【中村 清志】「このままだと”日本三大ラーメン”が死語に」消滅寸前の喜多方ラーメン…チェーン店「坂内」救世主となるか

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日本に古くから存在する「日本三大〇〇」という言葉。たとえば「日本三景」ならば、宮島(広島)・天橋立(京都)・松島(宮城)の3つがそうだ。では、「日本三大ラーメン」はご存じだろうか。北海道の札幌ラーメン、福岡の博多ラーメンと並び、数えられるのが、福島県喜多方市発祥の「喜多方ラーメン」だ。

喜多方ラーメンといえば、ツルツル・モチモチとした弾力が特徴の手もみ風のちぢれ麺に、あっさりとした醤油ベースのスープ、それにじっくり煮込まれた豚バラ肉のチャーシューが特徴のご当地ラーメン。ほかの2つと比べると、少し影が薄いようにも思えるが、朝食としてラーメンを食べる独自の習慣、通称「朝ラー」の元祖的存在としても知られる。

ところが、そんな喜多方ラーメンを扱うラーメン店の閉店が相次ぐなど、文化の消滅が危ぶまれているという。はたして「日本三大ラーメン」というブランドは維持できるのか――そのカギを握るのは、唯一無二のチェーン店「喜多方ラーメン坂内」だ。

喜多方ラーメン“御三家”が次々閉店に…

喜多方ラーメンの誕生は諸説あるが、実に1925年頃までさかのぼる。それから約100年の歴史を歩み、喜多方市によれば最盛期には約120店舗ものラーメン店が市内で営業していたという。実際、同市は2006年、対人口比に占めるラーメン店舗数の割合で日本一だったことも。

ところが現在、喜多方ラーメンの店舗数は約90店舗にまでその数を減らしつつあるのだ。福島県内の情報誌『政経東北』が報じるところによれば、これだけの大量閉店が起きている理由として、後継者問題にはじまり、慢性的な人手不足、さらに追い打ちをかけるように物価高騰のあおりを挙げている。

ただ筆者としては、それに加えて「日本三大ラーメン」のほか2つ、札幌ラーメンや博多ラーメンと比較したときに、喜多方ラーメンがどうしてもブランド力・認知度の点でやや見劣りしてしまっている事実も、課題だと考えている。

というのも、喜多方ラーメンには“御三家”と呼ばれる店が存在する。誕生のルーツとされている「源来軒」を筆頭に、「満古登(まこと)食堂」、そして「坂内食堂」だ。この3店舗は、数ある喜多方ラーメン店の中でも屈指の人気を誇っていたのだが……。「満古登食堂」は2023年9月に、次いで「源来軒」も2025年9月に閉店。結果として、御三家では「坂内食堂」を残すのみとなっているのだ。

もちろん、喜多方市役所もただ手をこまねいているわけではなく、2024年に「喜多方ラーメン課」を新設するなど、大切な観光資源を守ろうと積極的に動いている。それでも思うように集客が進んでいない、というのが現状のようだ。

そうなると、喜多方ラーメンはもはや為す術なし、このまま消滅を待つのみなのか――。唯一希望があるとすれば、このジャンルでは唯一とも言える全国チェーン店「喜多方ラーメン坂内」の存在ではないだろうか。

圧倒的に足りない「インバウンド需要」

前述した喜多方ラーメン御三家のひとつ「坂内食堂」から、暖簾分けの形で開業したのが「喜多方ラーメン坂内」だ。前者は株式会社坂内が運営し、後者は1988年創業の株式会社麺食が運営しており、今は別々の会社となっている。

そんな同社の沿革を見ると、「喜多方ラーメン坂内」をコア事業として、かつては様々なフランチャイズ事業を多角的に展開していたが、現在はほぼ同チェーンに一本化している。

ちなみに現在の社長・中原誠氏は、大学卒業後に旧第一勧業銀行(現みずほ銀行)に入行。その後、様々な外食系企業を渡り歩き、2012年に初代である父(現会長)から事業を継承する形で社長に就任。その経歴ゆえか“かなりのやり手”と見られており、就任以降、同社の業績は好調で、店舗数も90店舗まで拡大している(2026年6月時点)。

では、なぜ「喜多方ラーメン坂内」が喜多方ラーメン全体を救う可能性があると言えるのか。それは同チェーンが持ちうる“インバウンド需要”の形成力に他ならない。

同じ御三家でも、豚骨ラーメンは外国人観光客の間で特に人気が高い「一蘭」や「一風堂」といったチェーンを持つ。味噌ラーメンもニセコやルスツなど観光需要の高いエリアを有する北海道だけにこちらも人気が高い。その点、喜多方市は同じ県内でもスノーリゾート地である会津若松などの磐梯エリアと比べて、インバウンド客は少ない。

つまりインバウンド客を誘致できるかが存続の分かれ目というわけだが、その点において「喜多方ラーメン坂内」は外国人、特に欧米人に喜多方ラーメンの美味さを発信する役割をすでに発揮しつつあるのだ。

実はアメリカで“BAN NAI”が大人気

その証拠に、「喜多方ラーメン坂内」はラーメン業界の中では規模感こそ小〜中クラスながら、海外出店においてはかなりの存在感を示している。先ほど同チェーンの店舗数が90店舗だと言及したが、そのうち国内は79店舗、海外は11店舗という構成だ。

とりわけ高いニーズを獲得しているのがアメリカだろう。今年5月には、同国10店舗目として、シカゴ郊外に「Glenview(グレンビュー)店」をグランドオープンしたばかりだ。

同社によれば、アメリカ版「喜多方ラーメン坂内」は現地の嗜好に合わせたローカライズはもちろん、国内の店舗とは一線を画す「フルサービスレストラン」、すなわちラーメンだけでなく、前菜やスペシャリテなどの料理をアルコールと共に楽しめる店と定義。その結果、アメリカ版の客単価は23ドル(日本円で約3600円)と、日本では考えられない金額を示している。

アメリカに加えてすでにドイツに出店済み。さらに2026年内にはスペインの出店も控えている。欧米圏の需要に確かな手ごたえを感じているのだろう。同社は将来に向け「麺食チャレンジ2027」という経営ビジョンを掲げ、その中で2027年4月期で《売上高100億円、店舗数国内100店舗、海外25店舗》を目標にしている。

もしこのビジョンが現実のものになれば、現地で“BAN NAI”の味に慣れ親しんだ外国人たちの間で、日本国内店舗の味、ひいては喜多方ラーメンそのものに興味を持ち、喜多方市を観光で訪れる人も増えてくる。その時あらためて喜多方ラーメンは、胸を張って「日本三大ラーメン」と言えるようになるはずだ。

【後編記事】『喜多方ラーメン坂内「こってりブームの反逆者」が、地味だけど“まったく潰れない”長生きのカラクリ』へつづく。

【つづきを読む】喜多方ラーメン坂内「こってりブームの反逆者」が、地味だけど”まったく潰れない”長生きのカラクリ