2021年7月、オールスターに出場する坂本勇人選手

 前評判の高くなかった広島と横浜DeNAの健闘、前年王者・阪神の足踏み。その隙間を縫って、2024年7月11日現在、首位に立っているのが巨人だ。だが巨人から4位、広島までの差はわずか1.5。4チームは、その日の勝敗で順位が変わることになる。

 異例ともいえる混戦状態を抜け出すために、巨人は大きな賭けに出た。極度の打撃不振に陥って、二軍落ちしていた坂本勇人を、12日の首位攻防戦、対横浜DeNA戦から一軍に昇格させるというのである。しかし、坂本は二軍で3試合に出場し、6打数無安打2四球と、結果が出ていない。にもかかわらず、上げた理由とは何なのだろうか。

「12日から2位の横浜DeNAと3連戦した次は、3位・阪神との3連戦。この本拠地6連戦で勝ち越すためには、修羅場をくぐり抜けてきた坂本の経験値が必要だと阿部慎之助監督は考えたのでしょう。たとえ試合に出ずとも、ベンチにいるだけでもいい。そのくらいこの6連戦は、今後、戦っていくうえでも重要と考えているようです」(巨人担当記者)

 ただし「二軍で結果を出していない坂本が昇格することで、新たな問題点が発覚する恐れがある」と続ける。

「サードを守っていた坂本が二軍に降格すると、ファーストの岡本和真がサードに戻り、キャッチャーの大城卓三をファーストに固定しました。このコンバートがうまくいき、巨人は首位へ浮上したのです。

 ところが坂本復帰となると、固定していた守備隊形を崩さなければいけなくなります。坂本がサードなら、岡本をファーストに戻せばとなるが、好調の大城を外したくない。すると、岡本をレフトに持っていくしかなくなるんです。岡本はサードで2回、ゴールデングラブを獲っているにもかかわらずです。

 しかも打撃でも、貢献度はチーム一。攻守両面で貢献度の高い、チームの4番のポジションを、ここまでいじるようなことは他球団ではめったにありません。巨人OBから『巨人の4番はそんなに軽いものなのか』といった声が出たこともありました。

 岡本もポジションのたらいまわしに『なんで俺だけ……やってられませんよ』と、関係者に愚痴ったことが過去にあったんです。彼はメジャー志向が強いだけに、今回のことでその気持ちがより強まり、今オフにもポスティングによるメジャー移籍を直訴するかもしれません」

 岡本は11日、「言われたところでしっかりやるだけ」と、なにげない風に語っていたが、今季、ただの一度もレフトを守ったことがないことをつけ加えておく。不慣れなポジションで、首位キープはかなうだろうか。