「大企業の傲慢さは、本当に一般人を苦しめているのか」。実業家のマイキー佐野氏が、その重い問いをアメリカ社会の最前線から掘り下げていく。槍玉に挙がるのは、単なる独占企業の振る舞いだけではない。資源、労働、倫理、そして政治の意思決定までもが、この対立の渦に巻き込まれている。
 
舞台のひとつとなるのは、AIの普及を支えるインフラをめぐる攻防だ。巨大テック企業が建設を進める設備は、地域の電力網や水資源に直接のしかかる。住民の不満は電気代の高騰や水源の枯渇へと向かい、ある州では地下水をめぐって法廷闘争にまで発展しているという。便利さの裏側で、その負担を誰が引き受けているのか。佐野氏はその構図を冷静にすくい上げていく。
 
矛先は労働市場にも及ぶ。生産性向上を名目とした大量解雇、評価や報酬の仕組みがブラックボックス化していく現実。さらに、労働組合が結成された途端に店舗が閉鎖されるといった事例を挙げ、「違法にならなければいい」という発想が広がりつつあると指摘する。働く側の足元が、静かに崩されているというのだ。
 
そして話は、近年のインフレの正体へと向かっていく。物価上昇の原因を、これまで語られてきたコスト要因とは別の角度から捉え直す概念が登場する。それが「グリードフレーション」だ。一部の経済学者が示すデータをもとに、企業利益の拡大こそが価格を押し上げているのではないか、という問いが投げかけられる。古典的な説明だけでは語りきれないと見る根拠は、いったいどこにあるのか。
 
さらに佐野氏は、潤沢な資金を背景にしたロビー活動が、政治的な意思決定そのものを私物化しているのではないか、という論点にも踏み込む。一方で企業側は、規制強化を国家安全保障の問題へとすり替える論法で反発しているという。攻防は、すでに次の選挙をにらんだ段階へと移りつつある。
 
黙っていないのは市民の側も同じだ。SNS上では批判がミーム化し、やがてボイコットへと姿を変えていく。傲慢さと反発の応酬は、いったいどこへ向かうのか。佐野氏の語り口は、見えにくい対立の輪郭をくっきりと描き出していく。

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現在はアカデミズム関係者・経営者・投資家・学生が参加するビジネススクールも運営