ユーラシア大陸を通る東西の交通路「シルクロード」。

北方の草原地帯のルートである草原の道、中央の乾燥地帯のルートであるオアシスの道、インド南端を通る海の道の3つのルートが存在していますが、中でも最も古い歴史を持つ中央の乾燥地帯のルートであるオアシスの道は、中国からローマへ通じる道として、絹や金が重要な交易品となっていたことから、「シルクロード」と呼ばれていました。

のちに草原の道や海の道が開けるまでは最も合理的な東西の交易路であったため、今でもシルクロードの街道筋であった都市を訪れると、その悠久の歴史が育んだ様々な文化が入り混じった雰囲気を感じることができます。

中でも最も歴史と文化を強く感じることができるのが、シルクロードの食文化。

今回は、そんなシルクロード料理の中から、日本人の口にも合う料理の数々をご紹介しましょう。

1. シルクロードの終着地、西安の点心

シルクロードを行き交う多くの商人がひとまずの終着点としていたのが、かつての皇都、西安。

この一帯は小麦をメインに育てているため、お米よりも小麦を使った料理が非常に有名です。

中でも有名なのが、華やかな点心料理。

世界遺産の兵馬俑の威容が示すように、贅を尽くして栄えた西安の点心は、エビ蒸し餃子、小籠包、焼売にちまき、大根餅や春巻き、などなど、数え切れない種類が存在しています。

彩りも鮮やかな数々の点心を、テーブルいっぱいに並べるのが西安流で、手の込んだ点心を少量ずつたくさんの種類を味わえるのは、いかにも皇帝流の贅沢と言った趣きです。

2. 至高の庶民料理といえば「羊肉泡馍 (ヤンロウパオモ)」

至高の庶民料理と言えば、羊の肉をたっぷりと使った「羊肉泡馍 (ヤンロウパオモ)」です。

羊肉をしっかり煮込んだ透明なスープに、ネギやパクチーなどの薬味を加えた「羊肉泡馍 (ヤンロウパオモ)」は、濃厚な味わいのスープとすっきりとした香菜の香りとのハーモニーが癖になる味わい。

このスープには、歯が折れそうな程硬い平焼きのパンが付いていますが、これがポイントです。

このパンを自らの手で細かくちぎり、スープに浸して食べるのがシルクロードスタイル。カチカチのパンに旨味の濃厚なスープが染み渡り、ぶつ切りの羊肉と馴染んで至高の味となるのです。

パンは細かくちぎるほど味が染みて美味しいと言われていますが、ざっくりとちぎって歯ごたえを楽しむこともできます。

美味しい羊肉泡馍屋さんは、忙しい朝、仕事合間の昼、楽しい夜の時間と、いつでも人で賑わっているので、街中を歩いて自分の感覚でお店を選んでみるのも楽しいかもしれません。

3. ラーメンにあらず 回族の汁なし麺

回族とは、中国におけるイスラム教を信仰する民族集団の一つです。

中国の文化とイスラム文化とが混じり合った料理こそ、この回族の食文化で、中でもオススメなのが回族の汁なし麺。

柔らかいのにコシがある、さっぱりした煮込み麺に、様々なおかずを並べて一緒に味わうのが汁なし麺の王道です。

煮込み麺はそれだけで味わい深いですが、様々なスタイルで調理されたおかずと一緒に味わえば、シルクロードの様々な食文化と悠久の歴史を感じることができる逸品であることに気がつくでしょう。

4. 芯まで美味しい、麦炒め

麦料理と聞くと全く馴染みがなく、パンや小麦の麺を想像してしまうかもしれませんが、シルクロードの麦料理とは麦そのものを使った料理のこと。

特に穂がなる前の青い麦の炒め物は、シャキシャキした歯ごたえにさっぱりした癖のない味わいが特徴的で、中国の醤油との相性も抜群です。

日本ではなかなか味わえない、麦そのものを炒めた副菜は、シルクロードを旅するなら是非味わっておきたい逸品です。

5. デザートに葡萄はいかが?砂漠の旨味が凝縮された一品

シルクロードのお酒は様々存在しますが、オススメなのがワイン。

タクラマカン砂漠を目前に控えたシルクロードのエリアでは、実は様々なブドウが栽培されています。そしてそのブドウの特徴は、乾燥に耐えた濃厚な味わいで、しっかり果実味のある赤ワインが自慢です。

そして、乾燥に耐えて生えたブドウを砂漠で乾燥させた、干しブドウも非常に美味。

日本にも多くの美食をもたらし、悠久の時間と歴史を積み重ねてきたシルクロードとその中継地。

古の皇帝や商人たちも味わい、舌鼓を打ったであろう異国情緒たっぷりのシルクロード料理は、今なお我々にその長い歴史と文化を伝えてくれています。

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