中国の公安部が国民に「サイバー空間ID」を付与する法律の草案を公開し、パブリックコメントの募集を開始しました。「サイバー空間ID」はISPなどへの個人情報登録を回避して国民のプライバシーを保護するものだと説明されていますが、専門家は「中国政府の監視強化につながる」と指摘しています。

公安部国家互联网信息办公室关于《国家网络身份认证公共服务管理办法(征求意见稿)》公开征求意见的公告_中央网络安全和信息化委员会办公室

https://www.cac.gov.cn/2024-07/26/c_1723675813897965.htm

​China mulls granting cyberspace IDs | english.scio.gov.cn

http://english.scio.gov.cn/pressroom/2024-07/27/content_117334604.htm

China Wants to Start a National Internet ID System - The New York Times

https://www.nytimes.com/2024/07/31/business/china-national-internet-id.html

中国では2012年に「ISPや携帯電話回線の契約時に実名登録を必須にする」という法律が可決しています。さらに、2017年には「ネット掲示板やSNSの利用時に実名登録を義務付ける」という規則も制定されており、プライバシーを保ったままインターネットを利用することが非常に困難となっています。

中国政府がネット掲示版への書き込みに実名登録を義務づけへ - GIGAZINE



公安部が発案した「サイバー空間ID」は個人識別可能な「ランダムな文字列」もしくは「オンライン認証情報」の形式で発行されるもので、国民は実名の代わりに「サイバー空間ID」を提出することで、プライバシーを保ったままインターネット上のサービスを利用できるとされています。また、「サイバー空間ID」は強制的に発行されるものではなく、自主的に申請した国民に対して発行されるとのこと。

「サイバー空間ID」は一見するとプライバシーの保護に役立ちそうですが、香港浸会大学で権威主義体制における検閲について研究する閭丘露薇氏は「当局は、『サイバー空間ID』を用いてオンライン上のあらゆる行動を監視するだろう」と指摘しています。現時点では各種ISPやSNSは情報を個別に管理していましたが、「サイバー空間ID」が発行されれば当局はすべてのサービス上の行動を横断的に監視できるようになるというわけです。

なお、公安部は「サイバー空間ID」に関するパブリックコメントを2024年8月25日まで募集しています。