記事のポイント
Amazonはプライムデーを4日間に延長し、ライバルのセール週間に対抗しつつブランドに多様な割引施策を提供している。
販売業者は在庫納入期限や過剰在庫リスクに直面し、成功には精緻な需要予測と価格戦略が求められている。
頻発されるセールによってブランドの「セール疲れ」が広がり、一部ブランドは限定的な値引きや不参加戦略で対応している。


Amazonのプライムデーがこれまで以上に長く、そして複雑になる。今年の夏、ECの巨人Amazonは、看板セールイベントであるプライムデーをこれまでの2日間から4日間に延長する。2015年の開始以来、最長となる。

Modern Retailが最初に報じたこの変更は、ウォルマート(Walmart)やターゲット(Target)、テム(Temu)などのライバルが「セールウィーク」を続々と打ち出すなかで、セール期間中の優位性を維持しようとするAmazonの動きを反映したものだ。Amazon全体の売上の約60%を占めるサードパーティ販売業者にとって、4日間のプライムデーは、特にトランプ政権下での広範な関税が利益率を脅かすなかで、売上を伸ばす好機といえる。

「Amazonがプライムデーを延長するのは、必然だった」と、EC広告運用支援企業のパックビュー(Pacvue)のパートナーシップ責任者、トミー・バートン氏は語った。

しかしこの延長は、物流面、財務面、戦略面での課題ももたらす。Modern Retailの取材に応じた販売業者や広告代理店の責任者たちは、今回の「マラソンセール」に向け、在庫、価格設定、プロモーション疲れといった問題にどう対応するか、模索しているという。

「ブランドはこのイベントに参加せざるを得ないとわかっている。なぜなら成功することがわかっているから」と、広告代理店デジショップガールメディア(Digishopgirl Media)の創業者カティヤ・コンスタンティン氏は語る。「同時に、4日間のプロモーション期間は理想的とはいえない。というのも、通常よりも大幅な割引が求められるからだ」。

Amazonは本記事の締切までにコメント要請に応じなかった。

4日間に拡大 変わるセールの戦い方



昨年のプライムデーは、アドビアナリティクス(Adobe Analytics)によると、米国内のオンライン売上で過去最高の142億ドル(約2兆1300億円)を記録した。今回、Amazonは販売業者により多くの時間とプロモーション手段を与えることで、パフォーマンスの向上を後押しする。ブランドは、「ライトニングディール」「ベストディール」「プライム会員向けクーポン」「価格割引」などを活用でき、それぞれに最低割引率が設けられている。なかでも40%以上の割引を提供する商品は、Amazonサイト内での露出が拡大され、買い物客の目に留まりやすくなる。

この変化は、ブランドにとってさまざまな「実験」の機会を広げるものだ。マーケットプレイスネイティブブランドやオムニチャネルブランドと連携するマーケティングエージェンシー、ベラヴィックス(BellaVix)の共同創業者兼CEO、ウィル・フェア氏は、延長された日数を活用することで、さまざまな値引きの組み合わせを試し、どのプロモーションがもっとも効果的かを測ることができると語る。

フェア氏は次のように語る。「今回のように期間が延びることで、Aとしてより多くのセール枠を確保できるし、Bとしてその枠を使っていろいろな割引パターンを試すことができる。たとえば、ライトニングディールを打つ場合と、ベストディールにする場合、あるいはライトニングディールにクーポンを組み合わせた場合とで、どんな違いが出るかを4日間かけて見ていけるのは興味深い」。

ブランドにとってもっとも差し迫った運用上の懸念は、在庫である。販売期間が倍になったことで、販売業者はAmazonのフルフィルメントセンターにより多くの商品を、より早く納入する必要がある。一方で、コスト管理や余剰在庫の回避も求められる。Amazonは販売業者に対して納期を通知しており、6月中旬には在庫が到着する必要があり、セール企画(値引き施策)の提出は5月末までに行うことが求められている。

「2日間の販売予測と比べて、4日間の予測はより重大な意味を持つ」と、コンスタンティン氏は言う。「すでに在庫を持っているブランドの方が、今すぐ海外パートナーに発注しなければならないブランドよりも、有利な立場にある」。

昨年、Amazonは在庫が少ない場合に販売業者に課金する新たな手数料を導入した。さらに、フルフィルメントセンターに在庫が多すぎる場合には、過剰在庫手数料が課される可能性もある。ただし、2024年のプライムデーでは、プライム限定セールに含まれる商品については、在庫が少ないことによる手数料が免除された。この手数料免除は、プライムデー後の4週間、すなわち「プライムデー売上により在庫水準の予測が難しくなる期間」に適用されると、Amazonは当時述べていた。

AmazonをはじめとするEC事業者の売上成長を支援するパターン(Pattern)でブランドサービス担当副社長を務めるジャレッド・メイソン氏は、4日間という前例のないフォーマットが、今年の需要予測をより難しくすると見ている。

「十分な在庫を確保することが絶対条件だ」と彼は言う。「在庫切れは最悪のシナリオだが、次に悪いのは、大量の在庫が残ってしまい、長期保管手数料を支払う羽目になることだ」。

ブランド側に広がる「セール疲れ」



Amazonが「10月のプライム・ビッグディールデー」や「ビッグスプリングセール」など複数の大型イベントを展開するなかで、ブランド側は「セール疲れ」に直面している。プラットフォーム利用料から関税に至るまで、あらゆるコストが上昇するなかで、数カ月ごとに大幅な値下げを繰り返すことへの正当性が揺らいでいる。eコマース分析会社スマートスカウト(SmartScout)が実施した325人の販売業者への調査では、38%がプライムイベントに参加していると回答した一方で、多くが値引きプレッシャーへの懸念を抱えているという。また、2024年には50%以上の販売業者が「利益が減っている」と回答した。

「1月、3月、そして今度は夏と、我々は値引きを連発しなければならなかった」とメイソン氏は語る。「275のブランドパートナーのうち、春のセールに本格的に参加したのはせいぜい1〜2社程度だった」。

メイソン氏によれば、ブランドのなかには、一部の日に限定して深い値引きを実施したり、値引きの深さそのものを抑えるハイブリッド型の戦略を採用する動きも出ている。

「『そもそも値引きなんて必要ない』というブランドも、まだ存在する」と彼は言う。「プライムデー期間中に商品を出しているだけで、売上コンバージョンが20%上昇することもあるのだから」。

コマーステック企業プライススパイダー(PriceSpider)でデータ分析およびアクティベーション部門を統括するジェニー・レッキー氏は、「ブランドは全商品を値引きしているわけではない。特定のオーディエンスやリテーラーにとってもっとも適している主力商品を選んでいる」と述べた。

なかには、どのイベントに参加するかを厳選し始める販売業者も出てきている。「セール疲れへの最大の対処法は、『参加しない』という選択だ」とメイソン氏は語る。「商品は出しているが、ディスカウントはしていない」。

また、どのチャネルにどれだけ投資するかを再考する動きも見られる。Amazonがプライムデーで依然として主役であることに変わりはないが、その影響力は絶対ではなくなりつつある。販売業者がAmazon以外にも販路を広げるなか、Walmartのマーケットプレイス、TikTok Shop、自社D2Cサイトなどでも同様の値引きを提供する必要性が出てくる。

Amazonの販売業者は昨年、CNBCに対し、プライムデー前にターゲットが実施した競合セールでより安価に商品を販売していたとして、Amazonからペナルティを受けたと語っている。

メイソン氏の言葉を借りれば、「Amazonでセールを行うなら、ほかでも同じセールを実施せざるを得ないのだ」。

[原文:Marketplace Briefing: An extended Prime Day has Amazon sellers rethinking discounts and inventory]

Allison Smith(翻訳・編集:戸田美子)
Image: ChatGPT (DALL·E)