真っ黒な歯でギャンブル依存症、「妖怪」と呼ばれた母は死に際に「ごめんなさい」と…ネグレクトを受けた男性(25)が、それでも両親を“許せた”ワケ〉から続く

 志村けんやハリー・ポッター、映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』の主人公「ジャック・スパロウ」など著名人をテーマにした「ダンボール影アート」がとんでもない勢いでバズり、SNSの総フォロワー数は300万人を超えるアーティスト・黒主厳太さん(25)。

【写真で見る】ダンボールで作った作品に「500万円超」の値が…黒主さんの作品たちや、幼少期の写真

 ポケモンにNetflixやバーバリー、マーベルなど名だたる企業とのコラボ実績も数多い彼は、両親がギャンブル依存症でネグレクト状態という過酷な環境で生まれ育った。4歳から12歳までは児童養護施設で過ごし、同部屋だった中学生の性器を毎晩舐めさせられる、施設の庭に埋まっていた違法薬物を掘り起こしてしまい暴力を振るわれる――壮絶な経験をしてきた彼は、いかにして段ボール影アートという人生を「一発逆転」する題材を見つけたのか。


何の変哲もない段ボールが、黒主さんの手にかかれば数百万を稼ぐ「作品」に変貌する(本人提供)

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暴力から逃げるため、絵を描き始めた

――黒主さんは、ダンボール影アートを中心とした「アーティスト」と「経営者」、2つの顔をお持ちです。現在の事業内容や働き方を教えてください。

黒主厳太さん(以下、黒主) 20歳で会社を設立して経営を行う傍ら、アーティストとしても活動しています。代表を務める株式会社KoreColorコーポレーションでは、太鼓の達人向けのバチ専門店『マイバチ工房-極-』の運営をはじめ、アート事業やオリジナルグッズ制作と販売、ブランディング支援など幅広く事業を展開しています。

――そもそも、ダンボール影アートを始めたきっかけは何だったのですか?

黒主 ある日の夕方、壁に娘の影が映っているのを見て、「これはアートになるな」と直感的に思いました。そこから、部屋にあったダンボールをちぎって貼り合わせて試作品を作ってみたのが最初です。

――中学の時にバチを自作して販売していたというお話もそうですし、手先がかなり器用ですよね。昔からモノを作ったり、絵を描いたりするのはお好きだったんですか。

黒主 小さいころから、クレヨンで絵を描いて時間をつぶしていました。家が貧乏だったのでそれくらいしか遊び道具がなかったんです。4歳で入所した児童養護施設でも、園庭で遊ぶか、絵を描くかしかやることがなくて。園庭に出ると暴力を振るわれるので、身を守るために職員がいる室内で絵を描いていました。

 小学3年生ぐらいのとき、施設にいた高校生の似顔絵を描いたところ、すごく喜んでくれて、そこから嫌がらせが収まったこともありましたね。一目置かれるようになったことで、いじめられなくなったのだろうなと。

 それから、連絡帳やノートの表紙に「アニメキャラクターを描いてほしい」と度々頼まれるようになって、描いてあげていました。幼いながらに「絵を描くといじめられない」と学び、自分を守る手段として絵を描くようになりました。

――絵が好きだから描いていたわけではなかった。

黒主 そうですね。「絵が好き」とか「楽しい」と思ったことは一度もありませんでした。美大などにも行かず、絵は全て独学で学びました。

ダンボールで作った作品に「500万円超」の値が付く

――ダンボール影アートに話を戻すと、傍から見ていて構造がかなり複雑そうですが、どういう風に考案しているんですか。

黒主 頭のなかで絵を描いてダンボールに落とし込んでいます。最も難易度が高いのは、ダンボールのクセや影が落ちる位置をミリ単位で把握すること。特に、顔のパーツは数ミリのズレでも全く異なる表情になってしまうんです。

――現在、SNSの総フォロワー数は300万人を越え、有名人からも反応があったとか。

黒主 映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』の主人公であるジャック・スパロウの作品には、同役を演じたジョニー・デップさんから「いいね」をいただきました。

――個人での作品の他に、Netflixやバーバリー、マーベルなど名だたる企業やブランドともコラボされています。

黒主 ありがたいことに、SNSで話題になってからは国内外の企業からコラボ依頼が舞い込むようになりました。真っ先に依頼があったのは、バーバリーです。

 僕自身のSNSでのPR投稿も含むと1作品500万円からと高額になるのですが、アートに価値を感じてくださる企業がこんなにも多いのだなと思っています。

これまで最も反響があった作品は?

――ちなみに、これまで最も反響があったのはどんな作品でしたか。

黒主 TikTokで一番反響があったのは、ダニエル・ラドクリフさんが演じたハリー・ポッターの作品です。再生回数が3.5億回、いいねは3753万件に達しています。

子どもたちには、自分と同じ思いをしてほしくない

――2025年2月には、個展「黒主厳太展」を初開催されていました。

黒主 ワークマンのFC店舗運営やイベント企画などを手掛けている株式会社スタイルエージェントという会社の奥谷隆幸社長にお世話になっていて、奥谷さんが「黒ちゃんの個展をやりたい」と言ってくださり、お互いに資金を出し合って渋谷で8日間の個展を開催しました。SNSで僕を知ってくれた方々に、動画でなく生で作品を見てほしいなと思って。あとは、企業向けの営業場所としての目的もありました。

――反響はどうでした?

黒主 生で見ると一段と驚きや感動があるようで、みなさん盛り上がってくれていましたね。年齢層は30代以降の方がほとんどで、テレビで多く紹介されていたためか年配の方が目立ちました。

――娘さんと一緒に落ち葉で作った「アンパンマン」や娘さんへの「ちいかわ」のお弁当も、SNSで話題になっていました。

黒主 どちらもSNSに投稿することを念頭に、制作段階からカメラを入れて本格的に取り組みました。半分お仕事としてやっていますが、娘も大喜びなので一石二鳥なんです(笑)。子どもたちに「アートの魅力を伝えたい」というよりも、「日常って結構おもしろいよ」ということを伝えられればと思ってやっています。

――これから作りたい作品や、目標はありますか?

黒主 具体的な目標というよりも、たくさんオファーをいただいているので、一つひとつ真摯にやっていきたいなと。あとは自分の経験を踏まえて、「子どもたちに、こういう思いをさせたくない」という思いが強いですね。

 第2子が生まれたばかりということもあり、引き続き家族との時間を大切にしたいなと。仕事面では、今月からアートに専念していく予定です。今後の活動も楽しみにしていただけたら嬉しいです。

(小林 香織)