【永田 雅乙】「楽しいマーラータンと苦痛のサブウェイ」同じ食材選びでも《日本人の定着率》がハッキリ分かれた理由

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若い世代の女性を中心に高い人気を誇る麻辣湯(マーラータン)。都市部を中心に専門店は増加の一途を辿り、食べたことは無くても一度は街中で看板を見かけたことはある、という人も多いのではないだろうか。

それもそのはず、調査会社の株式会社Reviewが今年5月13日に発表したデータによれば、麻辣湯専門店の開業数は、2022年の21件から2025年には225件へと増加。この数年で約10倍に拡大したことが示されている。

何より注目すべきが同社が〈一気に跳ね上がってそのまま失速する、いわゆる"ブーム型"の動きとは異なっている〉と指摘している点。つまり、麻辣湯は単なる一過性のブームではなく、じわじわと堅実に日本の外食市場に定着しているというわけだ。

はたして同じ中国発祥のラーメンなどと同様、「日本の国民食に化ける」という可能性はあるのか――。専門家の意見と共に考察していく。

【前編記事】『麻辣湯チェーンに「閉店ラッシュ」が起きない極めてシンプルな理由…高級食パンブームとは何が違うのか』よりつづく。

マーラータンには“選ぶ楽しさ”があるから

前述の株式会社Reviewによる調査では、他にも興味深いデータが示されている。それは麻辣湯が中華ジャンル全体でも“存在感”を高めているということだ。

たとえば中華料理と麻辣湯とで新規店舗の開業数を比較すると、前者は2022年の1361件から2025年の1059件へと約22%の縮小している。周知の通り、中華料理店はここ最近の物価高騰、さらに後継者不足なども相まって閉店が相次いでいるが、それが如実に数字にあらわれている形だ。

一方、麻辣湯専門店は対照的に、厳しい環境も撥ね退けて、店舗数を増やし続けている。その結果、麻辣湯が中華ジャンルに占める割合は、2025年に21.2%にまで拡大(2022年には1.5%)したという。もはやニッチではなく、中華の主流業態といっても過言ではないだろう。

ではなぜ、麻辣湯はこんなにも早く確固たる地位を築くことができたのか。外食専門コンサルタントの永田雅乙氏がその要因を解説する。

「麻辣湯が定着した要因はいろいろ考えられます。よく言われるのが、視覚的な鮮やかさとヘルシーさが特に若い女性に刺さったということでしょうか。本場ではカロリーの高い“ジャンキーな料理”として知られる麻辣湯ですが、日本では巧く“罪悪感ゼロ”のような印象で広まったのが大きかったです。ですが、それ以上に私が強く挙げたいのが、やはり麻辣湯には『選ぶ楽しさ』があるということです」

なぜサブウェイは日本人と合わなかったのか

選ぶ楽しさ――春雨や野菜、きのこ、肉類など数十種類以上の食材が並んだショーケースからビュッフェ形式で自由に選び、自分だけのオリジナルの一杯を作れる麻辣湯。これこそが、中国発祥である麻辣湯が日本人に流行した最大の要因であるという。

永田氏によれば、この麻辣湯とは真逆の失敗例として、米国発祥であるファーストフードチェーン「サブウェイ」が挙げられるという。

「メニューから好きなサンドイッチを決め、パンを選び、トッピングを追加し、さらに好みの野菜、ドレッシング・ソースをチョイスする。サブウェイを象徴するこの一連のオーダーシステムですが、日本人には絶望的にマッチしませんでした。なぜなら、すべてのカスタムを店員とコミュニケーションを取りながら行う必要があったためです。

そもそもサブウェイが欧米を中心に根強い人気を誇っている理由は、美味しさ以上に、オーダーシステムを通じて《店員とやり取りできる》ことに楽しさを感じているから。日本人は知らない人との気軽な会話を避けがちな日本人には、どうしても楽しさを感じづらい。ゆえに日本市場では長きにわたり苦戦を強いられてきたわけです」

ちなみにサブウェイでは現在、タッチパネルやスマホを使用したセルフオーダーシステム導入が進められており、この問題は解消されつつある。とはいえ、“サブウェイは怖い”という世間のイメージは根強い。その点、日本に登場して以来、コミュニケーション不要のビュッフェ形式を貫く麻辣湯は、すんなりと日本人に定着することができたというわけだ。

マーラータン“第2次”ブームがくる…!

日本とそれ以外の国では、外食の捉え方が大きく異なるのは当たり前。ゆえに海外発祥の外食業態を日本に持ち込む場合、いかに日本人の心理的ハードルを下げるかが、成功のカギを握ってくる。

ひとまずその課題をクリアした麻辣湯だが、今後さらなる日本市場への浸透はありえるのか。この時点で言えることは「今後、麻辣湯の第2次ブームが起こりうる」ということだ。永田氏が続ける。

外食業態のブームの波は、最初のフェーズとして専門店が増えていって、その後にファミレスやラーメン店など異業態からの参入などが起き、少し遅れてコンビニが商品を展開し、全体が活況となるのが一般的です。ところが麻辣湯の場合、最初のフェーズが成熟する前に異業態やコンビニが台頭していきました。

その結果、現在では本場の麻辣湯とはかけ離れた商品も平気で乱造されています。ただこれはマイナスではなく、いずれ消費者のニーズが、本場の味をさらに追求した専門店に向く可能性を示唆しています。それに今は大都市圏を中心に流行っているためか、地方の余白も感じます。ゆえに“第2次”麻辣湯ブームがくる可能性は十分にあります」

タピオカのブームが第2次、第3次と度々起きたように、麻辣湯もまた次なるブームを予感させるポテンシャルを秘めている。その頃には、今以上に日本の国民食に近い存在となっているかもしれない。

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