進学や配置換え、新しい環境での疲れが出やすいこの時季。体のだるさや不眠に悩まされている人も多いのでは?「五月病のような症状には、自律神経を整えて心を安定させることが効果的。そのためには『腸内ケア』も大切」と語るのは、起立性調節障害(OD)を専門とする小児科医でHealth&Cureクリニック赤坂の院長、山口里恵先生。今回、山口先生に腸内ケアの重要性と、腸内環境を整える食べ物や生活習慣について、詳しく伺いました。

自律神経の土台は「腸」でつくられる

ストレスに強い人と、環境の変化で心身を崩しやすい人。その差はなんでしょうか?

【実際の写真】みそ汁に入れるだけで自律神経が整う「具材」

「じつは、自律神経の土台は『腸内環境』とつながりがあります。最新の研究では、腸内細菌がセロトニンをつくっているかもしれないという説も出てきていて、大学病院でも、研究やその成果の発表が増えています」(山口先生、以下同)

●腸の状態もメンタルや睡眠の質を左右する

山口先生によると、人はストレスを感じると、代謝のためにビタミンやミネラルを急激に消耗するそう。

「同時に胃腸の働きも低下するため、せっかくの栄養が吸収されにくいという悪循環に陥ります。とくに、心の安定に欠かせない『セロトニン』の大半が腸でつくられていて、腸内環境が乱れていると、セロトニンが十分に生成されず、新しい環境でのストレスを跳ね返す力が弱まってしまうのです」

逆に言えば、腸を整えることは、メンタルや睡眠を安定させるためにとても重要だそう。

腸内環境を整える「2大フード」は?

五月病のメカニズムとも深い相関があるセロトニン。セロトニンを体に満たす上で、キーになる腸内環境の乱れを防ぐ食事についても教えてもらいました。

●1:海藻を入れたみそ汁

「特別なものを用意するというより、いつもつくっているみそ汁をグツグツ煮ないで60℃以下にするだけでも、みそがもつ菌や酵素のパワーをしっかり活かすことができます」

水溶性食物繊維である海藻は日本人の強い味方で、アオサ、ヒジキ、ワカメなど、日本人が伝統的に食べてきた食事の素材は腸にとてもいいのだそう。

●2:朝に食べるバナナ

バナナや卵に含まれるトリプトファンは、体内でつくることができない必須アミノ酸の一種で、セロトニンの原料になっているタンパク質の分解を助ける成分。

「朝に摂取したトリプトファンは、日中は脳内でセロトニンとして働き、心の安定をサポート。夜になると睡眠を促すメラトニンへときり替わり、自然な眠りへと導いてくれます。黒い斑点(シュガースポット)が出た熟したバナナは、栄養価も高く、朝でも手軽に食べられるため、忙しい毎日の“セロ活”に最適です」

良質な睡眠をとる生活習慣のコツ

また、心と体の不調を整える上で、栄養と同じくらい欠かせないのは、良質な睡眠。スマホやタブレットのブルーライトを制限することが難しい現代のライフスタイルのなかで、良質な睡眠のために実践しやすい生活習慣とは?

「やはり陽の光を浴びることは大事です。朝日を浴びてから約16時間後に、自然と眠くなるメカニズムが体に備わっています。夜の不眠に悩むお子さんこそ、まずは朝の光を浴びてセロトニンを活性化させることが、夜の良質な眠りへの近道です」

夜、「早く寝なさい」と急かすよりも、まずは親子で朝日を浴びてセロトニンのスイッチを入れることから始めてみるとよさそうですね。

「あとは忙しいとシャワーですませがちですが、ぜひ湯船に浸かる習慣を。身体が温まったあとに、深部体温が下がるときに眠気がくると言われています」

ほかにも、夕方以降は少しずつ照明を落としたり、間接照明にきり替えたりするターンダウンで脳に夜がきたことを知らせるのも有効だそう。

「じつは、日本の家庭の照明は世界的に見て明るすぎといわれています。日没に合わせて部屋を暗くしていくことで、スムーズに休息モードへ入ることができます」

疲れ?病気のサイン?親が見極めるポイント

学校の日は「眠い」と布団にくるまっているのに、遊びに行く日は根性で起きられる。わが子は不登校予備軍かも…? と感じた場合、対処に悩む人も多いかもしれません。

「病気かどうかの境目はグレーです。日常生活が阻害されていたら、一度小児科で相談してみてください。朝起きられずに学校に行けなくなってきた場合は、早期に医療介入することで、改善が期待できます」

●知っておきたい「起立性障害」の症状

朝起きられない、立ちくらみ、めまい、立っているときに気分が悪くなる、長湯したら気分が悪くなる、動悸息ぎれ、食欲不振、腹痛、頭痛、倦怠感、乗り物酔い、顔面蒼白などが起立性調節障害の診断基準。

これらの不調によって学校に行けなくなってしまったり、睡眠障害が出てきたりするケースや、未就学児でも強い母子分離不安によって、保育園や幼稚園の登園に支障が出ている場合などは、医師に相談してみてほしい、と山口先生は語ります。

「眠くても学校へ間に合っているのであれば様子見でいいと思います。気持ちの問題でしょと片付けられがちですが、起立性調節障害は治療で改善が期待できる病気。そして、早く医療介入した方が回復も早まります」