記事のポイント
ヘイリー・ビーバーが立ち上げた「ロード(Rhode)」がE.l.f.ビューティに買収された。
今回の買収は、草の根運動的な支持やSNSでの広がりが買収の決め手となる時代を象徴している。
ビーバーは成分やビジュアル戦略まで語れるマーケターとしてブランド信頼を構築し、信頼されるブランド像を築いている。



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今年最大級のビューティニュースが飛び込んできたのは、5月28日のことだった。ヘイリー・ビーバーが立ち上げた設立3年目のブランド「ロード(Rhode)」をE.l.f.ビューティ(E.l.f. Beauty)が買収したと発表したのだ。

この買収はさまざまな理由から注目に値するが、とりわけ話題となったのは、セフォラ(Sephora)での販売が近く予定されているものの、現時点ではまだ実現していないという点である。また、ロードの製品ラインは現在10SKU未満と比較的少なく、バイラルヒットとなったスマホケースも含まれている。

一方、E.l.f.はというと、同社は過去25四半期にわたり、売上高の増加と市場シェアの拡大を継続している。

ロードでチーフ・クリエイティブ・オフィサーおよびイノベーション部門責任者を務めるビーバーは、今回の買収にともない、E.l.f.ビューティの戦略アドバイザーにも就任。E.l.f.コスメティクス(E.l.f. Cosmetics)、E.l.f.スキン(E.l.f. Skin)、ウェル・ピープル(Well People)、キーズ・ソウルケア(Keys Soulcare)、そして2023年に買収されたナチュリウム(Naturium)を含む同社のブランド群に対して助言を行うこととなる。

「Glossy Beauty」ポッドキャストでは、Glossy Popシニアレポーターのサラ・スプラフ・ファイナー氏と、姉妹媒体の米Modern Retailでシニアレポーターを務めるガビ・バーコ氏が、インフルエンサーマーケティングプラットフォーム「クリエイターIQ(Creator IQ)」のCMO、ブリット・スター氏を迎えて議論を交わしている。

その前半では、米Glossyのシニアレポーターであるエミリー・ジェンセン氏とファイナー氏が、今週TikTok上で注目を集めているビューティトレンド、今年のプライド月間が例年と異なる理由、そしてフーダ・カタン氏がフーダ・ビューティ(Huda Beauty)の完全所有権を取り戻した件について語っている。

以下に、エピソードの主な内容をわかりやすく編集したうえで紹介する。

ブランドを支える数字



スター氏:「ロードは、米国のスキンケアブランドのなかで年間EMV(獲得メディア価値)の成長率1位、エンゲージメント成長率でも1位を記録している。さらに、スキンケアにとどまらず、全米のビューティブランド全体でもトップ15に入っている。

これは、ブランドについて語られる会話やコンテンツの多さ、ブランドへの熱狂、そして消費者がロードやヘイリーと関わるクリエイターにどのように反応しているかといった点で、非常に印象的な動きが見られることを意味している。

ヘイリー本人は当然ながらブランド価値を大きく押し上げる存在であり、時代の文化的中核にいるともいえる。トレンドを見極める力にも優れている。ただし、ロードについて言及された投稿のうち、ヘイリーの名前が出ているのは約15%に過ぎず、彼女自身の投稿のなかでロードに触れている割合も約30%程度である。

つまり、両者は共生関係にありながらも、ロードはヘイリーひとりに依存しているわけではなく、明確にスケールのあるコミュニティがブランドの周囲に形成されていることが、急成長の背景となっている。

また、特定のクリエイターとのコラボ戦略も成功しており、そのハロー効果が全体的なブランド価値を押し上げている。たとえば、テイト・マクレーとのコラボ開始時には、その影響が周囲にどう波及し、人々の興奮を呼ぶかが明確に見て取れる。そこにこそ、ブランドとしての価値があるのだ」。

ソーシャルでのエンゲージメントは買収に繋がるか?



スター氏:「この分野における最初の大型買収は、2014年にロレアル(L’Oréal)がNYXプロフェッショナルメイクアップ(NYX Professional Makeup)を買収したときだった。当時の評価額は売上の35倍、約5億ドル(約780億円)にのぼり、当時としては異例の高額だった。これは、我々がクリエイターマーケティングという概念をまだ十分に理解していなかった時代の出来事である。

NYXは当時ほぼ無名のブランドだったが、我々のデータではすでに注目すべき存在として浮かび上がっていた。10年以上前から、今と同じような成長パターンやユーザー行動が見られていたのだ。NYXはロードほどの短期間での成長ではなかったが、同様に急速なブランド拡大を実現した。

現在では、当時よりもマーケティングや流通のインフラが整っており、ブランドの成長スピードはさらに加速している。我々のデータでもその傾向が明確に表れている。ドランク・エレファント(Drunk Elephant)やユース・トゥ・ザ・ピープル(Youth to the People)など、近年の買収例も同様の流れを示している。

いまや、クリエイターを起点とした会話こそが、消費者によるエンゲージメントのたしかな指標となっている。そして重要なのは、その会話の広がり方である。

一部の著名インフルエンサーだけが主導するのではなく、ネットワーク全体に広がる草の根運動的な動きであるかどうか。後者のような動きが見られる場合、それは人々が本気でブランドに共感し、関与している証であり、長期的な価値創出へと繋がっていく」。

バリュードリブン・ビューティの価値



バーコ氏:「E.l.f.ビューティは、戦略的に見て非常に興味深い企業だ。今こそ、価格帯とポートフォリオの多様性について語るべきだろう。

E.l.f.は明らかに、Z世代のドラッグストアニーズを的確に捉えることに成功している。私が最初に思ったのは、『彼らはデュープ(dupe)カルチャーを発明したか、少なくとも育て上げた存在だ』ということだった。

低価格帯のドラッグストアブランドが、手が届くけれどややプレミアムなブランドを買収するという展開は非常にユニークである。

一方で、レディット(Reddit)ではすでにユーザーたちが「処方が変わるのでは?」「価格が上がるのでは?」と不安視している。これは、カルト的な人気ブランドが買収されるたびに必ず起こる現象だ。

そして実際に、E.l.f.自身も今回の買収直前に価格を1ドル(約156円)引き上げている。つまり、E.l.f.はスキンケアを重視しながらも、バリュープライスを基盤とした興味深いポートフォリオを戦略的に構築しようとしているのだ」。

ヘイリー・ビーバーというマーケター



ファイナー氏:「ヘイリー・ビーバーはマーケティングについてしっかり語ることができる。キャンペーンで起用する人物をなぜ選んだのか、ビジュアルの設計意図は何か、製品を発売する理由や、その成分の意図に至るまで、自分の言葉で説明できるのだ。ブランドを立ち上げた当初、ビューティ業界で注目を集めたのは、彼女がそうした知識を持っていたことだった。

多くのセレブブランドが登場すると、『またか』といううんざりした反応が出るものだが、彼女の場合は『これは本気でやっている』という認識が業界内に広がっていた。

彼女は長年YouTubeで活動しており、化粧品化学者としてビューティエディターに知られるロン・ロビンソン氏を起用。その彼が手がけるブランド「ビューティスタット(BeautyStat)」は、アルタ・ビューティ(Ulta Beauty)でも展開されている。また、著名な皮膚科医であるバヌサリ氏(Dr. Bhanusali)も処方に関与している。

こうした人材を巻き込みながら、ビーバーはブランドの信頼性をしっかりと築き上げてきたのだ。」

[原文:https://www.glossy.co/podcasts/how-rhode-made-it-about-more-than-just-hailey-bieber/]

Sara Spruch-Feiner(翻訳・編集:藏西隆介)
Image: Business Wire