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大手の同人誌通販サイトで、成人向け書籍のクレジットカード決済ができなくなった。理由はカード決済代行会社がサイト運営会社に要請したためだ。

利用者の間では動揺が広がり、与党議員も「どんな内容物でも自由に買える世界と状況を確保しないといけない」と訴える。

翌日までに取り扱い中止しないと...

ある大手通販サイトの運営会社が2019年8月中旬、作品を扱う作家らに一斉メールを送った。

メールによれば、同サイトで扱っていた成人向け商品を一時的に取り下げたとし、その理由はクレジットカード代行会社からの通告だった。

8月8日に突然、代行会社から連絡があり、翌9日までに成人向け商品の取り扱いを中止しないと、取引を停止するとの旨の報告を受けたという。

販売の継続に向けてその後も交渉を続けたが、代行業者は譲らず、「クレジットカード決済を使わない形でのサービスの継続は難しく、カード決済停止という事態だけは避けないといけない」ため、取り下げにいたった。なお、店頭での販売は続けるとする。

複数の作家によりメールの内容がSNSで共有されると、利用者らの間で不安が広がった。

代行会社「よりによってコミケの前の日かと」

冒頭で紹介した運営会社は26日、J-CASTニュースの取材に、デリケートな問題なので代行会社名は明かせないとしつつ、再開に向けて現在も交渉を続けていると話す。

「最初に連絡がきた時はさすがに驚きました。しかもよりによって(繁忙期である)コミケの前の日かと」

同業他社を含め、これまで個別の表現に関する指摘を受けた例はあるというが、今回のように成人向け商品を一括で禁止とされるのははじめてだとする。

クレジットカード事情に詳しい菊地崇仁氏は、カード会社または代行会社が契約を一方的に停止するのはありうるとしつつ、「大体は事前に何度か相談があると聞きます」と取材に話す。

また、成人向け商品を一律で規約違反とするケースは珍しく、「法に触れたり過激すぎたりするものを個別に禁止するのは考えられますが...」と首をかしげる。

菊池氏は今回のケースで考えられる理由として、(1)代行会社がカード会社から指摘を受けた(2)通販サイト上での年齢確認の不備(3)財務内容――を挙げた。

決済代行の大手5社に取材すると...

大手カード決済代行5社に取材すると、GMOイプシロン、ゼウスは取扱いできない商材の一つに「公序良俗に反するもの (アダルト、出会い系サイトを含む)」を挙げる。

SBペイメントサービスは「弊社としてレギュレーションは設けておりますが、細かな基準は開示しておりません」と回答。ベリトランスは「成人向け商材全てがNGということはございません。カード会社(アクワイアラー)の規定に則った弊社での独自審査に加え、最終的にはカード会社の厳正な審査に則って加盟店契約を締結しております」

ペイジェントからの明確な回答はなく、公式サイトでは取扱いできない商材として「わいせつ物、ポルノ、児童ポルノ、アダルトグッズ、ヌード写真、アダルトビデオ、アダルトゲーム、ブルセラ」などを列挙している。

先の通販サイトとの取引の有無を聞くと、4社は加盟店ではないと答え、1社は「個別の契約に関する内容にはお答え致しかねますが、弊社サービスをご利用下さっている多くの加盟店様が様々な商材を販売されているなかで、規約の定めから逸脱するような商材等のお取り扱いを認知した場合は、加盟店様へのご説明・ご相談を通してご理解を賜り、改善にむけた取り組みをお願いしております」との返事だった。

一連の話題には、与党議員も注目している。表現規制対策に取り組む自民党の山田太郎参院議員は29日、ユーチューブでこの騒動を取り上げ、「どんな内容物でも自由に買える世界と状況を確保しないといけない」と問題視。

政府が進める「GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)」など巨大ITプラットフォーマーへのルール整備の中に、クレジットカードなどの金融取引も盛り込むべきだとし、自民党の関連部会の議題に上げると明言した。

(J-CASTニュース編集部 谷本陵)