記事のポイント 「楽天ファッション・ウィーク東京26春夏」は参加ブランドを厳選し、審査を強化。リアルショーのみを公式対象とすることで層の厚さを国内外にアピールした。 若手デザイナー支援制度が整備される一方、支援終了後に自力でビジネスを継続できず苦戦するケースも少なくない。 一部ブランドは自力で基盤を固め成功例も生まれており、支援の先にある自立と海外展開が今後の課題となっている。
ファッションイベント「楽天ファッション・ウィーク東京26春夏」(通称・東コレ)が閉幕した。今季は計23ブランドがファッションショーを開催。多くの若手デザイナーが参加したほか、日本市場の開拓を狙い、フィリピンやタイなど海外勢も意欲的なショーを行っている。例年は40〜50ブランドが名を連ねていたが、よりブランドを厳選したと言う。主催する日本ファッション・ウィーク推進機構(JFWO)では、スクリーニング(審査)を強化し、さらにリアルショーの参加ブランドのみを公式スケジュール対象とした。参加するハードルを高くすることで、国内外へ層の厚さをアピールする狙いもある。

支援だけでは生き残れない

アワード受賞後はパリコレに参加する「ダブレット」

その一方、ビジネス設計に乏しい新進デザイナーや海外ブランドの参加は叶わなくなった。ハードルを高くするスタンスは、国内バイヤー、ジャーナリストからの要望を取り入れたとも言える。以前は、実力不足のデザイナーも散見され、ショーを継続しても取引先が開拓できないブランドも多かった。また、ショーを重視するあまり、ビジネスの本番である展示商談会を軽視する人物もいる。生産背景が乏しく、買い付けるサンプル数が少ないブランドでは、バイヤーは買い付けることができない。ある大手セレクトショップのバイヤーは「2〜3シーズンは継続してショーを見たいが、若手はそこまでの企業体力がない。展示会のサンプルを見ても、徐々に素材や縫製のクオリティーが下がる傾向にある。若手デザイナーの支援体制も整備されているが、支援が終わると自力でクオリティーを維持できない」と話す。ここで言う支援体制とは、東京都とJFWOが資金面や営業をサポートする「ファッション・プライズ・オブ・トーキョー(FPT)」と「東京ファッションアワード」のことだ。前者はパリファッション・ウィーク(パリコレ)でのショー開催を支援し、後者はパリコレ期間中にショールームを出展し、海外バイヤーと商談を行う。いずれも「楽天ファッション・ウィーク東京」で凱旋イベントを実施し、メディア関係者にその実力を示す。ここ20年の東コレにおいて、ここまでの支援体制が構築されたのは初めてだ。しかし、支援が打ち切られると、自力でクリエーションを維持するのは難しくなる。支援期間中に国内外で取引先を開拓し、売上高や利益を確保する必要もあるが、現実は甘くない。東京ファッションアワードを受賞し、その後、世界最高峰のファッションコンテスト「LVMHヤングファッションデザイナープライズ」でグランプリを獲得した「ダブレット(doublet)」(井野将之デザイナー)、「ソウシオオツキ(SOSHIOTSUKI)」(大月壮士デザイナー)という成功例もあるが、彼らは受賞前から自力で国内外の取引先を開拓し、クリエーションでも評価を高めていた。井野デザイナーは「アワードでの支援はとても有り難かった。ブランドが飛躍するきっかけにもなった」と述懐する。その一方、都税が使われていることで「自立し、都に(ビジネスが)波及することも意識した」と話す。

支援の先にある自立

初のファッションショーを行った「ムッシャン」

今季の「楽天ファッション・ウィーク東京」で気を吐いたブランド「ムッシャン(mukcyen)」(木村由佳デザイナー)、「フェティコ(FETICO)」(舟山瑛美デザイナー)、「アンセルム(ANCELLM)」(山近和也デザイナー)らは、ビジネス基盤を固めながらショーを実施。ポテンシャルの高さを感じさせた。木村デザイナーは「ブランドを知ってもらい、さらにビジネスへつなげていきたい」。さらに「東京ファッションアワード」では、新たに8組のブランドが選出されている。同賞を受賞した「アンセムエー(ANTHEM A)」(鈴木麻莉子、吉田尚デザイナー)の鈴木デザイナーは「課題である海外への卸事業を進める。現在は中国・上海に取引先があるものの、欧米、アジアに広げたい」と話す。現状を鑑みて、同アワードは支援期間を1年から2年へ延長。韓国の有力セレクトショップ「ディエチ・コルソコモ・ソウル」に、受賞ブランドの期間限定店を開設することも決めた。

支援枠とは別に、自力でショーを実施した「アンセルム」

近年は東コレにおける若手デザイナーの入れ替わりが激しく「新陳代謝」が進んだとも表現できる。しかし依然として、参加ブランド全体におけるビジネス規模は小さいままだ。23ブランドのうち、年商が1億円を超えているメゾンは3分の1程度。やはり、自力でファッションショーや展示会を継続する気概や信念を求めたい。支援ありきでは、ビジネス計画に隙や甘さが出てしまう。ビジネススキームを指南するサポートや、参入障壁の高い海外事業をどうクリアするか――こうした支援も必要かも知れない。取材・文/市川重人写真/doublet、mukcyen、ANCELLM