念願のメジャー初優勝のアレクサンダー・ズベレフ(C)共同通信社

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【スポーツ時々放談】

【時々放談】大坂なおみ「多様性の女王」が全仏で魅せた黄金ウエア…勝敗超えて夏本番へ進む復活ロード

 テニスの4大大会第2弾、全仏オープンが終わった。

 女子は19歳のアンドレーワ(ロシア)が予選上がりのフワリンスカを退け、男子はズべレフが念願のメジャー初優勝。4度目の決勝で悲願達成し、感動の幕切れになった。

 29歳のチャンピオンは14歳でツアーに初挑戦、19歳の初優勝からこれが通算25勝目。198センチの長身からのサーブと絶妙なボールコントロールを持つが、フェデラー、ナダル、ジョコビッチの3強、それに続くシナーとアルカラスの新2強の壁に阻まれてきた。

 そのアルカラスが欠場、シナーが体調不良で姿を消した今回はチャンス、本人もそう思っていたはずだ。

 が、24歳のコボッリとの決勝は6-1と幸先良くスタートしながら最終5セットまでもつれた。全仏のクレーコートは球速がそがれ足場は滑り、絶妙なドロップショットに翻弄される嫌な流れ。ズべレフの正統派テニスは相手の長所も引き出すから、簡単には終わらない……さまざまなシーンが頭に浮かんだだろう。

 全仏の帝王ナダルに挑んだ2022年の準決勝は6-7、6-6と3時間13分を戦ったところで靱帯の断裂、車椅子で退場。リベンジした24年の1回戦はナダルの全仏ラストマッチで、決勝はアルカラスに逆転負け。ティームとの全米決勝でも、2セットリードから最後はタイブレークの大逆転負け……。そんな昔を振り切って栄冠を掴みとり、赤土のコートに伏して激しく泣いた。テニスは単純な規則に複雑な背景をはらんでいる──。

 金目当てで出来るワザではないが、優勝賞金は280万ユーロ(約5億2000万円)だ。予選1回戦負けで444万円……それでも開幕前、トップ選手は増額を訴えた。全仏の昨年の収益は前年比14%増の731億円で賞金総額は9.5%増の114億円になった。問題は分配率で、ツアー賞金が収益の22%に対し全仏は約15%と低い。ATPはポイント所有者が2265人、WTAは1544人を抱え、下位の分配を厚くしなければモラル低下を招くとトップ選手たちは主張した。下部大会ではネットの普及による八百長問題が深刻なのだ。

 世界的な普及ゆえの悩みだが、こんな論争もある。男子は5セット、女子は3セットマッチ。ズべレフの7試合=18時間59分という優勝までの所要時間に対し、アンドレーワは9時間36分。賞金は男女同額だ──ミックスダブルスを起源に、男女共同で繁栄を築き上げたテニスならではの“歴史”である。

 賞金は同額だったが、表彰式は男女で違った。シベリア生まれのアンドレーワに国歌演奏はなかった。ウクライナ侵攻に対する処置で、ズべレフの式にはドイツ国歌が流れた。息子に「29年間、ツアー最長にして最高のコーチ」と称えられ破顔した父親は、ロシア出身の元選手だ──今の世の葛藤を超えるテニスの涙と笑いの幕切れ。次のウィンブルドンはどんなドラマを見せてくれるか。

(武田薫/スポーツライター)