ナイキとも提携、特許200件超のIP戦略で市場拡大図る ハンズフリー靴の キジック

記事のポイント
キジックと親会社は模倣品販売をめぐる初の訴訟で和解し、IP保護を重視する姿勢を強調した。
ハンズフリーラボは200件超の特許を保有し、ナイキなど大手ともライセンス提携を進めている。
IPはキジックの成長戦略の柱であり、訴訟とライセンスを使い分けてブランドと技術を守っている。
キジックと親会社は模倣品販売をめぐる初の訴訟で和解し、IP保護を重視する姿勢を強調した。
ハンズフリーラボは200件超の特許を保有し、ナイキなど大手ともライセンス提携を進めている。
IPはキジックの成長戦略の柱であり、訴訟とライセンスを使い分けてブランドと技術を守っている。
フットウェアブランドのキジック(Kizik)と、その親会社であるハンズフリーラボ(Handsfree Labs)は、著作権侵害の疑いがある靴を販売したとして競合他社を訴えた初の訴訟において、和解に至った。
3月5日、キジックは同社のハンズフリースリップオンシューズに関する知的財産権を他社が侵害したとする訴訟で和解に達した。
ハンズフリーラボは昨年9月、キジックのブランド表現やマーケティング手法の外観および操作性が模倣され、特許が侵害されたとして、整形外科用フットウェアブランドであるドリューシュー(Drew Shoe)を提訴していた。
この件について、ドリューシューの弁護士は米モダンリテールからのコメント要請に応じていない。裁判記録によれば、同社は当初、訴えを否定していたが、3月5日に訴えは棄却された。和解の具体的な条件は公表されていない。
キジックのCEOであるモンテ・ディア氏は、「これは単なる法的保護の話ではない」と語っている。
「イノベーションは保護されるべきだという前例を作ることが重要なのだ。我々はこれまでもそうしてきたし、必要があれば再び同じ対応を取る用意がある。ただ、そうせずに済むことを望んでいる」。
ディア氏は米モダンリテールの取材に応じ、キジックのIP保護の取り組みについて幅広く説明した。ハンズフリーラボはスリッポンシューズの技術に関して200件以上の特許を申請しており、その一部はキジックの独自デザインに活用されている。
ナイキ(Nike)は2019年以降、ハンズフリーラボの技術の一部をライセンス契約のもとで活用しており、具体的な金額は非公開ながら、同社に対して戦略的な投資を行っている。
ディア氏は将来的な事業提携の可能性にも言及し、キジックがハンズフリーシューズ関連の発明技術をほかのフットウェア企業と共有し、さらに収益化を進める意向を示した。
「キジックという優れたブランドを通じて、我々はこの技術を市場に投入してきた。しかし、このような基盤技術をひとつのブランドのみで展開するのは現実的ではない」とディア氏は述べる。
「消費者の反応を見る限り、ハンズフリー機能は明確な需要がある。我々は自社の機能性に強い自信を持っており、公正なかたちで協力してくれる優れたフットウェアブランドには、この技術を提供していきたいと考えている」。
コンセプトを証明する
キジックは2017年にD2Cブランドとしてローンチした。昨年は小売チャネルの拡大に注力し、卸売を通じて1000店舗以上に販路を広げ、現在は直営店を6店舗運営している。ブランドとしては、年間1億ドル(約142億2000万円)以上の売上を記録している。
ただし、キジックが現在の地位を築くまでには、多くの時間、資金、法的なリソースが必要だった。
創業者のマイク・プラット氏は、「かかとを踏まずに履ける靴」の発明に約10年を費やした。その過程で数多くのデザインを考案し、これらは現在、200件を超える特許出願を含むハンズフリーラボのIPポートフォリオの中核となっている。
ディア氏によると、これまでに約115件の特許が取得されており、さまざまなスタイルのスリッポンにおける機能性と技術が対象となっているという。
なかには、キジックの最新モデル「モナコ(Monaco)」に使用されているような、外部構造に関する技術デザインの特許も含まれている。
モナコは、履いているあいだに形状を維持できるよう、かかと部分にバーを備えている。また、かかとの後部を覆う「ケージ」構造や、足をしっかりと固定するための内部機構も取り入れられている。
キジックはさらに、ブーツカテゴリーへの展開も進めている。
「我々はまず、キジックというブランドでこのコンセプトが通用することを証明した」とディア氏は語る。
「そして、この技術は非常に強力で業界に大きな影響を与えるものであり、他社にとっても価値があると気づいた。そこで、フットウェアブランドとは切り離して、テクノロジーブランドとして独立させ、ナイキにライセンスを供与した。ほかの企業にも順次ライセンスを提供していくつもりだ」。
ディア氏によれば、IPはキジックの長期戦略と事業運営において欠かせない要素である。ライセンス提供にとどまらず、他社の動きにも目を光らせ、潜在的な侵害リスクに常に備える必要があるという。
ディア氏が6年前にCEOに就任した際、最初に採用したのが、最高知的財産責任者兼法務顧問であるエリック・ニールセン氏であった。
「毎日、特許弁護士に電話をかけるようなことはしない」とディア氏は語る。「ニールセン氏は、私のオフィスのすぐ向かいにいるのだから」。
IPの高いコストと大きなリターン
とはいえ、キジックにおけるIPの位置づけは、スタートアップ企業としては特異な戦略だ。特許、著作権、商標の登録には多くの時間と費用がかかるため、決して安価な取り組みではない。さらに、他社を相手取って訴訟を起こすこともまた、相応のコストがかかる。
それでもIPは、最終的に「剣」としても「盾」としても機能する極めて重要な資産だ。そう語るのは、知的財産法を専門にブランドを支援しているヴェナブル(Venable)の顧問弁護士、ポーラ・ホプキンス氏である。
ホプキンス氏によれば、一部のブランドは他社よりも積極的に特許や商標の取得に取り組む傾向がある。ただし、知的財産権を実際に行使する意志がなかったとしても、特許、商標、著作権を保有しているだけでブランドの保護にとって大きなメリットとなる。
たとえば、模倣品とみなされる商品の削除をマーケットプレイス上で申請する際、IPを保有していることで、より優位な立場に立つことができる。
「このプロセスは一見すると高額に思えるかもしれない。しかし考えてみれば、これはブランドに対する投資であり、いわば保険のようなものだ」とホプキンス氏は語る。
「あらかじめフロントエンドで一定のコストをかけておけば、後々の権利紛争や侵害訴訟のリスクを大きく減らすことができる」。
リテールアドバイザリー会社であるザ・コンシューマーコレクティブ(The Consumer Collective)の共同創業者兼マネージングディレクター、ジェシカ・ラミレス氏によれば、ナイキをはじめとする大手フットウェア企業は、IPをめぐる訴訟に過去何度も関わってきた。正式な訴訟には至らないケースでも、模倣の疑いを巡る紛争はたびたび発生しているという。
「IPと一般的なデザイン活用は、現在の社会において常に緊張関係にある」とラミレス氏は述べる。「特に新興のインディーズ系デザイナーが、目にした要素をすぐに取り入れて展開している光景はよく見られる」。
特許を「剣」として用いる姿勢について、ディア氏は「むやみに他者を訴えるつもりはない」と語る。ただし、必要があれば訴訟も辞さない方針であるという。
一方で「盾」としてのIP活用としては、ほかの大手フットウェア企業とのライセンス契約交渉を進めている。ハンズフリーラボは現在、世界トップ10に入る別のフットウェア企業とライセンス契約の交渉を行っていることが明らかになった。
「我々は訴訟によって勝とうとしているのではない。イノベーションを通じて、また消費者が求める価値を提供することで勝利を得ようとしている。そのための仕組みづくりに取り組んでいる」とディア氏は語った。
[原文:Inside Kizik’s quest to dominate the hands-free shoe space through intellectual property]
Melissa Daniels(翻訳:Maya Kishida、編集:藏西隆介)
