プロテインに匹敵?まさかの抹茶「筋トレ効果を高める」神ドリンクだった…その驚きのデータと「医学的根拠」
京都府立大学准教授の青井渉氏は、筋肉に食べ物がどう関わっているかを研究している。その中でも面白いのが、抹茶だ。
「煎茶に含まれるカテキンに脂肪燃焼効果があることは、様々な実験からよく知られていました。ですが、いずれの実験もジョギングやサイクリングなどの有酸素運動を意識したもの。それに対して私たちの研究グループは、筋トレとの関わりを調べてみることにしました。
同じ茶でも、抹茶は1杯あたりのカテキンの含有量が煎茶の2倍ほどあります。さらに、煎茶にはない食物繊維が豊富に含まれ、ルテインやビタミンK、テアニンなどの栄養成分もより多く摂取できる。そこで、抹茶は筋トレの効果を高めるのではないかと推測したんです」
3ヵ月飲み続けたら「筋力が13%増加した」
青井氏が実際に行った実験では、日頃運動習慣のない健康な男性を被験者とした。週2回30分程度、マシンを使った筋トレをしてもらいつつ、一日2杯ほど抹茶を飲むことを3ヵ月続けてもらった。
すると――。
抹茶を飲んで筋トレを行った被験者は、疑似の対照飲料を飲んだ被験者に比べて、筋力、筋肉量ともに増えていたのである。
「抹茶を飲んでいない被験者は、平均約100gしか筋肉量が増えなかったのに対して、抹茶を飲んだ被験者は約600gも増えました。それに伴って、筋力(最大脚力)の増加量も13%ほど大きかったのです」(青井氏)
飲料の抹茶が筋肉を増やした――なかなか驚くべき結果であるが、ではなぜ、抹茶にはそれほどの効果があるのだろうか。
その理由は2つ考えられると、青井氏は語る。
「抹茶に含まれ、うま味成分でもあるテアニンやルテインには、心と身体のストレスを軽減する効果があります。運動によるストレスや疲労が抑えられることによって、筋肉が効率よく強化されていると考えられます」
運動すると筋肉は疲労し、その後に「超回復」する。超回復とは、筋肉が運動前の状態よりも増大し、筋力が高まる現象のことだ。疲労と超回復を繰り返しながら、筋肉は肥大していく。
筋肉の疲労が軽減された場合、そのぶんだけ超回復のサイクルが速まる。よって、筋トレの効果がより高まるというわけだ。
腸内環境を整えて筋力を増やす「筋腸相関」
もうひとつの理由は、「筋腸相関」にあると青井氏は推測している。
「脳がストレスを感じると腸に影響し、下痢や便秘などの不調をきたします。逆に腸内環境が悪くなると、脳に作用して不安感が増したりする。そんな連関を表す『脳腸相関』という言葉は以前から知られていました。
私たちが最近研究しているのは、それと同じように、筋肉と腸が互いに関わり合って健康を維持しているという筋腸相関です。
食習慣の改善などにより腸内環境が良い状態になれば、腸内細菌からビタミン類や短鎖脂肪酸、アミノ酸などが分泌されます。これらの物質が筋肉に作用し、たんぱく質合成やエネルギー産生の効率が高まるわけです。
世界の研究でも、腸内環境を整えることが筋肉の萎縮を抑えたり、筋力を増やすという報告が相次いでいます。私たちは、筋肉と腸の働きを良くすることで、動脈硬化を予防したり、脳の働きも良くするのではないかと、さらに研究を進めています」(青井氏)
殺菌作用の高いカテキンが悪玉菌を減らすのと同時に、善玉菌のエサとなる食物繊維が腸内環境を整える働きをして、筋肉にも良い影響を及ぼしているというのだ。
食物繊維以外にもこんなに栄養成分が
煎茶との違いについて、茶葉を粉末にして摂取することで、食物繊維を取れるという利点はもちろんある。だが、それだけではない。
「栽培する工程にも秘密があると考えています。抹茶の栽培では、新芽が伸びる前に、ヨシズや黒い布などで茶葉を意図的に覆って育てます。日光が当たるのを抑えることで茶葉に含まれる成分が変化し、テアニンやルテイン、ビタミンが保たれやすくなるんです」(青井氏)
日本史をひもとくと、鎌倉時代初期、中国から茶の種と喫茶法を持ち帰った禅僧・栄西がその効能や栽培法を広める。その弟子・明恵上人が宇治で栽培を始めた後、室町時代には宇治茶ブランドが確立。さらに、緑色を濃くしうま味を増やす「覆下栽培」が始められ、安土桃山時代になると、千利休や豊臣秀吉らが宇治抹茶の味わいを絶賛するのである。
日本独自に追究された栽培技術と製造工程は、筋肉に貢献し、人々を健康にする意外な効果ももたらしたのだ。
先人たちの努力に思いを馳せながら、一日2〜3杯ほど抹茶をたしなんでみてはいかがだろうか。
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「週刊現代」2026年6月8日号より
