記事のポイントコンテンツは購買意欲を喚起し、意思決定を後押しする重要な役割を果たす。ジャクリとフィリップスは記事施策で高い販売実績と効果測定の成果を得た。コンテンツは直接効果に加え、広告効率化などの間接効果でもブランド価値を高める。
デジタルコマースに関するフルファネルサービスを、世界20カ国で展開するフライウィール デジタル(Flywheel Digital)。その日本法人であるフライウィール デジタルジャパン(Flywheel Digital Japan)が、渋谷のTrunk Hotel Cat Street「Mori」で顧客向けイベント「Whisky & Commerce」を開催した。日本におけるECの2大ハブ、Amazonと楽天の最新情報や活用術などを通して購買の未来を考える同イベントで、コンテンツに焦点を当てたセッションが「コンテンツは購買をどう動かすのか?--メーカー×メディア×代理店が語るコンテンツコマースについて」だ。効果が測りにくいコンテンツは、購買にどれほどの影響を与えるのか。2025年7月のAmazonプライムデーでコンテンツ施策を実施したジャクリ ジャパン(Jackery Japan)マーケティング本部マーケティング第一部 広報 犀川雅未氏と、フィリップス・ジャパン パーソナルヘルス事業部 井上康之氏、そして2社のコンテンツを手がけたメディアジーン メディアプランニング部門マネージャー 岩崎裕氏が登壇。フライウィール デジタルジャパン Client Management部 Directo 大芦舞香氏がモデレーターを務めたこのセッションでは、異なる立場から「コンテンツの購買効果」について意見が交わされた。

コンテンツは「意思決定のドライバー」

「コンテンツ施策に投資したいが、広告のようにROASで効果が測りにくく、社内を説得しきれない」--ブランドのコマース戦略を支援するなかで、大芦氏はそんな悩みをよく相談されるという。メディアの立場から「コンテンツをきっかけにモノが売れる手応え」を問われたメディアジーン岩崎氏は、「非常に強く感じている」と返答した。ギズモード・ジャパンやライフハッカー・ジャパンなどで、オーディオや通信機器、消費財といった幅広い商材を紹介してきた経験が、その確信の裏付けになっている。

写真左から、フライウィール デジタルジャパン 大芦舞香氏、メディアジーン 岩崎裕氏

たとえば大型セールに合わせて公開したタイアップ記事で紹介した商品が、Amazonランキングで上昇したり、クライアントからのフィードバックを通して、岩崎氏はコンテンツの影響力を何度も目にしてきた。記事を通じて興味や理解が高まれば、これまで商品を知らなかった人にも、新たな気づきを与えることができるという。「こういう使い方をする人にはこんな商品がある」「このタイプの人にはこれがおすすめ」といった、気になるポイントを解説する記事を読み、イヤホンを購入したことがあるという岩崎氏。自身の体験からも、コンテンツには「これ欲しいかも」というスイッチを押す効果があり、記事から得た納得感を通して「意思決定のドライバー」の役割を担えることを強調した。

1つの記事で、ポータブル電源104台の販売を記録

コンテンツによって商品が動く手応えを、ポータブル電源のリーディングカンパニーであるジャクリも実感している。見た目やスペックだけでは価値が伝わりにくい製品の場合、「手に入れることでどんな体験ができるか」という世界観を丁寧に表現する必要がある。そのために「第三者視点で語るコンテンツが最適」と考えた犀川氏は、以前からコンテンツ施策に取り組んできた。メディアジーンでの展開は約5年前からで、同社が運営する各メディア上で年間約7本のタイアップ記事を公開しているという。

ジャクリ ジャパン 犀川雅未氏

なかでも直近で大きな成果を上げたのが、2025年7月のAmazonプライムデーに合わせ、ソーラーパネルとポータブル電源を訴求したライフハッカー・ジャパンの記事だ。セットで15万円を超える製品にもかかわらず、1つの記事でセット・単品含め104台を販売し、現時点で全タイアップ記事のなかでもNo.1の販売効果を記録している。さらに、この記事から自社サイトに遷移したユーザーのサイト滞在時間は、平均の約2倍に達している。スペックを比較・検討したり、金額シミュレーションをしたうえで、自社ECやAmazonでの購入につながったことがうかがえる。実際に製品が売れる「直接効果」にも大きく貢献した今回の記事。成功要因は「読者の購買意欲が高まるタイミングで、的確に訴求できた」ことにあると犀川氏は分析する。

セール最終日に公開した記事が「最後のひと押し」に

継続的にコンテンツを活用するジャクリに対し、セール終盤で購入を迷っている人に「最後のひと押し」をするという、戦略的な取り組みで成果をあげたのがフィリップスだ。Amazonプライムデーの最終日、7月14日の正午過ぎにギズモード・ジャパンで電動シェーバーの記事を公開。すると、日本で主流の往復式とは異なる回転式で数万円と中〜高価格帯の製品でありながら、実質半日で約7100PVを獲得し、31台が売れた。コンバージョンの高さに加え、CTR(クリック率)が18.42%と非常に高かった点にも井上氏は注目する。今回記事で紹介した電動シェーバーは新製品ではなかったが、購入意欲が高いユーザーに、モチベーションが高まる的確なタイミングで、納得できる内容のコンテンツを届けたことが功を奏した。

フィリップス・ジャパン 井上康之氏

そんな井上氏も、これまでは「コンテンツ効果の可視化」に課題を感じていたという。記事によってPVや滞在時間、クリック数などの数値が伸びたとしても、実際の購入に結びつくかどうかは予測できないからだ。しかし今回の施策を通じて、広告だけではカバーしきれない部分をコンテンツなら訴求できることや、公開のタイミングを見極めることで、ユーザーの背中を押し、購買行動につなげられる可能性があるという感触も得られたようだ。

コンテンツによる「間接効果」も、ブランドの資産になる

ジャクリとフィリップスの事例を通して、コンテンツ活用は単なる「認知施策」にとどまらず「購買を後押しするドライバー」としても機能することが明らかになった。さらに、ROASやトラッキングだけでは測りきれない効果が存在することも示された。大芦氏は「直接的な購買効果はもちろん、広告運用の効率化やブランド理解の促進といった『間接効果』もブランドの資産になる」ことを指摘し、「コンテンツ施策は、代理店として提案する際の選択肢のひとつになる」と総括した。最後に、「コンテンツが購買に本当に寄与するのか」という大芦氏からの問いかけに対し、3社の意見はそろって「寄与する」だった。井上氏は「実際に効果を可視化できたことが、非常に大きな1歩になった」とし、今後のコンテンツ活用について、「広告やSNS施策と組み合わせることで、さらなる効果を狙いたい」と意欲を見せた。犀川氏は、商品の特性や訴求テーマに応じて媒体を使い分ける形で取り組んできたメディアジーンとのパートナーシップに言及し、「今回の結果は、継続してきたからこそ出せた成果」と振り返る。複数の媒体を運営し、幅広い読者を有する自社の強みを語った岩崎氏は、「年間を通しての取り組みなら、協力できる部分が増える」ことに触れ、「メーカーやブランドと連携しながら、コンテンツコマースの可能性を一緒に広げていきたい」と熱意を示した。
犀川 雅未株式会社Jackery Japanマーケティング本部マーケティング第一部 広報ポータブル電源・ソーラーパネルのリーディングブランドJackeryの日本現地PRを担当。メディア関連だけでなくマーケティング全般の業務を担い、イベントや自治体との連携協定の締結などにも積極的に取り組んでいる。
井上 康之株式会社フィリップス・ジャパンパーソナルヘルス事業部電動シェーバーや電動歯ブラシ、光美容器など理美容家電のAmazonにおけるメディアや販売促進を担当。広告代理店での経験を活かし、現在はデジタル広告やEC戦略など幅広くサポートする。
大芦 舞香Flywheel Digital Japan株式会社Client Management部 Director戦略策定・プランニングから実行に至るまでアカウント業務全般を担当。幅広い業種の国内外大手クライアント担当経験を活かし、現在はAmazon/楽天を中心に売上最大化のサポートを行う。
岩崎 裕株式会社メディアジーンメディアプランニング部門マネージャーギズモード・ジャパンやルーミーをはじめとした、メディアジーンが運営する媒体の広告セールスを担当。セールだけでなく、クライアントのニーズにあわせた広告メニューの開発やコマース周りでの事例開発などに邁進中。
取材・文/山本千尋写真/中山実華