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徳勝龍、幕内最高優勝おめでとう!

素晴らしい相撲でした。大相撲一月場所千秋楽、注目は平幕同士の優勝争いに集まっていました。1敗の徳勝龍、2敗の正代。すでにこのふたりの平幕のどちらかが優勝することは決していました。はたしてどちらが勝つのか。そして、どんな形の決着となるのか。

自らが勝てばそのまま優勝となる徳勝龍には、いくつもの葛藤があったことでしょう。まず、十四日目の正代との直接対決を制したことで「相手が負けて勝つ」という道がありました。できればそうやって決まってくれたらラクだなという気持ちと、そんなことを考えたら自分の相撲が鈍るという気持ち。そのどちらも「あり得る」。

実際の徳勝龍は、正代の相撲を気にしないようにしようと思い、けれど気になって「チラッと見てしまい」、そして正代が見せた素晴らしい相撲によってもう一度気合いが入ったと言います。見ないようにしようと思ったけれど、やっぱり見てしまって、けれどそれを自分のチカラに変えた。葛藤を乗り越えたさまが、まざまざしく本人の言葉で語られました。

↓正代、素晴らしい相撲で優勝争いを「千秋楽結びの一番」につなげた!


大相撲を盛り上げた!

ふがいない三役に代わって責任を果たした!



そして、次には「変化」という道があった。NHKの解説席に座った北の富士さんは、「変化があるかもしれないね」と指摘しました。徳勝龍は今場所の回転突き落としにも見られるように、太く大きな身体の割りには身のこなしが鋭く、器用さも持ち合わせている力士。思いがけない変化はあるタイプです。

まして相手は突き押し一辺倒の貴景勝。簡単に落ちる相手ではないものの、変化を食いやすいタイプであることは間違いありません。変化で相手の立ち合いの圧を逃がすだけでもメリットはあります。そして、決まればラクに勝てる。バタンと落ちてくれたらいいのにな、という気持ちはみなの「総意」と言ってもいいもの。北の富士さんだけの考えではありません。

いざ、結び。「これより三役」をつとめた際には「これ、どうすりゃいいんすか?」の目で豪栄道の動きをガン見するなど、そこにいることだけでも戸惑いが多かったであろうなか、徳勝龍は堂々とその場に立ちます。通例のタイミングよりも少し早く力水をクチに含み、その緊張は否めません。ただ、緊張は否めませんが、迷いはありませんでした。

仕切り、徳勝龍は素直に腰を下ろし、素直なタイミングで手をつきます。「勝ちたい」が前面に出た力士がよくやるタイミングずらしの素振りはまったくありません。むしろ相手にしっかり合わせにいってさえいました。「位置について、ヨーイ、ドン」を素直にやります。やりづらそうだったのは貴景勝のほうでしょうか。いろいろ考えるところはあったかもしれません。突いて押していけば相手には「5日連続」の突き落としがあるぞ、と。その前に「変化」もあるかもしれないぞ、と。

それが勝負の分かれ目だったかなと思います。もしかしたら迷いもあったかもしれない貴景勝に対して、徳勝龍はわずかに早く立ち、下から身体をぶつけます。その圧は貴景勝の強みである突き押しを止めます。わずかに押し込み、逆に相手が出てきたところで差し込んだ左の腕。完全に貴景勝の上体を起こし、そして右の上手をとります。完全に形を作り寄っていく徳勝龍。貴景勝も懸命に粘りますが、この形ではチカラの出ないタイプ。一気の寄りで勝負あった。徳勝龍の、文句なしの、幕内最高優勝です!

↓素晴らしい相撲!見事な、納得の、決着でした!

おめでとう徳勝龍!

素晴らしい場所をありがとう!!



西の17枚目という真の幕尻からの優勝。ツッコミどころはあります。三役格との対戦は千秋楽までなく、正代に比べても十五日間の対戦は手薄な顔ぶれでした。もう少し早くから上位との対戦を組めなかったのは、編成の落ち度だったとも思います。三役格どころか終盤まで並走していた北勝富士との対戦すらないのは、後手にまわったなと思います。

だからこそ貴景勝との取組には大きな意味がありました。これは「勝てば優勝」の一番であると同時に、「この優勝を認めてよいか」を問う一番でした。この成績、この結果を、「幕内最高」と認めてよいかどうかを問う試金石。勝てばいいのではなく、幕内最高を示さなければいけない一番。その問いに、逃げず、引かず、満点の回答を示してくれた徳勝龍。お見事でした。まっこと「幕内最高」でした。

徳勝龍もまた、ずっと戦ってきた力士なんだなとしみじみ思います。

誰ひとりとして予想しなかったであろう今場所の優勝。優勝争いどころか、勝ち越せるかどうかが現実的目標の場所だったはず。そこに「予想」は存在しなかった。けれど「準備」はあったのです。「あとひとつ、勝ちたい」という大相撲で幾度となく繰り返された局面に立ち向かう、葛藤と決着の日々。逃げようかな、変わろうかな、間違って勝たないかな、相手の姑息な手段にやられた、失敗と反省を繰り返しながら、勝負の瞬間に自分がどう立ち向かうのかを見つめてきた。十両での優勝争いや、幕内での勝ち越しがかかる一番において、スケールこそ最高ではないものの「この1勝」に向き合ってきた。

33歳、キャリアの晩年に差しかかったベテランは、幾多の葛藤を抱きしめながら「自分の相撲」に集中していました。葛藤は消せないのです。相手が勝手に負けてくれないかなと思う心や、ラクに勝てないかなと思う心は消しようもないものです。「優勝のことは意識しませんでした」なんて綺麗事、あるはずもありません。バリバリ考えるでしょうし、バリバリ欲が出るのです。手に入る金と、家族の笑顔を思って、欲にまみれるのです。

けれど、そうした葛藤を抱きしめながら、最後は「自分の相撲」に集中するのです。「自分の相撲」とは、自分の持って生まれたものと得意なことを突き詰めた、一番自分のチカラが発揮できる相撲のこと。キャリアを捧げて作り上げた自分のチカラを、全身全霊でぶつける。勝ちたいからこそ、自分の最高を発揮する。その心境に至れることこそが「準備」だと思います。一朝一夕に成るものではなく、長い時間の失敗と成功を繰り返すなかで見つけ出した「バランス」なのです。「勝ちたい」と「チカラを発揮したい」の間にある頂点なのです。

最後のインタビュー、徳勝龍の言葉はまさにその「バランス」を備えていました。「自分なんかが優勝していいんでしょうか」と謙遜しつつ「喜んでもらえてよかったです」と胸を張る。「(優勝を)意識することなく…」と言いつつ「嘘です、めっちゃ意識してました」「バリバリインタビューの練習してました」と笑いを誘う。「立ち合いだけしっかり当たればいいんだと自分に言い聞かせてずっとやってきた」という言葉は、昨日今日の話ではなく、相撲人生のすべてを通じてのことでしょう。それこそが自分をここまで連れてきてくれた「自分の相撲」なのだという。

結果が出なければ光が当たらないのはスポーツ選手の常。ただ、光が当たろうが当たるまいが、そこには積み上げた日々がある。そして、光が当たったとき、「素晴らしいなぁ」と思わせる人生がある。正直、徳勝龍でこんなに盛り上がることがあるなんて想像だにしませんでしたが、徳勝龍に「準備」はありました。「賜杯もらったあと、どうすりゃいいんすか!?」は全然わかっていなかったようですが、相撲と言葉と人生で人々を虜にするに足る「準備」は確かにありました。いいものを見ました、ありがとう徳勝龍!幕内最高優勝おめでとう!!

↓恩師に捧げる爆笑インタビューで、人気沸騰の予感!


「バリバリ」ポテトチップのCMとかきそうですね!

「食べたでしょ」「食べてません」「嘘です、食べました」のお茶漬けのCMとかも!



引退後のことも考え、三役までは上がることを目指して頑張ってください!