血税で赤字の尻拭い…不祥事が頻発する日本郵政の「致命的な経営失策」
郵政民営化の流れが頓挫することが決定的となった。改正郵政民営化法案が与野党の圧倒的多数で成立。郵便局を維持するために年間650億円の国費が投入され、ゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の金融2社の民営化も事実上凍結されることになったからだ。
その背景には、国政選挙や自民党総裁選で高い集票力を見せつける「全特」(全国郵便局長会)の存在がある。
前編記事『郵政民営化の頓挫が決定的に!赤字を垂れ流す日本郵政に国費を年に650億円も投入するのは「すべて選挙のため」』より続く。
族議員にも死活問題
全特や郵政族議員が無理筋とも言える郵政民営化法の見直しを急いだのは、民営化以降、郵便物の取扱数が半減する中、郵便事業の赤字問題が深刻化したからだ。
日本郵政の郵便・物流事業は2025年度まで3期連続の営業赤字に陥り、このままでは3年後に赤字が1700億円以上にも膨らむと見込まれている。放置すれば、批判の矛先が最大の「カネ食い虫」である郵便局に向けられ、リストラを強いられかねないと焦燥感を高めていた。
全国2万4000郵便局体制が崩れれば、局長ポストも減って全特の組織力が弱体化。今のような政治的影響力を振るえなくなる。族議員にとっても、自らの当落を左右する集票力の低下は死活問題だ。郵便事業の赤字を穴埋めし、郵便局数を死守するためには、法改正で国費投入に道筋を付ける必要があった。
また、業務委託手数料の支払いを通じて郵便窓口の収益の約7割を支える金融2社の株式を日本郵政に継続保有させ、郵便局との関係を維持することも不可欠だった。
ソープランドで接待
だが、不祥事を連発している日本郵政への国費投入には世論の批判が根強い。19年には、かんぽ生命で顧客に不利益な契約を結ばせていた不正契約問題が発覚、24年には郵便局でゆうちょ銀の顧客情報を保険営業に不正に流用していた問題が明らかになった。
さらに25年には配達員の酒気帯びの有無などを確認する法定点呼を全国的に怠っていたことが分かり、国土交通省から行政処分を食らっている。
極めつけは、今春に起きた日本郵便東京支社の元男性社員による収賄事件だろう。ポストから郵便物を回収する取集業務の外部発注を巡り、特定業者に不正受注させ、見返りに現金を受け取ったり高額接待を受けたりしていた。不正契約額は25年度分だけで計1億8400万円にも上る。元社員は東京ディズニーシーのVIPツアー(66万円)に招待されたほか、吉原のソープランドや高級すき焼き店で繰り返し接待を受けていたというから悪質だ。
日本郵便の社内調査によると、元社員の前任者、前々任者も同様の不正に手を染めていた。少なくとも21年から不正が行われ、担当者3代にわたって「役得」として引き継がれてきたというから開いた口が塞がらない。
一連の不祥事ではいずれも社内のチェック体制が機能しておらず、日本郵便や日本郵政の経営陣は問題が発覚するまで事案の報告すら受けていなかったケースが珍しくない。日本郵政は不祥事のたびに記者会見で「事態を重く受け止め、再発防止策と内部管理の強化に努める」などと釈明を重ねているが、ガバナンス不全は明らかだ。
既得権益と対峙せず
郵便事業の再建に向けた経営努力も乏しいと言わざるを得ない。日本郵便は土日配達や翌日配達などサービスを削り、24年には郵便料金を約3割も値上げしたにもかかわらず、収益は悪化するばかりだ。
巨額の資金を投じて豪州の大手物流会社を買収しながら海外物流市場への参入に失敗したり、ヤマト運輸との物流事業での協業が頓挫したりと、収益改善策もことごとく失敗している。経営失策が赤字体質を慢性化させた。
「今のサービスを維持したまま、料金も限定的にしか上げられないとすれば、郵便事業の持続可能性はない」
昨年6月、旧郵政官僚で初めて日本郵政トップに就いた根岸一行社長(1994年入省)はこう開き直る。だが、郵便事業の不振を深刻化させた背景には、経営陣が既得権益に固執する全特や郵政族議員に真正面から対峙せず、赤字の元凶である過剰な郵便局数の削減に手をつけて来なかったことがある。
経営者の失態
全特は「アリの一穴」となることを警戒して地方だけでなく都市部の郵便局の削減にも反対してきたが、経営陣はこれを唯々諾々と認めてきた。
郵便局に「ユニバーサルサービス(全国一律サービス)」の提供が法律で義務付けられているのは確かだが、その趣旨は利用者に比べて過剰な郵便局数を温存することでは決してない。保身に汲々として全特の言いなりになってきた結果が、国費投入という経営者として屈辱的な事態を招いた。
日本郵政は27年度中に郵便料金の再値上げを検討しているというが、血税で赤字の尻拭いをさせられた上、さらなる負担増まで強いられては堪ったものではない。経営失態のツケをいつまで国民に回し続けるつもりだろうか。
郵便局と郵政族議員と似たような問題を、農協と農水族議員も抱えている。こちらもあわせて読みたい。『高止まりするコメ価格は結局、農業票目当てか…農林族や鈴木農相が発出する「コメ農政復古の大号令」』
【はじめから読む】郵政民営化の頓挫が決定的に!赤字を垂れ流す日本郵政に国費を年に650億円も投入するのは「すべて選挙のため」

