〈給食が消える夏休み〉「肉や魚は食べさせてあげられない」1日500円未満でつなぐ親子の食卓…困窮世帯の切実な声

写真拡大

学校給食がなくなる夏休みは、経済的に困難な家庭にとって、子どもの食事をどう確保するかが切実な問題となる。全国8736世帯への調査では、約9割が申し込み理由として「物価上昇により十分な食料を買うお金がない」と回答し、過去1年間に必要な食料品を買えなかった経験がある世帯も約6割に上った。給食のない期間、親子はどのように食卓をつないでいるのか。支援の現場と当事者の声を聞いた。

【画像】貧困家庭の夏休みの食卓

肉や魚を食べさせられず、保護者が食事を減らす

公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは2026年6月、経済的に困難な子育て世帯を対象に、子どもの食事や健康状態、物価高の影響、学校給食費の負担軽減などについて調査した。

対象は、夏休み中の食料品を届ける「子どもの食 応援ボックス」に申し込んだ8736世帯。住民税所得割が非課税相当の世帯などが対象で、回答世帯の大半をひとり親世帯と女性の保護者が占めている。同団体によると、民間団体が実施した同種調査として国内最大規模だという。

調査では、約6割が経済的な理由から十分な食料を買えなかったと回答した。1人1日当たりの平均食費も500円を下回り、前年より減少傾向にあった。

物価上昇が続く一方で、食費に使える金額はむしろ減っている。家庭では、何を削り、どのように子どもの食事を確保しているのか。2025年の調査と比べた変化について、同団体の担当者は次のように説明する。

「2026年調査では、米の摂取状況など一部に改善が見られた項目もありました。一方で、子どもが十分な量の食事をとれていない世帯の割合は依然として高く、6割以上が赤字、物価高が続いているにもかかわらず食費の平均額は前年より減少しています。

1人1日当たり500円を下回る水準であること、光熱費などの支払困難を経験している世帯も約3分の1という深刻な結果でした。セーブ・ザ・チルドレンは、子どもたちが十分な量・質の食事をとれていない状況が、固定化・長期化してしまっているのではないかと強く危惧しています。

特に食事に関しては、食料品を買えなかった世帯の8割以上が保護者の食事量や回数を減らしたと回答し、約2割は子どもの食事量や回数も減らしたと回答しており、また、食費を捻出するために医療費を抑えたり受診を控えたとの回答も2割ありました。子どもが安心して健やかに育つ環境が脅かされていると考えられます。

実際、自由記述には、

『育ち盛りの息子に肉や魚は食べさせてあげられていません』
『授業料無償化といっても他の費用がかかり、食事を減らすしかない』
『子どもに食べるのを我慢させる事は、本当につらすぎます』

といった切実な声が寄せられています。

調査結果や具体的な声から、子どもが健やかに成長するうえで必要となる十分な量・質の食事をとる権利が、保障されているとは言い難い状況が長期化していることが非常に問題だと考えています」(公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン、以下同)

子どもの食事を優先するため、保護者自身が食べる量や回数を減らす。それでも足りず、子どもにも我慢を求めざるを得ない家庭がある。食費を確保するために医療機関の受診まで控える状況は、食生活だけでなく、親子の健康や生活基盤そのものが揺らいでいることを示している。

給食無償化だけでは「給食のない時間」を支えられない

調査では、学校給食費の抜本的な負担軽減、いわゆる「給食無償化」を肯定的に受け止める回答が半数を超えた。一方、約3分の1は、無償化に伴って給食の量や質が低下することへの懸念を示した。

学校給食費の保護者負担が軽減・解消されれば、子育て世帯の負担は軽くなる。しかし、給食が提供されるのは、基本的には学校のある日の昼食に限られる。夏休みなどの長期休暇、高校生、不登校などで学校に通っていない子どもの食事、家庭での朝食や夕食は、無償化だけでは支えきれない。

給食無償化を実効性のある支援にするために必要な制度について、担当者はこう答えた。

「今回の調査では、給食費の負担軽減を肯定的に受け止める世帯が半数を超えた一方、約3分の1の世帯が制度の実施に伴って給食の量や質の低下を懸念しています。小学生以外への拡大を求める声もあります。

そこで、給食への支援は『家計負担の軽減』と『子どもの食の保障』の両面で意義が大きい取り組みと認識しています。そのため、質・量を低下させることなく十分な財源を確保し、給食費の無償化の対象を拡大していくことも重要だと考えています」

給食費の無償化は、学校のある日に給食を利用できる子どもへの支援としては大きな意味を持つ。一方で、高校生や不登校の子ども、長期休暇中の食事など、学校給食の枠組みだけでは届かない部分も残されるという。

「現在給食が実施・提供されていない子どもたち、たとえば高校での給食の実施や不登校の子どもへの昼食支援や、給食のない時期の食支援を求める声も数多く寄せられました。

その観点から定期的な食料品送付やフードバンク、長期休暇中の昼食費補助や食料配布などを公的な取り組みとして強化していくことや、高校生世代や学校に通っていない子どもへの給食提供や昼食費の補助など、多面的で重層的な取り組みが必要であると考えます。

そうした支援を行なう際は、子どもの居住地にかかわらず等しく支援やサービスを利用できるよう、地域差が生じない取り組みを国が推進することも重要だと考えます」

給食費の無償化に加え、長期休暇中の昼食費補助、食料配布、定期的な食品の送付、高校生や不登校の子どもへの昼食支援などを組み合わせる必要があるという。

自治体によって支援内容や利用条件に差が生じれば、同じように困窮していても、住む地域によって受けられる支援が変わってしまう。国が財源と制度の基本的な枠組みを示し、地域にかかわらず食事を保障する体制を整えられるかが問われている。

支援を求められない「見えない困窮世帯」

今回の調査対象は、「子どもの食 応援ボックス」に自ら申し込み、支援につながることができた世帯である。調査結果には、申し込み方法を知り、必要な情報を得て、手続きを完了できた家庭の声が反映されている。

その一方で、制度の情報不足や申請負担、困窮を周囲に知られることへの心理的抵抗などの理由から、公的支援や民間支援につながれていない家庭も存在するとみられる。

同団体は「子どもの食 応援ボックス」を、給食のない夏休みと冬休みに年2回実施している。7月30日の発表によると、2025年までに延べ4万7109世帯へ食料品を届けており、2026年の申し込みは過去最多の8736世帯となった。

支援の窓口に現れない家庭をどう把握するのか。担当者は、当事者、とりわけ子ども自身の声を継続的に聞く必要があると指摘する。

「今回の調査は、ご指摘の通り、あくまで『子どもの食 応援ボックス』に申し込んだ8,736世帯を対象としています。その背後には、『子どもの貧困』の専門家跡見学園女子大学の鳫咲子教授が指摘しているように、さらに支援を必要とする可能性のある子どもが多数います。

実際、自由記述には、病気や障害、不登校、地域に支援がないことなどを理由に孤立している状況もうかがえました。経済的に困難な状況にあったとしても、情報不足や心理的負担、制度の複雑さによって支援にアクセスできない世帯は少なくないと考えています。

そうした“見えない困窮世帯”の存在を把握するには、国や自治体が継続的に課題意識を持って実態把握を進めることが重要です。特に、子どもの貧困の解消に向けては、子ども自身が何に困っているか、どのような支援を必要としているのか、丁寧にその声に耳を傾けていく必要があります。

子ども時代は、今この時しかありません。子どもたちが育ち、学ぶ時間は待ったなしで、あっという間に過ぎ去っていきます。子どもたちが今を安心して暮らし、健やかに成長する権利を保障するために国や自治体には子どもの声を聞きながら迅速な対応を求めたいと思います」

夏休みが終わるまで、食事の支援を待つことはできない。給食のない一日一日にも、子どもの成長は続いている。

支援を申請した家庭だけでなく、声を上げられない家庭を学校、福祉、医療、地域の窓口がどう見つけ、負担の少ない形で支援につなげるのか。給食が止まる長期休暇は、子どもの食を家庭だけの責任に委ねてきた制度の空白を、改めて浮かび上がらせている。

取材・文/集英社オンライン編集部