病に侵されている。モスクワ・タイムズ紙が6月5日に報じたところによれば、2024年に4.9%の成長を誇った「過熱」は終わった。

フォーラム直前、アレクサンドル・ノヴァク副首相は2026年のGDP成長率予測を1.3%から0.4%へ、約1ポイントも下方修正した。国営銀行VTBですら、その0.5%前後すら危ういと見ている。

エリートの空気は変わった

フォーラムの招待者限定の朝食会では、いつもは沈黙する財界の大物が本音をこう漏らした。

投資会社「イオン」創業者ロマン・トロツェンコは「古い経済モデルは機能しなくなり、エンジンは停止した」と断じ、出生率が過去200年で最低に落ちたことと動員による労働力流出を挙げた。

歴史的に世界で最も儲かる鉄鋼会社の一つだったセヴェルスタリの会長アレクセイ・モルダショフは、投資を24%削り、すでに「マイナスのキャッシュフロー」に陥っていると明かした。軍需に利益を吸い尽くされ、民間の屋台骨が軋んでいる。

エリートの空気は変わった。ウクラインスカ・プラウダ紙の5月24日付報道によれば、政権中枢に近い人物は、2026年に入り、何らかのカタストロフィーが迫っているという感覚が強まった、と語る。

彼らは問題が悪化していることを内心で認めながら、代替案を持たず、ただ下降トレンドを見つめている。「夕食の席では誰もがインターネット規制の話ばかりだ。我々は北朝鮮に近づきつつある」という呟きが、その閉塞を象徴している。

戦場で勝てず、身内を叩き、経済を痩せさせ、それでもなお誇大妄想だけが膨らんでいく。サンクトペテルブルクの黒煙は、その姿そのものだった。プーチンが「戦争は終わりに近づいている」と語るとき、自分の崩壊が近づいていることに、プーチンがただ一人気づいていないだけである。

文/小倉健一 写真/shutterstock