まだ欧州でプレーする。その思いを振り切り、なぜ浅野拓磨は広島に復帰したのか。何百回の自問自答「自分の中では一番難しいチャレンジ」
「ここ2年間はスペインのマジョルカというチームでプレーしていて、プレーしながらまだ日本には帰らないと思っていたし、シーズンが終わってからも日本に帰る気はさらさらなくて、自分の向かっている夢や目標にチャレンジしていきたいと思っていました。何より、サンフレッチェを旅立った時にできるだけ長くヨーロッパでプレーする覚悟を持って広島を発ちましたし、その気持ちを忘れたことはなかった」
ただ、実際に会って話すと心は動いた。そして、悩みに悩んだ。結果として浅野は「答えが僕の中で見つかったのかと言われると、見つからなかったなっていうのが正直なところです」と言い、続けた。
「海外で10年やって、それを終わらせることに対して悔しさなのか、悲しさなのか、今まで感じたことのない感情がありましたけど、ここに帰ってくる意味がそれ以上に大きかった。僕にやれることが想像する以上にあるんじゃないのかなと感じたんです」
広島に戻ってくることに対して「怖さがあった」と浅野は会見で何度も語っている。
「戻ってきて何ができるのか、正直分からない。自分がやれることを全力でやって、ゴールとチームの勝利につなげるんだっていう確固たるものはありますけど、はたしてそれができるのか。期待に応えられるのか。自問自答を何百回もやって、ここに帰ってくることを決断しました」
だから浅野は、今回の決断も自分らしいものだと納得していた。
「海外でチャレンジすることもチャレンジなんですけど、自分の中ではサンフレッチェを選ぶことが何よりもチャレンジだなと最終的には感じた。今までも自分の中で一番難しいチャレンジを決断してきて、今回も自分の中では一番難しいチャレンジを決断できたので、自分らしいなと思います」
広島での挑戦が決して易しいものではないからこそ、やりがいにも満ちている。浅野は「帰ってきた意味として、このチームを優勝に導くっていうのは絶対条件だと思っています」と自分に課し、10年前とまったく変わらないギラギラとした表情で語った。
「サンフレッチェを優勝させるために、とにかく自分はゴールをどんどん取ることが必要だと思っていますし、その先に日本代表であったり、ワールドカップもあると今までと同じように感じています。
今までと自分の中で一つ変化があるのは、もちろん次のワールドカップも目ざしていますけど、その前にこのチームを優勝させたいっていう気持ちが強いことです。けど、夢はたくさんあってもすべてが同じラインの先にあると思っているので、奥の夢を見ながら手前の夢に集中して、その夢を実現するために、今っていう状況を常に見つめながら全力で頑張っていくだけかなと思っています」
夢をいつも全力で追いかけてきたスタンスは、これからも変わらないことを浅野自身も再確認していた。
「また海外へ旅立つとか、よりレベルの高いところでプレーするって言い切るわけではないですけど、その気持ちは選手である限り、僕はずっと持っているでしょうし、何歳までサッカーができるか分かんないですけど、引退に向かってサッカーをするつもりはさらさらない。
引退するまで、成長するためにサッカーをすると思うし、引退するまでステップアップできるように、良い選手になれるように、ワールドカップに行けるように、やるべきことをやるだけ。そういう気持ちでこれからもサッカーをしていくんだろうなって、改めてサンフレッチェに戻ってくる決断をした時に自分も感じました」
スピードも、勝負強さも、人気という面でも、浅野はサンフレッチェにピッチ内外で絶大なものをもたらすに違いないが、常に夢や目標に向かってすべてを懸ける姿勢こそが、サンフレッチェに何より大きなものをもたらすのではないか。
会見に同席した久保雅義社長の言葉にも一段と力がこもっていた。
「クラブはこれからも挑戦を続けます。タイトル獲得という目標に向け、浅野選手とともに新たな歴史を築いていきたいと思っております」
サンフレッチェと浅野は、再び思いを一つにして高みを目ざしていく。
取材・文●寺田弘幸
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