表彰式で涙をぬぐう青森山田のMF武田英寿(手前)【写真:Noriko NAGANO】

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静岡学園に2-3と敗れ史上9校目の選手権連覇ならず

 第98回全国高校サッカー選手権は13日に決勝戦が行われ、青森山田(青森)は2-3で静岡学園(静岡)に敗れた。

 史上9校目の連覇を目指すチームを支えた3年生たちは、弱いと言われたなかからの成長が自分たちの成果だと話した。

 青森山田は前回大会で優勝したが、そのチームは当時の3年生が主体。北海道コンサドーレ札幌に加入したMF檀崎竜孔や、いわきFCに進んだMFバスケス・バイロンといったタレント揃いのチームのなかで、出場していたこの世代の選手は主将になったMF武田英寿のみだった。黒田剛監督も「プレミアリーグも全敗するんじゃないかという評判からでした」と振り返る世代だった。

 そのなかで武田は絶対的な主軸としてJ1リーグの浦和レッズへの加入が内定し、ボランチとしてチームの中心に君臨したMF古宿理久もまた、新シーズンからJ1に昇格する横浜FCに内定した。こうしてチームの軸ができ上がったチームは、高円宮杯U-18プレミアリーグを制して、この選手権でも連覇を目指した。

 その決勝戦で古宿は、先制ゴールを正確なFKでアシストした。「速いボールを意識して、GKの前に落ちるようなボール」という狙いそのままの弾道で、試合を動かした。そして武田は背後のスペースに抜けると、相手GKとの駆け引きでファウルを誘ってPKを獲得し、自ら蹴り込んだ。最終的に逆転負けは喫したが、チームの中心選手としての責任と意地はピッチの上に残した。

 古宿は「自分たちの代は弱いと言われてきたなかで、ここまで成長できるとは思っていなかった。準優勝は積み上げてきたものの成果だと思う」と話す。そして「厳しい道のりで挫折もありましたけど、チーム力はあると思ってやってきました」と胸を張った。

涙を流した主将の武田「勝てないと言われたなかで…」

 また、静岡学園の表彰式では涙を流した武田も「このチームが始まってから勝てないと言われたなかで、キャプテンになって仲間に支えられてきました。今までの思いや気持ちをぶつける舞台として、チーム一丸になって声をかけて助け合いながら戦えた」とチームワークのある世代になったと振り返った。

 2人は今季からJ1の舞台に羽ばたく。ポジション的には、そのピッチでマッチアップする瞬間も訪れるかもしれない。連覇と高校生活最後のチャンピオンという勲章こそ逃したが、その成長力をプロの世界でも発揮することが期待される。(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)