新製品レビュー:Insta360 GO 3S レトロキット アクションカメラをクラシックカメラのような使用感と描写に!
親指サイズのPOVカメラとして人気の「Insta360 GO 3S」に、カメラファンにはうれしい「レトロキット」が登場した。Insta360 GO 3Sがすっぽりと埋まるレトロキットを装着すると「レトロビューファインダー」での撮影が可能に。これはいわゆるウエストレベルファインダーで、ミラー構造のためしっかりと左右逆像となり、二眼レフの楽しみである水平の撮りづらさなどまで味わうことができる。
そして「フィルム風フィルター」を新たに搭載し、ネガフィルムとポジフィルムを再現した色調と日付入りの撮影が可能に。アクションカメラのイメージが強いInsta360シリーズだが、日常を記録する気軽なコンデジ、昨今人気のトイデジの延長のような楽しみ方がレトロキットではできる。
ふとしたときに撮る、ということに長けたカメラ。何気ない写真は後から大切なものになる。ライフログ的に使っていきたい
広角16mm相当を活かして「どこに行ったか」の記録をするのもオススメ。日付入りのため日記的に振り返ることができる
Insta360 GO 3Sの基本性能
カメラ本体は約39g。4K30pの動画撮影に対応しており、付属の磁気ペンダントを使うことでネックレスのように首にかけてハンズフリーで撮影ができるなど、気軽に自分視点のPOV撮影ができるライフログ・Vlogカメラとして人気のInsta360 GO 3S。
センサーサイズは1/2.3インチで、アクションカメラやスマートフォンの超広角カメラなどと同等のサイズ。レンズは換算16mmでF2.8となっている。
Insta360 GO 3Sのみだと親指サイズ。POVカメラとして人気なのがわかるサイズ感だ
レトロキット装着時。カメラ本体がスポッと埋め込まれたようなイメージ。収納部がマグネット式になっていて脱落を防ぐ
Insta360 GO 3S レトロキットの初見での操作感
ボディ前面を押し込むと電源のON/OFFとシャッターを切ることができるが、これが唯一のボタン類。もちろん液晶モニターもなく、基本的な設定はスマートフォンと連動させてアプリ「Insta360」上で行う。
レトロキットには「レトロビューファインダー」が備わっているものの、要はInsta360 GO 3Sが収納できるガワでしかなく、箱を開封をした際には、さあどうしたものか、と悩んでしまった。説明書も近年さまざまな製品で見られる簡易的なものでオンラインが大前提。それならばまず起動をしてみようとあてずっぽうに使い始めてみた。
最初のハードルは、このレトロキットの売りである「フィルム風フィルター」が起動しても見当たらないことだった。これはファームウェアのバージョンが古いことが原因で、アプリ「Insta360」と初めて同期させた際にもアラートが出現。ところが、いくらファームウェアのアップロードを選択してもエラー表示になってしまう。念のため充電量不足なども考えてしばし充電タイムなどを設けるもダメ。
「エラーが出たら再起動」はガジェットの定番だが、再起動でなんてことなくアップデートでき、無事にフィルム風フィルターも使えるようになった。
本来はこのようなどうでもいいことは書くべきではないと思うが、なにせカメラ本体にはUSBの差し込み口すらないという完全オンライン仕様。わたしのように四苦八苦する方もいると思ったので書かせていただいた。アプリ連動、Wi-Fi接続が不可欠であると覚えておこう。
開封後はアプリ「Insta360」との連携、そしてファームウェアのアップデートが必須
Insta360 GO 3S レトロキットに対応したファームウェアにしない限り、専用のフィルム風フィルターはアプリ内メニューにも出現しない
無事にファームアップ完了。念願の「ネガフィルム」などを使えるようになった
レトロキットのクラシカルな操作感
さて、Insta360 GO 3S レトロキットは「クラシックカメラを使っているかのような操作感」が前面に押し出されているが、どのあたりがクラシックカメラライクなのだろうか。
まず110規格のフィルムカメラを彷彿とさせる大きさと横長のデザインがひとつ。そしてウエストレベルファインダーは最大の特徴であり、モニター非搭載による撮影画像の確認ができないというフィルムカメラ的な撮影体験もここに含まれるだろう。
ウエストレベルファインダーはフィルムカメラを愛用している人にとっても得手不得手が分かれるところだが、左右逆像で見えるために水平垂直が取りづらく、変なダンスをしているかのようにして構図決定をするという、ウエストレベルファインダーあるあるを楽しむことができる。
スマートフォンによる記録撮影で恐縮。このようにレトロビューファインダーは真上から構図決定ができる。デジタルのスルー画ではなくミラーによる像だ
ただしファインダーの見えはアバウトなものであるし、被写体の位置によってはファインダーを覗くことができないことも多く、何よりも16mm相当の広角画角であるため、ノーファインダーで撮るということも多くなるはず。
売りはウエストレベルファインダーかもしれないが、ファインダーが付いていないカメラのように、写っている範囲を想像して撮るのもおもしろいかもしれない。
撮影画像はアプリ連動しない限り確認できないので、撮影時は想像力を働かせ、後からゆっくりと振り返るというフィルム的なタイムラグもワクワクする。
撮影散策のお供としての感想
都内の散策にInsta360 GO 3S レトロキットを首からぶら下げて持ち歩いてみた。重さは感じず軽快、それでいてスマホで撮るのとは違って、きちんとカメラで撮影しているという感覚になれる。
これはわたしの撮り方のクセが影響しているのかもしれないが、想像した通り、ノーファインダーでの撮影のほうが割合的に多かったと思う。
気になったら電源をONにして撮影、撮り終わったら電源OFFという使い方をした日は帰宅時までバッテリーは持ったが、さあ撮影をするぞ、と頻繁にシャッターを切った日は1時間ほどで本体がバッテリー切れを起こし、付属の「バッテリーパック」を装着して撮影中に給電することに。
それでも動画の場合は最大76分の録画時間とのことで、小さなボディのためバッテリー容量の少なさは仕方のないところだが、USB Type-Cが使える外部バッテリーなどを持っていくなど、休憩時にも充電するという使い方も必要だと思う。
ネックストラップを使えば長めに、ストラップのみならチャーム的に持ち歩ける
散策中に窓に写った自分。Insta360 GO 3S レトロキットの小ささがよくわかると思う
バッテリーパック装着。このとき、レトロキットの背面のカバーを取って装着する必要がある。パーツをなくさないようにしよう
アプリ連動が基本とはいっても、アプリで最後に行った設定がメモリーされているので、カメラ本体だけを起動すれば撮影可能。本体の前面を押せば起動、長押しで電源OFF。
これが視認だけではわかりづらいので、シャッター音がなかなかの音量で流れるが、ビープ音はONのままにしておくほうがいいだろう。外出前にフィルム風フィルターにセットしておき、あとはバッテリーに気をつけながら思うがままに撮る、というのが良いのではと感じた。
ちなみに、設定を変えたい場合や撮影画像を確認・編集したい場合は、スマートフォンにカメラを近づけるだけで連携アプリの呼び出しがおこなえる「NFCカスタムスキン」を搭載しているため、スピーディーにアプリ連携ができる。
アプリとの連携はスピーディー。接続面でのストレスはない
アプリと接続した状態では、アプリからリモート撮影が可能となる。設定の変更に加えて、レトロビューファインダーでは見えづらい際の正確な構図つくりが可能
日付入り&フィルム調写真の感想
フィルム風フィルターには「ネガフィルム」と「ポジフィルム」が用意されており、Insta360 GO 3S レトロキットでは日付が右下に印字され、往年のコンパクトカメラのような雰囲気の写真を撮ることができる。
その他にも、Insta360 GO 3Sに11種のカラープロファイルが内蔵されているほか、アプリ内であれば膨大な数のフィルターを加工アプリ感覚で適用可能。
しかし、Insta360 GO 3S レトロキット固有の「ネガフィルム」と「ポジフィルム」をまずは楽しみたい。他にも「ステッカーフィルター」という、画像の上にステッカー風オーバーレイが施されるフィルターも固有だが、遊び心が強めのため、今回はさほど使わなかった。
「ネガフィルム」はクラシックなネガフィルムに着想を得た、彩度が控えめ、トーンはやわらかめ、全体的にクールトーンのモード。ノスタルジックな雰囲気の作り方もうまいし、センサーサイズ起因のハイライトの飛び気味の表現、高感度撮影時の粒状感などもフィルムライクで、常用モードとして最高にオススメだ。赤が朱色っぽく表現されるところも好み。
「ネガフィルム」で撮影。ノスタルジックな色味が好印象
対する「ポジフィルム」は、高コントラストと高彩度。富士フイルムの「ベルビア」のようなイメージだ。演出された色付きは控えめなため「フィルム調」という点のみで見ていくと、こちらのほうがリアルに感じる。適性露出、順光で撮ったときの写ルンですのような写真が撮れるのはこちらかもしれない。
「ポジフィルム」で撮影。高彩度、高コントラスト
「ステッカーA」で撮影。ハートや星の落書き風イラストがオーバーレイ
「ステッカーB」で撮影。少しカラフルなハートや星が出現
「ステッカーC」で撮影。イラストがオーバーレイ。作例では偶然にも配置がバッチリだった
日付は右下に入る。このフォントや位置に違和感を感じると、とたんにチープで作り物のように見えてしまうが、Insta360 GO 3S レトロキットの日付は色もバランスもバッチリではないだろうか。
室内で撮影をすると高感度撮影になるが、粒状感がレトロな雰囲気を作ってくれる
敢えてフィルムカメラとの比較をするとなると画面比率だ。イメージセンサーをフルで活かす場合は4:3、Insta360シリーズの軽快なイメージや広角を活かすなら16:9。ここに35mmフィルムと同じ3:2も選ぶことができれば、もっとフィルム調を楽しめたはずだ。まあ、編集時にトリミングをすればいいだけ。こだわりたい方は一手間かける価値はあるだろう。
16:9で撮影。動画カメラではなじみ深い画面比率。16mm相当の広角にもマッチする
4:3で撮影。イメージセンサーをフルで活かす画面比率。
画面比率の選択の中には「Film Pano」もある。上下を大胆にカットしたパノラマ比率になる
レトロビューファインダーは上から覗くため、立った状態から下の方の被写体を狙うのは難しく、必然的にノーファインダーになってくる。逆にローアングルには抜群に強く、地面すれすれにカメラを構えて撮るのは、仕上がりにも個性が生まれるためオススメだ。
水面すれすれショットにもトライしたくなってしまうが、カメラ本体は10m防水だがレトロキット単体やバッテリーパックには防水性能はないので注意しよう。
地面すれすれショット。地面が視線の導入にもなる
ミニチュアの自転車。奥の本物の自転車との対比がお気に入り
トイデジでは物足りないという人への訴求
昨今、トイデジはブームとなっている。
いつも思うのだが、フィルムを使うトイカメラや写ルンですは、いくら気軽であっても「フィルムフルサイズ」だ。だから、条件が揃えば素晴らしい写りをすることもあるし、甘さの中にも味わいがある描写をする。
しかしトイデジは価格や操作感が「気軽」だったり「チープ」であり、写りは極小イメージセンサーにより満足できないことも多い。そのなかでInsta360 GO 3S レトロキットは、使用感と撮れる写真の釣り合いがとても良く取れていると思う。
適度なハイライト飛び、粒状感にも似たノイズ。わたしはiPhoneユーザーだが、センサーサイズがいかに近しくても、Insta360 GO 3S レトロキットはスマホ写真とは明らかに異なると感じた。
トイデジにはトイデジなりの楽しさがあるが、長く使っていても飽きないのはInsta360 GO 3S レトロキットであるし、POVカメラとして楽しみつつトイデジ気分でスチールも楽しみたいという人にも良い選択になるのではないだろうか。
最短撮影距離は50cmとやや遠め。しかし広角かつセンサーサイズは小さいため被写界深度は深く、かなり近づいても実際には撮れてしまう
階調の良いあんばいの狭さが生むレトロな雰囲気が素晴らしい
彩度控えめで少し渋味のある発色の「ネガフィルム」。やはり赤のやさしい発色が好ましい
小さなカメラのため手ブレはしやすいが、それを逆手に取ってブレ写真も楽しみたい。高性能なカメラでは逆に取りづらい写真かもしれない
ただ間違えてシャッターを切っただけ。このような失敗写真も楽しめるカメラだ
チュロスを発見した鳩。このように上から見下ろすようなアングルはノーファインダー撮影になることが多い
ポストプロダクションの楽しみ
撮影した画像データはInsta360 GO 3S内に保存される。ストレージは64GBと128GBの2種があり、SDカードなど記録メディアを挿入するスロットなどは存在しない。
アプリ「Insta360」と同期すればカメラ内の画像を閲覧・編集することができるが、同期を解除するともちろん閲覧不可となるので、スマホへのダウンロードはしておきたい。
さらに編集後の画像は、カメラロールに保存することでSNS共有などが可能に。今回は「撮った際に決する」という点を大切にしてJPEGのみで撮影をしたが、それでもアプリ内では後からフィルターの変更ができる点に驚いた。現像ソフトで追い込みたい場合はRAWでの記録がいいが、通常利用であればJPEGで十分かもしれない。
撮影した画像データをカメラ本体のストレージからスマートフォンのアプリ内へとダウンロード。これでアプリ単体で編集作業がおこなえる
編集できる項目は豊富。色温度や彩度などを編集してもいいし、フィルターそのものを変えてしまうこともできる
「ネガフィルム」で撮っただけの元データ
彩度とコントラストを強め、色温度も暖色系に振った編集後の画像データ
フィルターの数はとにかく莫大なので、お気に入りを各自探そう、くらいのことしか言えない。ただ、Insta360 GO 3S レトロキットにはセルフィーをする際に構図決定できる「セルフィーミラー」が付いているのも売りで、広角を活かした「ここに来た写真」を撮ることができる。
その際に「美顔フィルター」を使うと、肌をなめらかにすることができるし、輪郭をシュッとさせることもできる。少しでも良い顔を晒したい際は使いたいところ。
「美顔フィルター」もせっかくだから試してみた
セルフィーの元データ。ちょっとやつれている
「美顔フィルター」で肌を明るく、また輪郭をシュッとさせてみた。男性でも、このくらいのことはしたいものだ
レンズの右側にあるのがセルフィーミラー
ウエストレベルファインダーになっている部分をパーツで蓋をすることで、本来は反射が弱いセルフィーミラーに人物が写るようになる
まとめ
改めて撮影した画像を振り返っていくと、しっかりと「カメラで撮った写真」になっているなと強く感じた。
スマートフォンとは別に撮影するためのアイテムを持つことの大切さ。そして日付入り写真は、厳密に言えば後からでも改ざんできてしまうとはいえ、やはり「いつ、どこに、誰といったか」という記録をするには最高だ。
いまはバッグにもチャームをじゃらじゃらと付けるのが当たり前の時代。その中にInsta360 GO 3S レトロキットも仲間入りさせてみてはどうだろう。
