“最後の仕事”は今もお茶の間に届けられている

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 惜しい人が逝ってしまった。昨年末に悲報が流れた俳優・高倉健(享年83歳)さん。年が明けた現在も、出演するCMが放送されている。井上陽水氏の『少年時代』をバックミュージックに、夜が明けぬ小屋でにんにくの収穫の準備をする農夫だ。

「農薬は使わない。そのぶん汗を流せばいい」

 という健さんのナレーションは思わず聞き入ってしまう低く落ち着いた声。そして彼の手で収穫された美しいにんにくを見れば、

「この商品は間違いないだろう」

 と思わせる重みがある。にんにくを使ったサプリメント“伝統にんにく卵黄”を発売している会社、健康家族のCMだ。

「契約中は迷惑をかけたくないと健さん本人も言うであろう、という事務所の意向で、放映が続けられることになったようです。2014年の8月に撮影されたこのCMが最期の仕事になってしまったために、以前からのファンだけではなく、健さんを惜しむ人々から続けて欲しいという声も出ています」(広告代理店社員)

 死してなお、お茶の間に勇姿を見せつける健さん。だが規格外なのは、それだけではない。過去に出演したのCMのギャラも破格だった。

お茶を一口飲んでギャラは5000万円

「ほぼワンシーンの出演なら数百万から高くても2000万円程度。でもやはりそこは健さんを起用するとあって、5000万円ものギャラが支払われたそうです」

 とは、前出の広告代理店社員の説明だ。放送が始まった2000年当時、様々な媒体で話題に上った。そのCMを見てみよう。

 海辺の町に立つ一人の疲れ果てた中年男性。真剣にみつめているのは、古びた定食屋に貼られた「パート募集」チラシ。自分を奮い立たせるかのように、1リットルのペットボトル“生茶”を傾け、のどに一口流し込む。そしてポケットにペットボトルをしまうや、お店の扉を開いたーー。

 確かにたったワンシーンで視聴者を魅せられるそのオーラを見れば、破格でもいいから出演して欲しいという企業側の意向も納得できる。重ね重ね、哀悼の意を示したい。

(取材・文/大伯飛鳥)