激しい運動や食事制限をせずに痩せることはできないのか。生活習慣病の専門医・青木厚さんは「基礎代謝を高めるカギは、毎日の風呂にある。湯船で温まった後に20秒ほど冷水を浴びるだけでも、交感神経が刺激され、脂肪を燃焼しやすい体に近づいていく」という――。(第5回)

※本稿は、青木厚『「空腹」は最高の健康習慣』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

写真=iStock.com/Warumpha Pojchananaphasiri
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Warumpha Pojchananaphasiri

■毎日のお風呂で基礎代謝を上げる方法

私には、16時間断食以外にも、ずっと継続している健康法があります。それは「COOLアタック」というもので、入浴時に、20秒×3回、シャワーの冷水を浴びるという健康法です。シャワーはごく普通のもので、水も水道水です。冷水をかける範囲は、首から肩周辺だけでかまいません。かなりおすすめなので、是非、お伝えしたく思います。

この健康法に取り組む前の私はよく風邪を引いていたのですが、この入浴法に変えて半年ほど経つと、風邪を引くことはなくなりました。また、基礎代謝量が増えたことで体脂肪率も低下し、4.1%になりました。もちろん16時間断食の影響もあったと思いますが、16時間断食だけでは、ここまで体脂肪率を減らすことはできなかったでしょう。

この健康法は、オランダ人ヴィム・ホフ氏が提唱している「コールドトレーニング」をヒントにして考案したものです。「コールドトレーニング」は冷水シャワーを浴びて、免疫細胞や褐色脂肪細胞(脂肪酸やブドウ糖を燃焼させて体を温める脂肪)を活性化させるというものです。さらに、日本には以前から裸足が勧められていたり、冬に乾布摩擦を行なう習慣があります。

■20度の冷水で病気に負けない体をつくる

神奈川県相模原市、愛知県岡崎市などでは、毎年1月に寒中水泳のイベントが実施されています。フィンランドにも、高温のサウナに入った後、凍った湖の氷を割って入るというイベントがあります。私は右記のような慣例から、“寒冷”が健康のカギになるのではと考え、さまざまな論文を読み、寒冷刺激に確かな効果があることを知りました。

そして「COOLアタック」というメソッドにまとめ、『青木式 すごい「感冷」健康法』という本まで書きました。本のタイトルを見て、「寒冷」ではないのか、と思った方もいるかもしれません。実は大切なのは、ものすごく冷たい水を浴びることではなく、冷たいことを「感じる」ことなのです。

私たちの体は、「冷たい」と感じると交感神経が働いて、細胞が活性化するのです。COOLアタックは、私たちの体にある約37兆個の細胞の中でも、特にがんや感染症などに抵抗する免疫細胞と、基礎代謝に関わる褐色脂肪細胞の活性化を促すものです。そのためには、冷たいと「感じる」ことができれば十分なので、入浴時に浴びる冷水の温度は、20度程度でかまいません。

COOLアタックにより免疫細胞が活性化すると、免疫機能が強くなり、

・がんにかかりにくくなる
・細菌やウイルス性の病気にかかりにくくなる
・感染症を患っても軽症ですむ

などの効果が期待できます。

■冷やすと太りにくい体質になる理由

さらに、COOLアタックは基礎代謝量も高めることができます。呼吸や心拍、体温調節など、生きているだけで必要になるエネルギーを消費することを基礎代謝と呼び、そのときのエネルギーは日本人の成人で1日1200〜1500キロカロリーといわれています。

この基礎代謝量が低下すると、体温が下がり、血流が悪くなります。すると臓器などの調子も悪くなってしまいます。さらに、免疫機能を持つ細胞が全身に届きにくくなります。しかし、COOLアタックを行なえば、肩甲骨付近の褐色脂肪細胞を活性化させることで、基礎代謝量を高めることができるのです。

そして、基礎代謝量が高まると、太りにくい体質となり、糖尿病を改善させることもできると報告されています。また、基礎代謝量が高まることにより、深部体温が高くなります。そうすると血管が拡張し、血流がよくなって、栄養や酸素や熱を体の末端まで運べるようになり、体の各器官がしっかり働くようになるのです。

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COOLアタックが免疫細胞と褐色脂肪細胞に働きかけることで体が活性化するしくみについて、もう少し詳しく説明しましょう。まず、免疫細胞の話から。私たちの体を守ってくれる免疫は、自然免疫と獲得免疫の2種類に分かれています。自然免疫は、私たちの体が生まれながらにして備えている機能です。

■がんやウイルスも撃退してくれる

侵入してきた病原体や異常になった自己の細胞(がん細胞)を、いち早く感知して排除してくれます。マクロファージや好中球などの貪食(どんしょく)細胞が病原菌を取り込んで消化し、NK細胞はがん細胞やウイルス感染細胞を選んで認識し、攻撃するのです。そしてCOOLアタックは、このNK細胞を活性化させるのです。

「NK」というのは「ナチュラル・キラー(natural killer)」のことで、「生まれつきの殺し屋」のこと。全身をパトロールしながら、がん細胞やウイルス感染細胞などを見つけ次第攻撃するリンパ球です。

一方、もう一つの獲得免疫は、一度侵入した病原体の情報を記憶し、再び侵入されたときに素早く対処するという機能です。一度かかった病気にかかりにくいのは、獲得免疫が抗体を作ることで、「抗原」となるウイルスを撃退してくれるからです。

COOLアタックは、獲得免疫に関わる免疫細胞のうち、キラーT細胞を活性化させます。キラーT細胞は、ヘルパーT細胞という細胞から指令を受けて、ウイルス感染細胞やがん細胞を破壊することができる細胞で、NK細胞と同じく殺し屋のような細胞です。

■交感神経を適度に働かせることが重要

なぜ、COOLアタックはNK細胞やキラーT細胞を活性化させるのでしょうか。COOLアタックを行なうと、自律神経の「交感神経」と「副交感神経」のうち、交感神経のほうが優位になります。交感神経は、仕事やスポーツなどの身体活動を行なっているときに優位になる神経で、心拍数を速くしたり、血管を収縮したり、腸の運動を抑制したりします。

一方の「副交感神経」はリラックスしているときに優位になる神経で、心拍数や血圧を低下させたり、消化を促進させたりします。交感神経が優位になるということは、わかりやすく言ってしまうと戦闘態勢に入るということです。

すると、免疫細胞も活性化されます。ある研究で、毎日の短時間の低温ストレスにより、NK細胞やキラーT細胞の増加や活性が促されることが示されています。もちろん、ずっと交感神経優位でいるのは望ましいことではありません。

その点、COOLアタックは1回20秒という短時間なので、自律神経のバランスが悪くなるほどではありません。交感神経を適度に働かせることによって、NK細胞とキラーT細胞を活性化させているのです。

■赤ワインやカレーでも脂肪が燃焼される

では、褐色脂肪細胞のほうは、どのようにして活性化するのでしょうか。褐色脂肪細胞は、主に首近くの鎖骨付近や胸まわりに分布し、脂肪を燃やして熱を産生する働きを担っています。褐色脂肪細胞にはミトコンドリアが多く含まれています。ミトコンドリアは、細胞活動に必要なエネルギー供給を行なう物質、ATPを作り出すオルガネラ(細胞小器官)でしたね。

そしてなんと、褐色脂肪細胞のミトコンドリアの仕事はこれだけでなく、UCP1というタンパク質の働きにより、脂肪などを燃やす仕事も行なっているのです。褐色脂肪細胞はこのように熱を産生することで、基礎代謝量を増加させ、全身のエネルギー消費量も増やしているのです。そして褐色脂肪細胞も、交感神経が優位になることで活性化されると考えられているのです。

東北大学の酒井寿郎教授らの論文の中でも、「急激に環境の温度が低下すると交感神経系が活性化し、褐色脂肪細胞で脂肪が燃焼され、熱が産生されます」と記されています。

なお、褐色脂肪細胞の熱産生は、ある食べ物を食べることで活性化させることもできます。その食べ物とは、カプサイシンという辛み成分を含んでいるトウガラシや、キムチ、カレー。たしかに、カプサイシンが含まれた辛い物を食べると、体がカッカカッカしてきますよね。

さらに、ブドウの果皮や赤ワイン、ピーナッツの渋皮などに含まれる、ポリフェノールの一種のレスベラトロールにも、褐色脂肪細胞を活性化させる働きがあります。

写真=iStock.com/fcafotodigital/ken6345
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■初心者は「体を温める」ことから始める

さて、COOLアタック、やってみたいなと思われましたでしょうか?興味を持たれたら、是非、次のようなやり方で、実践してみてください。まず、湯船につかるなどして体を温めます。そして1回目のシャワーを20秒当てます。

その後は、再び体を温めたり、体を洗ったりして、気が向いたタイミングで2回目の20秒シャワー。その後も同じで、お好みのタイミングで20秒シャワー。これでお風呂から上がってもいいですし、もう一度湯船につかってもかまいません。要は、最初に体を温めることさえ行なえば、あとはお好きなように3回冷水を浴びればいいのです。

実は私はもう、最初の「体を温めるプロセス」を省いてしまっているのですが、初心者の方にはおすすめしません。さらに、必ず20秒×3回を守らなければならないわけでもありません。30秒×2回でも、1分間×1回でもOKです。20度という温度は、さまざまな論文から、私が最適であると判断した温度です。

水道水の温度はだいたい20度に近く、蛇口から出てきた水をそのまま浴びればよいでしょう。秋から春の時期はもう少し温度を上げてもいいくらいです。ただし、もし、20度でもストレスになるのなら、水温を上げてください。

■高血圧や糖尿病、高齢の方は要注意

COOLアタックは「がまんするのはダメ!」なのです。ご自分が「冷たい」と感じられれば、寒冷刺激となるのです。

青木厚『「空腹」は最高の健康習慣』(PHP研究所)

1分というのにも理由があります。「1分弱の寒中水泳が、ノルエピネフリン濃度を上昇させる」という論文があったのです(バーバラ・キャノン博士などの論文《Brown adipose tissue: function and physiological significance》)。ノルエピネフリンはノルアドレナリンの別名で、体がストレスを受けると分泌されます。

1分間の寒中水泳で体がストレスを受けるのなら、褐色脂肪細胞も1分間のストレスで活性化するだろうと考えました。是非、多くの方に毎日続けていただきたいのですが、高血圧や糖尿病などの動脈硬化性疾患を持っている人や、高齢の方、体調を崩している方は要注意です。

急激な温度変化によって血圧が上下し、心臓や血管の疾患を引き起こすヒートショックが起こる可能性があります。急激な温度変化による体の変調に気をつけて、無理することなく実践してみてください。

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青木 厚(あおき・あつし)
医学博士
あおき内科さいたま糖尿病クリニック院長。自治医科大学附属さいたま医療センター内分泌代謝科などを経て、2015年、青木内科・リハビリテーション科(2019年に現名称に)を開設。糖尿病、高血圧、脂質異常症など生活習慣病が専門。著書『「空腹」こそ最強のクスリ』(アスコム)がある。
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(医学博士 青木 厚)