小林は開幕から新設球団のローテーションで奮投している【写真:羽鳥慶太】

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韓国にも生まれた「2軍専門球団」に飛び込んだ小林珠維

 今季から韓国プロ野球には「2軍専門球団」の蔚山ホエールズが誕生した。日本のオイシックスやハヤテと同じように1軍を持たず、ドラフト指名を受けられなかった選手や、プロから戦力外となった選手で編成されている。注目すべきは4人もの外国人枠が設けられたこと。ここでプレーしている3人の日本人のうち、小林珠維投手は昨季オイシックスでプレーし、日韓の2軍球団を渡り歩いたことになる。2月のキャンプから韓国に渡り約半年、感じた違いを言葉にしてくれた。

 今季、韓国プロ野球には10人以上の日本人選手が身を投じた。1軍に「アジア枠」が設けられたためだ。ただ開幕から4か月が経ち、野球の違いに対応できるかどうかで明暗が分かれるようにもなってきた。

 アジア枠の選手はシーズン中の補強期限、7月末までに一度だけ交代することが可能だ。そこでクローズアップされるのが、韓国の「2軍球団」でプレーする小林や岡田明丈投手(元広島)、長大聖投手(元BC群馬)になる。移籍はもちろん可能で、就労ビザも取得済み。タイムラグなしで戦力化できるメリットは大きい。そして国外にいる選手よりも一足早く、野球の違いについて考え、試行錯誤を続けているのもアドバンテージだ。

 全てが初めての新設球団で、開幕から先発ローテーションの一員として投げ続ける小林の成績は、16試合で5勝5敗、防御率3.46。69奪三振はリーグ2位だ。シーズンが進むにつれ、安定感が増してきた。日韓の違いについて聞くと「種目は一緒なので、同じところはもちろん同じなんですけど……。一言で言えば大胆ですね。いろんな意味で」という答えが返ってくる。

 韓国プロ野球で導入されているロボット審判については、多くの選手が違いを口にしている。米大リーグのように選手が判定に疑問があるときだけ適用されるのではなく、全ての投球を追跡システムとAIで判定し、球審はそれをコールするだけだ。ここでのストライクゾーンは、やはり人間の判定と異なるのだという。簡単に言えば高めに広く、左右に狭くなる。これまで捕手のフレーミング技術などで補正されていた部分がなくなるのだ。

「横よりも縦のラインが広いのははっきりしているので、カーブやカットボールの軌道を変えたりはしています。あと、低めに投げるのだけが正解ではなくなる。大胆に高めに投げるボールも、低めにギリギリ攻めるボールも良いボールになるので、それを気にしながら投げてはいます」

 現在の韓国の判定システムでは、本塁の真ん中付近と捕手寄りで2度、ストライクゾーンを通過する必要がある。変化球の軌道が斜めだと、それが難しくなるのだ。また低めギリギリに決めるのも難易度が上がると感じている。

ロボット審判で変わる野球…攻略の鍵は日本流の「細やかさ」

「低いところからの真っ直ぐはどうしても沈む。重力に逆らえないから下がるんですけど、ベースの真ん中でギリギリのボールがさらに落ちると、ボール球になってしまうんです」。気づきを投球に生かす方法を、模索する日々だ。

 打者にもお国柄が出てくる。ここで展開されているのは、イメージ通りの力勝負。「日本とは違って、本当に踏み込んで、もうカウントとか関係なしに振ってくる。とにかくストレートに強い印象があります。日本のファームと比べても真っ直ぐを逃さない」。さらに守備でも走塁でも、大胆に動くことによる圧力を感じるという。

 また「サンムは本当に強かったです。びっくりしました」と、2軍に“軍隊チーム”が参加しているのにも目を見張った。兵役の義務をここへの所属で消化できるため、各球団が若手有望株を送り込む。蔚山と同じように1軍を持たないが、1軍級の戦力を持つチームなのだ。

 このリーグで投手が活躍しようとすれば、パワーで上を行き、ねじ伏せるという方法が一つある。そして韓国の選手と「違い」を出そうとすれば、日本らしい細やかさを大切にするという手段もある。小林が目指しているのは後者だ。

「僕は日本の野球に誇りを持っているので。細かさでは絶対負けたくないですし、その細かさで勝とうともしています。大ざっぱに分けるなら、大胆=アメリカ、韓国寄りになると思うんですけど、そうなりたいと考えるのではなく、ここで日本の良さを出したいと考えています。細かさで立ち向かっていくというか」

 それが現れるのが「間合い」の勝負だ。これも日本では未導入のピッチクロックには「僕はテンポが速いので、あまり困らなかったです」というが、ボールを持てる時間を長くも短くも使い、打者を追い込んでいく。

「それに守備もです。フィールディングもピッチャーに大切な要素なので。足が速い選手への牽制の仕方とか。配球についても、ただ『カーブを投げる』んじゃなくて、まずその前の真っ直ぐに対してどうだったのかを見ながら、カーブを投げるとか」。打者の反応を見ながら勝負の方法を決めていけるのも、日本の常識の中で育った自分の長所だと考えている。

日常生活で気づいた違いの本質…ホークスの後輩も韓国に興味

 違いを挙げればキリがない。韓国の試合球は、NPB統一球よりもわずかに小さく感じた。さらにマウンドは日本のように固いが、高さがないところが多いという。「日本みたいに高いと、ABSではボールが増えてしまうんじゃないですかね?」。直面する課題に対し、修正を繰り返す毎日。ただ小林は、これを当たり前のことだと受け入れている。日々の暮らしから学んだことだ。

「初めて宅配で食事を頼んだ時には、食べられないほど辛く感じたものもありました。でも今食べてみると、もっと辛くてもいいんだけどな……ってなるんです。野球もそれと同じことだと思うんです」

 5月下旬には、古巣ソフトバンクとの交流戦があった。登板機会はなかったものの、後輩と食事にも行った。「日本と韓国、それぞれの文化の違いを、ちょっとでも僕が伝えられたらなと思って『こういうところもあるんだよ』と。いろいろ話をしましたね」。その中で感じたのが、日本の選手が韓国の野球に抱く関心がより具体的で、深くなっていることだ。

「やっぱりアメリカに比べて近いですし、『自分もできるのかな?』という興味が湧いている選手が多いと思うんです。僕が見たり聞いたりしている範囲でも感じますから」

 ソフトバンクを戦力外となった2024年のオフには、米国の施設でトレーニングするなど海外の野球に以前から興味があった。「今は助っ人ですけど、いろんなところで韓国の野球を勉強して、結果も残して、何か1つでも吸収したい。それが将来にもっと繋がればいいかなと思っています」と、視野を広げている。

 韓国では、来季から2軍球団を増やす方向で調整が進んでおり、球団を運営したい自治体の公募がスタートしている。外国人枠もさらに増える方向だ。小林が歩いた道は、続く日本人の選手にとって大きな学びとなるはずだ。

(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)