女子高生がバイクから転落死⇒無免許運転の16歳少年「ひき逃げ」で逮捕…ひいたのは後続車両なのに? 最長“15年の拘禁刑”の可能性もあるワケ【弁護士解説】
7月上旬、東京都中央区で、2人乗りのバイクから転落した15歳の女子高校生が後続車にはねられて死亡し、バイクを運転していた16歳の少年(男子高校生)が、救護せず現場から立ち去ったとして逮捕された。
少年は無免許であったという。未成年者であっても刑事責任を問われるのだろうか。課せられる可能性のある刑罰や量刑はどうなり、遺族への慰謝料などは誰が支払うのだろうか。
なぜ「ひき逃げ」で逮捕された?報道によると、事故は7月4日午後、勝どき陸橋で発生。少年が運転するバイクの後部座席に乗っていた女子高校生が何らかの原因で転落し、後方を走行していた車にはねられた。女子高校生は搬送先の病院で死亡した。
少年は現場で救護活動を行わず立ち去ったが、翌日に警察署へ出頭。無免許でバイクを運転していたことも判明。少年は自動車運転処罰法違反(無免許過失運転致死)と道路交通法違反(救護義務違反)で逮捕された。
本件について、各社は「死亡ひき逃げの疑いで逮捕」と報道している。しかし、実際に女子高校生をひいたのは少年ではなく後続車である。そのためネット上では「それは『ひき逃げ』なのか…?」などと疑問視する声も散見される。
交通事故に詳しい鷲塚建弥弁護士によると、そもそも法律において「ひき逃げ」という罪名は存在せず、本件も含めて一般に「ひき逃げ」は道路交通法上の救護義務違反(同法72条1項前段)を指す。
救護義務は「交通事故」によって「人の死傷」が生じた場合に、その車両等の運転者に生じる。ここでいう「交通事故」は、他車や歩行者との衝突・轢過(れきか、人をはねる事故)に限らず、「自車の走行に起因して人が死傷する事態」を広く指している。
そのため、本件において少年が運転していたバイクの後部座席から同乗者が転落したという事態も「交通事故」にあたり、運転者である少年にはバイクを直ちに停止して救護し、道路上の危険を防止する義務が生じていた。そしてこの義務を果たさずに立ち去った点が、道交法違反として問われているということだ。
最長で「15年以下の拘禁刑」も本件における少年の行為について、法律ではどのような刑罰が定められているのだろうか。
まず、救護義務違反については10年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が定められている(道交法72条1項前段・117条2項)。
また、事故を警察に報告しなかった場合は報告義務違反にあたり、法定刑は3か月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金だ。
さらに過失運転致死傷罪が成立する場合には、本件では少年が無免許であったことから10年以下の拘禁刑となる(自動車運転処罰法5条、6条4項)。
ただし、本件で実際に女子高校生をひいたのは後続車であることから「死亡したという結果が少年の過失によるものと法的に評価できるか」といった要素が問われることになり、実際に同罪が成立するとは限らない。
そして、無免許運転罪は3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金だ(道交法64条1項・117条の2の2第1号)。
これら複数の罪は併合罪(刑法45条)として処理され、処断刑の上限が引き上げられる。最も重い罪の長期の1.5倍となることから、上限は15年以下の拘禁刑となる(同47条)。
「本件においては、無免許・救護義務違反(逃走)・被害者の死亡などが重なっています。これらの要素は、量刑上、いずれも強い加重事情として働きます」(鷲塚弁護士)
刑事裁判となる可能性は?一般に少年(20歳未満)が起こした事件は、まず家庭裁判所に送致され、原則として刑罰ではなく保護処分による処遇がはかられる。
ただし、事件によっては、家庭裁判所から検察に送致され、成人と同様に刑事裁判が開かれる場合もある。このように家庭裁判所から検察へ事件が送られる手続きを「逆送」という。
さらに、逆送は大きく二つに分けられる。その一つの「原則逆送(少年法20条2項)」は、16歳以上の少年が「故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪」を犯した場合が対象となる。
これに対し、「裁量的な逆送(同20条1項)」は、死刑・拘禁刑にあたる罪について、罪質・情状に照らし刑事処分を相当と認めるときに、16歳以上の少年を逆送するものだ。
本件の場合、過失運転致死は故意でないこと、救護義務違反も「被害者を死亡させた罪」そのものではないことから、原則逆送が成立する可能性は低いという。
一方、被害者が死亡し、無免許運転や救護義務違反(逃走)を伴う悪質性の高い事案であることから、「裁量的逆送により刑事裁判・実刑に至る可能性は相応にある」と鷲塚弁護士は語る。
「また、逆送されない場合でも、事案の重大性から少年院送致などの保護処分となる可能性があります」(鷲塚弁護士)
遺族は少年と親に損害賠償を請求できる?通常、交通事故で被害者が死亡した場合、加害者は刑事責任を問われるだけでなく、遺族に対して民事上の損害賠償責任を負う可能性がある。
本件でも、加害者である16歳の少年の行為は民法上の不法行為にあたり(民法709条)、かつ、責任能力に欠けるところはない(同712条参照)。そのため女子高校生の遺族は少年に対し、死亡による逸失利益や慰謝料、葬儀費用などについて損害賠償を請求することができる。
一方で、少年の親(保護者)に対しては、少年に責任能力が認められる以上、責任無能力者の監督義務者の責任(同714条)を問うことはできない。
ただし、たとえば保護者が「少年の無免許運転を知りながら放置・容認していた」「少年にバイクを買い与えていた」などの事情があり、それと女子高生の死亡との間に、社会通念に照らし相当な因果関係が認められる場合には、保護者に対し固有の不法行為責任(同709条)を追及できる可能性がある。
また、少年が運転していたバイクの保有者が親であった場合にも、運行供用者責任により、遺族に対する賠償責任が発生する可能性もある(自賠法3条)。
「なお、実際に女子高校生をはねた後続車の運転者についても、事故の状況によっては賠償責任を負う可能性があります。
その場合には『少年と後続車の運転者のどちらがどの程度の責任を負うのか』という点や、賠償金の負担割合などが問題となります。
また、被害者側にも無免許運転であることを知りながら2人乗りに同乗していたなどの落ち度があれば、過失相殺により賠償額が減額される可能性があります」(鷲塚弁護士)

