【山口 伸】”赤ペン先生”は今どこに?会員4割減の「進研ゼミ」王者ベネッセが凋落…復活した「学研」との決定的な違い

写真拡大 (全3枚)

明暗分かれたベネッセと学研

進研ゼミを展開するベネッセグループは、約10年にわたって苦戦している。14年3月期に売上高のピーク(4664億円)を迎えたものの、進研ゼミの会員数が減少し続け業績が悪化した。

早いうちから介護事業に参入したものの、こうした教育事業の失速分を補うことができず、24年にスウェーデンの投資ファンドと手を組みMBO(マネジメント・バイアウト)を実施して株式を非公開化。24年3月期の売上高は4108億円だった。

一方、同じ老舗教育出版である学研ホールディングスは売上高が伸び続けている。2008年には一時779億円まで落ち込んだものの、17年度に1000億円、25年度は1900億円を突破。今期は大台の2000億円超えを見込む。出版事業に代わる収入源として2000年代に参入した介護・学習塾事業はいずれも増収が続いている。

落ち込むベネッセと成長続きの学研、明暗が分かれた両社について解説していく。

「進研ゼミ」で成長したベネッセ

ベネッセは1954年に創業した学生向けの出版社をルーツとする。62年に模擬試験事業を開始し、69年に「通信教育セミナ」(後の進研ゼミ高校講座)を開始して通信講座事業を始めた。

その後、同事業では中学生向けや小学生向けの講座を開設した。88年には現在のこどもちゃれんじを開設。小学講座→中学講座→高校講座と、顧客の継続利用に支えられ、ベネッセは成長した。

95年に同社は介護事業に参入し、ホームヘルパー育成講座と訪問介護サービスを始めた。国内の子どもの数は減少し続けており、新たな収入源を獲得する狙いがあったとみられる。また、当時は異業種による介護事業への参入が盛んだった時代でもあり2006年には学習塾事業に参入した。

個人情報流出事件で会員数が激減

だが冒頭で述べたとおり、ベネッセは2010年代後半から失速した。主力である通信教育の衰退は、少子化に加え、共働きの広がりで親が付き添う形の学習を続けにくくなったことが要因とされる。

そこに追い打ちをかけたのが、14年に発生した個人情報流出事件だ。外部委託企業の派遣社員により、3504万件もの個人情報が流出したとされる。同事件をきっかけに、我が子の安全を憂う親の退会が相次ぎ、「進研ゼミ」と「こどもちゃれんじ」を合わせた会員数は360万人超から271万人に激減した。

また、近年では「スマイルゼミ」やリクルートが展開する「スタディサプリ」などデジタル教材が台頭しており、教育のペーパーレス化もベネッセや学研が展開する通信教育の失速に一定の影響を与えた。

学習塾事業では、大学受験予備校のお茶の水ゼミナール(現お茶ゼミルータス)や東京個別指導学院などを子会社化し、顧客の囲い込みを狙った。

だが、一部の塾にベネッセの教材を供給していたものの、通信教育講座とのシナジーは限定的だった。東京個別指導学院の在籍生徒数は約3万人に過ぎない。MBO前年度のベネッセの23年度売上高に占める塾・教室事業の割合は11%だった。

介護事業では有料老人ホームを中心に事業を展開し、新規出店やM&Aを通じて規模を拡大した。24年3月期末の施設数は357か所。同事業の23年度の成績は売上高1393億円・営業利益95億円で、利益率は6.8%である。

高収益事業ではあるものの、これだけでは通信教育の失速分を補いきれていない。MBO実施前の24年3月期の全社売上高は4108億円で、そのうち教育関連事業が2077億円と半分を占めていた。主力である教育事業の規模が大きいぶん、その減収を介護事業で埋め合わせられない状態が続いているのだ。

・・・・・・

【つづきを読む】最大手「ベネッセ」が苦戦する一方、「学研」は売上高2.5倍の大復活…なぜ明暗が分かれたのか

【つづきを読む】最大手「ベネッセ」が苦戦する一方、「学研」は売上高2.5倍の大復活…なぜ明暗が分かれたのか