2025年3月13日、警視庁戸塚警察署を出る高野健一容疑者 
写真/産経新聞社

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「高野いないと生きていけない」
 そう言っていた女性は殺害された--。

 昨年3月、東京・高田馬場の路上で動画配信中だった女性が、男に襲撃され、刺殺された事件。殺人などの罪に問われた高野健一被告(44)の初公判が今年7月1日、東京地裁(井戸俊一裁判長)で開かれた。

 前編では、検察側の冒頭陳述をもとに、身の毛もよだつ残忍な犯行に至った経緯などを詳報する。

◆初公判で起訴内容を認めた高野被告の様子

「間違いありません。本当に申し訳ございませんでした」

 黒色のスーツに、紺色のネクタイ姿で入廷してきた高野被告。法廷中央にある証言席に立ち、目の前の裁判官らの方を向いて、はっきりと起訴内容を認めた。法廷を一瞥すると、傍聴席からの視線を気にするように顔を下にそむけた。

 勾留中だからか、送検時のニュース映像と比べて、一回りほど痩せ、白髪が目立っていた頭はスキンヘッドになっていた。淡々と進行する自身の裁判に、終始緊張でこわばった表情だった。

 そんな高野被告は、起訴状によると、2025年3月11日の午前9時50分頃、東京・高田馬場の路上で佐藤愛里さん(当時22歳)の顔面や首などを、ナイフ(刃体の長さ約12.4センチ)で刺して殺害。さらに、犯行に使用したナイフを含む2本を所持した、殺人と銃刀法違反で起訴されている。

◆生配信から始まった“推し”とのゆがんだ関係

 罪状認否のあと、検察側の冒頭陳述がはじまった。なぜ、佐藤さんが高野被告と知り合い、殺害されてしまったのか--。そこには“推し配信者”と一線を越えた、ゆがんだ関係が見えてきた。

 まず、二人の関係性について紐解く。佐藤さんは山形県で出生した。2021年頃から、「最上あい」と名乗って、動画配信サイト「ふわっち」で活動していた。

<高野被告は、2021年12月頃から翌22年1月頃、「ふわっち」で佐藤さんの動画を見て好意を抱くようになった。高野被告は、佐藤さんに連絡を取り、LINEを交換して直接連絡を取るようになった>(検察側冒頭陳述の要旨・以下同)

 佐藤さんは「最上あい」という名で配信活動をしていた。その生配信を視聴し、好意を抱いた高野被告。その愛情を金銭換算するかのように、推しに貢ぎはじめた。

<高野被告はLINE上で「好き」とメッセージを度々送っていた。また、高野被告は合計約163万円の配信の「アイテム」を払った>

 この「アイテム」とは、視聴者がライブ配信者に贈る「投げ銭」のこと。配信者はその「アイテム」を金銭に換えることができ、獲得総数によって配信者はランクづけされている。

 過去に、佐藤さんは最上位の「プラチナプラス」になったこともあった。同ランクの配信者は、月に100万円の高収入の目安にもされているようだ。

<22年8月には、佐藤さんが当時勤務していた山形市内の飲食店に誘われ、初めて対面。その後も訪れ、計4回にわたって合計約77万円の飲食代を支払っている>

◆「お金を貸して」直接送金へ発展した金銭トラブル

 そんな、イチ視聴者だった高野被告との関係がいびつになりはじめたのは、初対面の1か月後の9月13日。佐藤さんから、LINEでこんなメッセージが送られてきた。

「申し訳ないんだけどさ、昨日日雇いバイト行った先に財布忘れちゃってまじ手持ちない状態だからちょいお金貸してほしいんよね。明日か明後日取りにいくときに返すから(土下座の絵文字)」(検察側書証より)

 これを皮切りに、高野被告は金銭を無心されるたびにATMに赴いては、現金を佐藤さん名義のゆうちょ銀行口座に振り込んでいた。

「携帯代金の支払いができない」「具合が悪くて吐血もして仕事を辞めてやり直したい」--。

 理由は様々だったが、計13回にわたり、254万4800円にも及んだ。